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「シン・ちむどんどん」と、君たち(本土の人間)はどう生きていくか

つうわけで

前回(劇場版センキョナンデス)に引き続き、再び山梨の上映会に行ってまいりました。はや6ヶ月か…もう遠い昔の出来事のように思えます。
(写真は、YBS山梨文化ホールでの上映会の図。トークショーでの裏話や語られなかった部分については盛り上がりすぎて、40分があっという間でした。)

基地問題についてどれだけ知っていたか

作中で出てきた阿部岳記者の名前に見覚えがあったので、本棚を探していたら…あった!「これってホント!?誤解だらけの沖縄基地」(沖縄タイムス社)に担当記者として載っていた方だった。

どこから基地の問題に関心を持ったかというと、ニュース女子問題、「探偵!ナイトスクープ」構成作家で小説家の百田尚樹のデマから始まった感じですね。(ちなみに、知人が「これは本当にどうしようもない」とDisりまくっていた、「Fukushima50」原作者の門田隆将も、お仲間でデマを書いている側でした)

なぜ、そこまでしてデマを流すのか?以前からデマはあったけども、さすがに露骨すぎるんじゃ?というところから「じゃあ、現地の意見をちゃんと読もう」と、かつて新聞で連載したいたのを本にしたやつを見かけたので、読んだ感じです。つまり、私の知識は1冊の入門本を読んだ程度のド素人です。

なぜ、ちむどんどんなのか?

なぜ、タイトルが「シン・ちむどんどん」なのか?

正直な話、昨今の庵野作品に便乗して「シン」をつけるのは「心底」うんざりとしていたのですが、見て「真意」がわかったような気がします。

近年の政治家は、どうも原稿を読んでいるだけであったり、予め決まった質問に対しての応答しかやっていないように思えます。つまり、「自分の言葉」が無いわけです。

自分の言葉で言ってしまうと、糾弾されて辞任・退任につながる可能性がある。だから、玉虫色の発言しかしない。逆に、維新は言い切っていますが、それと真逆のことが起きると逆ギレをするか、責任転嫁をする。

最近の、大阪万博で吉村・橋下・松井が「お前らのせいだろ」と言い合っているみたいなものですね。そのどちらかになっているように思えます。

そんな中で、意表をついた質問をしたらどうなるのか?
はぐらかされないか?
いい加減な回答をしないか?
ということで、「ちむどんどん」は大事になってきます。
三者三様、どう答えたのか?これは、実際に観ていただければと思います。

沖縄県知事戦と辺野古基地から見る沖縄

本作が主に前編で描いているのは県知事選で、後編はその論点の1つでもある辺野古基地です。

県知事選は、オール沖縄支持の現職の玉城デニー知事と、オール与党・もとい本土でもある佐喜真淳候補、そしてその他にあたる下地幹郎候補がいかなる人物なのか、と描かれます。

結果は見るまでもなく、玉城知事のゼロ打ち(開票開始直後、開票率0パーセントに近い時点で候補者の当選確実を報じること)で勝ったわけですが、大事なのはその過程であると思います。

そして、辺野古基地についてですが、これは経緯を話すと本当に長くなるわけですが、ほとんど何も知らないプチ、ダースと観客が一緒に「表面」を知っていき、「ここからどう考えていくか、どう行動するか」という構成になっています。

時間をわりと割いているとはいえ、これ以外にも長い年月にわたって問題があり、そして本土は沖縄をどう見てどのような態度を取っているのか?という感じになっております。

佐喜真淳候補のイヤ~な感じ

佐喜真(さきま)淳候補は、元は基地のある宜野湾市長を二期務めていました。自民から抜群の支持を得て、沖縄県知事に与党候補として2回出たものの、2回とも破れています。

これは、2018年時点の記事です

9月5日、候補者による公開討論会で女性政策を問われた時、佐喜眞氏が「女性の質の向上」と話したのだ。この発言はインターネットでも拡散され、「女性は男性よりも劣っているという意味か」との批判が殺到した。結果、選挙中の情勢調査でも玉城氏は終始、女性票で優位に立った。「あの失言はボディーブローのように効いただろう」(前出の選対幹部)という。

うかつというか、日頃から思っていたことがボロっと出たんだろうな…とは思います。

そして、作中でも指摘されていた旧統一協会とのズブズブっぷりですが、もうズブズブというものじゃないです。マジで首、いや、耳くらいまで浸かっています。なにせ、旧統一協会の信者が司会のラジオ番組に出ていて、日韓トンネル(これも旧統一がらみの案件だったりする)のイベントにも出ていて、旧統一が経営しているニュースサイトでインタビューを受けていて、旧統一の大規模会合に参加するために韓国や台湾に行って…。赤嶺議員が「ズブズブ」と何度も連呼していたのは、マジでズブズブだったからです。

だから、ダースさんが旧統一のことについて聞いた時に、露骨に嫌な態度を取ったのも、「なんでバレたんだよ」「お前らのせいだからな」と言っているように思えました。

やはり、組織により応援されていた人、組織によって動かされていた人、という感じが見受けられました。

オレンジのおっちゃん、下地ミキオ候補

本作では、第三の勢力として下地幹郎(ミキオ)が出てきます。かつては自民党議員だったものの、離党。国民新党の幹事長にまで上り詰めたのですが、そこからジリ貧状態で、2019年に秋元司議員が中国のIR参入を目指すリゾート関連団体から違法献金を受け取って逮捕された後に、同じく100万円を貰っていたことが発覚し、維新から除名処分を食らいました。

今年9月になって、なぜか維新から除名は解除されたのですが、本人に復帰の意思はあまり無いみたいです。

そして、映画では描かれていなかったですが、統一教会主催のイベントでも数度挨拶をしていました。

つまり、さきほどの佐喜真淳候補とは、表と裏の存在だったと言えるでしょう。権力も支援団体も無い佐喜真が、ミキオであったと。

本作では、トレードマークであるオレンジパワーが溢れて、みなぎりすぎて逆に胃もたれを起こしそうなくらいだったのですが、わりとオール沖縄と自民の良いとこ取りをしようとした政策を掲げていたり、思いつきを実行に移す、良い意味でも悪い意味でもいい加減な人なんだな、と思ったりもしました。割りと映画で見ただけの印象は悪くはないです。ただし…

ミキオの奇妙な数式

「あれ、待てよ、辺野古基地の県民投票で何か言っていなかったっけ?」と思い出しました。ありました。

「県民投票が終わり、開票も終了しました。 「反対」43万4273票、「賛成」11万4933票、「どちらでもない」5万2682票、これに、投票に行かなかった55万余の県民を加えれば、「反対」は43万人超、「反対以外」が計71万人との結果になりました。」

「私が申し上げてきた「投票率64%、反対票39万票以上」という基準は超えられず、勝利者の軍配をどちらに上げることもできない状況が生まれてしまう事となりました。最終決着をつけるのは、やはり政治の力だと、改めて感じております」

「昨日の県民投票を受けて、今日は色々ありました。私のツイートが炎上したと聞きましたが、私の言っていることは全く間違いありません。反対の43万票を評価し、71万名もの、明確に辺野古に反対を唱えなかった行為に目を向け、自らの考え方で物事を進めない。 これが当たり前の事だと思います」

つまり、55万人は投票に行かなかったので、「71万人が事実上移設工事に反対はしていない」「(特に意味はない自分で作った基準を)超えられていない」という独自の理論を言っていました。負け惜しみでしょうか。

ただ、少し調べるとミキオの父親は沖縄の大手ゼネコンの創立者で、ミキオを破って今自民の国会議員をやっている国場議員なんかも、同じく大手ゼネコン創設者の孫…つまり、辺野古工事で得をする側であったりします。そりゃあ「県民投票なんて意味がない」と言いますよね。

今作では出てこなかったものの、国場議員も、ダブル不倫の末に他人の配偶者に卑猥なLINEメッセージを送るという下世話な事件を起こしていたり、議員の元秘書が(今作にも出てきた)元山さんがハンストした行為に対して「ハンストはテロ」「今後はさっさと死ね、と浴びせる」と書いて謝罪したとあって、「なるほどなあ」と思ってしまうのでありました。

デマを流して栄転する

本作のテーマの1つでもあるのが「デマ」「ガセ情報」です。

特に、基地反対・座り込みに対するデマやガセ情報が非常に多く流されており、SNSでよりいっそう可視化されています。もはや、今では旧Twitterが「デマの巣窟」と言われているほどだったりします。

本作では、元2ch管理人・現Abemaレギュラー出演者の西村博之が座り込みに関するデマを流していましたが、つい最近「沖縄は寝たきり老人が多い」「沖縄の人間は所得が低いので、高齢者介護は年金目当てにやっている」というデマを流していました。さっそくこれらは全部デタラメだという記事がでていたんですが、やはりデマを流すのは簡単だけど打ち消すのは本当に面倒なのだな、と思わされます。

これは、要介護者や介護の従事者への侮辱にほかならない(私も、実際に祖母の介護をやっていた時期があったので、これはマジで許せねえ)のですが、考えてもみてください。「沖縄だけだったら」これほどデマを流しても良い、となっているのは何故なのか?

インプレッション数がカネになるから?ある意味ではそうかもしれない。
支持者へのウケがいいから?それもある。
エンターテイメントだから?確かに、ひろゆきを司会にしたり、番組に出したり、アフリカに送っているのもそういう要素はあると思う。

ですが、本質的には「差別が支持されているから」ではないのでしょうか?

西村博之がひどい発言をしたのは何も今に限った話ではないのですが、漫画のネタになったり、いろいろ番組に出ていたりとむしろ「後押しをしている」感じがあります。それは、なんとなく「文句を言っている奴を叩き潰したい」というあざ笑う(本土の)大衆がいるわけで、そういう支持を集めているからこそ、それが政策になっている…。

だからこそ、作中の菅官房長官(当時)の「粛々と工事は進める」発言に繋がったのではないでしょうか?

この作品でちょっとだけ出てきた小渕優子議員は久々に選対として栄転しておりましたし、「すげー、ほぼ黒な違法資金提供を受けて、その証拠があるHDDをドリルでぶっ壊して、秘書2名が有罪になっても当選し続けられるんだな」(そして、偉い職につけるんだな)」と思いましたが、やっぱり、ひでえことをやったやつが問題なく出続けられることにも問題があるんだな…というのは感じました。

確かに、デマやいい加減なこと、ひでえことは無視した方がいいこともあるでしょう。ただ、無視したらつけあがってきたり、「もう何年も前のことやろ」と開き直ってくるのも事実。なので、やはり反応はしていかないといけないんですね。

君たち(本土の人間)はどう生きていくか

よく、何か政策が通ると「前から言え」とか「選挙で結果を出してから言え」みたいなことがSNSでは言われがちだったりします。これに関しては沖縄では「民意」は決定しています。

国は「お前らは裁判で敗訴したから、辺野古の新基地建設に関する代執行(沖縄県の代わりに工事を行う)をやるからな」と言っていて、県は「軟弱地盤の存在が判明して、工事がいつ終わるかもわからない。普天間飛行場は危険だけども、辺野古移設は間違っている」とやっているわけなんです。ですが、徹底的に中央政府が突っぱねているのが現状ですし、何なら国は巨額の賠償金を県に請求しています。ひどいもんですね。

この映画は、見たら終わりではなく、むしろ見た直後に「どう考えるか」「どう言葉を発していくか」が大事になってくる…というわけであのアニメ映画よりも「これからどう生きるか」が伝わってきたのではないでしょうか?

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