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意思決定における「間違い」と「正しい」

本内容は書籍「確率思考 不確かな未来から利益を生みだす」からの要約になります。


知らないことを知ろう(無知の知)

後知恵バイアスや結果主義的な評価は、意思決定の質を歪める一因です。
私たちは一度きりのチャンス、すなわちコインを一度しか投げられない状況下で行動を起こさねばなりません。
それゆえに、行動を起こす際には過度な確信を必要とされがちですが、これは隠れた情報や運の役割を見落とすリスクを高めます。

私たちが「わからない」と認めることは、賢明な意思決定への第一歩です。学校教育では「わからない」ことが知識不足と同一視されがちですが、実際には「わからない」ことを認めることが、知識の探求において非常に重要です。
神経科学者スチュアート・ファイアスタインは、その著書やTEDトークで「無知」を科学進歩の原動力として論じており、この概念は意思決定においても同様に適用されます。
優れた意思決定は、単に良い結果をもたらすことではなく、知識の状態を正確に認識し、それを基にした優れたプロセスから生まれます。

不確実性を受け入れる

不確実性を受け入れることは、ポーカープレーヤーや法廷弁護士、ビジネスリーダーなど、あらゆる分野の専門家にとって共通の特徴です。
彼らは不確実性を認めることで、より精確な予測や戦略を立てることが可能になります。
そして、最善の選択をしても成功が保証されるわけではないという現実を理解しています。
このことは、特にリスクが伴うビジネスや法的な状況において顕著です。

「わからない」という認識を受け入れることは、世界をより正確に理解するための第一歩です。
そして、確実性を求めることで、極端な思考に陥るリスクを低減させることができます。
このような理解と受容は、優れた意思決定者になるための重要な要素となります。

世界は二元論では成り立たない

体重を測る際に50ポンドや500ポンドといった極端な間隔の目盛りしかない場合、実際の体重について妥当な判断はできません。
このように、過度に極端な基準を用いることは、判断の質を大幅に低下させることにつながります。
意思決定においても、全てが白か黒かの二元論で考えてしまうと、中間的な選択肢や微妙なニュアンスを見落とし、最適なリソースの分配や行動の選択を見誤ってしまう恐れがあります。

ポーカーのチャリティートーナメントでのエピソードは、意思決定における不確実性の本質を浮き彫りにします。
私が観客に76%の勝率を予想したプレーヤーが実際には負けた場合、ある観客が「間違った」と指摘するかもしれません。
しかし、私の予想は間違っていなかったのです。
24%の確率とは、そうなる可能性があるということを意味しています。

「間違い」とはなにか?

このように、「間違い」とは何かを再定義する必要があります。
予測が外れたからといって、それが間違いであるとは限りません。
あらかじめ考えられる可能性の一つが実現したに過ぎないのです。
この理解があれば、結果だけに基づいて即座に判断を下すことの危険性を回避し、より慎重で優れた意思決定が可能になります。

2016年のイギリスのEU離脱投票やアメリカ大統領選の例は、不確実性を正しく理解することの重要性を強調しています。
多くの予測が外れたことに対して、多くの人が予測者やブックメーカーを非難しましたが、それは不確実性の本質を誤解しているからです。
低い確率の出来事が実際に起こることは十分にあり得るのです。

不確実性を受け入れ、確率的に考えることは、優れた意思決定者になるための鍵です。
現実世界は常に不確実で変動するものであり、その中で最善の判断を下すためには、全ての可能性を考慮に入れ、それに基づいて慎重に決定を下すことが求められます。

適切にリソースを配分すること

意思決定は未来への賭けであり、単一の結果に基づいてその正誤を判断することはできません。
もし選択肢や可能性を十分に検討し、適切にリソースを配分していたなら、結果が望ましくなかったとしても、その決定が間違っていたとは言えないのです。
例えば、ポーカーで最も強いスターティングハンドを持っていても、結果が不利に終わることはあります。
しかし、そのカードでプレーしたこと自体が間違いだったと長く後悔することは理にかなっていません。
これは単なる後付けであり、確率論的な視点から見れば、不完全な情報や運の要素によって、正しい決定であっても望ましくない結果が生じることがあります。

リソースを大胆に配分しても、その博打がたまたま外れることもありますし、最善と思われる選択をしても、その時点では知り得なかった決定的な情報が後に現れることもあります。
選択肢がどれも完璧でない状況で最良の決定を下すことは、結果が良くなかったとしても間違いではありません。

「間違い」と「正しい」を再定義しよう

意思決定を単純に「正解」か「間違い」かの二元論で捉えるのではなく、さまざまなグレーの領域を認識することが重要です。
そのためには、「間違い」と「正しい」の両方を再定義する必要があります。
結果が良かったからといって必ずしも自分が正しかったわけではないし、逆もまた然りです。
これを理解することで、結果に固執することなく、より平穏な心で意思決定に臨むことができるようになります。

ポーカーはこの概念を教えてくれる良い例です。
たとえ優れた戦略的決定を下しても、プレー終了時に負ける確率は存在します。
それは、ビジネス、恋愛、さらには人生全般にも当てはまります。
最も成功している人でさえ、失敗することはありますが、それが彼らの決定全体を否定するものではありません。

「間違い」や「正しい」という概念を再定義し、世界の不確実性を受け入れることで、私たちはより客観的に自己の決定を評価し、感情的な落ち込みから解放され、より賢明な意思決定者になることができます。

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