2023.6.8

光の森という呑み屋が下北沢の一角にある。
開店当初の6年前、下北沢の餃子の王将付近に住んでいた私は、誰にも見つからずに1人でしっぽりと飲める良い場所を見つけたと思い、散歩がてら歩いては呑みに行った。
スナックの間取りはそのままで居酒屋風にリアレンジした数席のカウンターと座敷の空間で、決して綺麗なわけではないけどずっと居れる居心地の良さが魅力の場所はやがてバンドマン界隈に広まり、行けば大体知り合いがいる状態になった。新人気鋭のアーティストが大人にバレちゃったか…という感じで私は行かなくなった。
昨日はマスターの高橋さんが48歳の誕生日ということで、お祝いがてらsalsaのスズケンさん(鈴木健介さん)と呑みに久しぶりに店に入った。

スズケンさんとは10年以上前から顔見知りで、私が10代の頃の弾き語りライブから観てくれている。
salsaというバンドの私的な解釈は、鋭い感性の歌と切り裂くサウンドのギター、ギリなバランスで調和を保ったリズム隊のスリーピースハードコアバンドで、ライブがめちゃくちゃかっこいい。3人ともあまり笑わずに喋る人、といった第一印象で最初は怖かったが、数年前に新代田FEVER(ライブハウス)で企画ライブを観に行ったり対バンしたりと会えばいつも話しかけてくれるようになって、今では頼れる安心感すらある一回り上の先輩だ。

半月ほど前にスズケンさんの誕生日にラインを送った際、私が光の森にいきたいと伝えたら「行くなら高橋さんの誕生日が良いだろう」という運びになり、駅前の花屋でカンパネラというピンクのお花を買って店に向かった。

高橋さんは数年前よりも数段くだけた表情で私を迎え入れてくれた。
店には色んなイベントのポスターやフライヤー、缶バッチなどが貼られていた。高橋さんの好きなバンドを集めた「光の森フェス」を定期的に開催してるのも相まって居酒屋以上の機能をもった交流の場になっている。壁に乱雑に貼られたポスターなどから店が育っていった軌跡を覗くができて嬉しかった。

下北沢にはコロナ前に「宿場」という居酒屋があり、そこの居心地の良さと魚介系のおつまみも美味しくてよく通っていたのに閉店してしまった。その張り紙を見た時はすごくショックだった。

スズケンさんと数年来に会ってもまるでインターバルがなかったかのように話し込めて、バンドのことや将来のことを聞いてくれたり...その空間にいることだけでも嬉しいのに会ってないうちに変わった部分と、変わってない部分を会話で感じとれたのが何より一番嬉しかった。

私もこの数年で変わった部分はあっただろうか。
ウルルのボーカリストとしての成長はあるにしても、生粋はずっと変わらずチャランポランで、色々と装ってるけどたまにヘドがでてるだろうな。

自分より歳上の知り合いが多い空間は特にその思いが強まるから少し怖くて、でも一定の距離を保ったまま傍観する温かさもある。
光の森に出入りしてる凡ゆるタイプの人間が醸す雰囲気が空間に馴染んでて、トイレにペパーミントとラベンダーのちょっと良い芳香ミストがあるのも含めて、だからこの場所が好きなんだなと改めて思った。

その後はでぶコーネリアスというバンドの千秋(この人も古い腐れ縁)と瀬戸くんが来たので、少し残ってから帰った。

楽しく呑んだ日の最後は、少し寂しい。
関西発祥の古着屋だらけの町になっちゃったし、客引きのお姉ちゃん達がエリアを牛耳ることによって夜がより一層暗く感じて、シュン…な気持ちになる。1人で歩いてるうちにこの場所で起こった色んな出来事を思い出した。
みんなそれぞれの孤独が待ってるだろうけど、ただただ元気に過ごしていてほしい。
好きだなと思える人達の顔を見るとそれだけでも嬉しい。こういうのは多分あえて言葉にした方がいい。

光の森という呑み屋がずっとここにあってくれたら良いなと思った夜でした。


インスタストーリーの投稿

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?