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樹と動物と現代人(ヒト)と

私の今の仕事は、樹木や森のメンテナンスが1番のウエイトを占めており樹木に登っての剪定・枝下ろし、たまに伐採もします。既存の造園業や林業とも違う、また伐採屋さんとも異なる理念の元で、樹木を生かしていくという仕事です。特殊伐採と混同されますが、そういうものでもありません。

大きな重機もトラックも使わずに、全て手仕事で完遂させることをポリシーとしています。

先日、軽井沢でとある邸宅の作業を請け負いました。今後の庭づくりの方針に合わせて、数本伐採をとのことでした。

そのうちの一本が大きいモミの木でした。作業に着手し、樹木に登っていきます。その日私は地上作業員でしたが、クライマーが中段まで登ったあたりで、動物がモミの木を駆け回るのを発見しました。

ムササビです。初めて目撃しましたが、思ったより大きく驚きましたね。ムササビは主幹から枝へと駆け抜たのち、大きな体を広げて別の木へと飛んでいきました。

このタイミングで姿を見せたということは、まさか巣があるのではないか...クライマーとそんなやりとりをしている矢先です。やはりありました大きな洞にムササビの巣が...。

しかも

赤ちゃんもいるんですね...これが。伐採対象のモミに営巣してらっしゃる。困りましたよね。切りたくないんですよね。大人だけなら別の巣を探せるでしょうが、赤ちゃんは確実に生きていけないし、親も見捨てることでしょう。

ああああ....。


よし、切るのやめよう。私たちの方針ではそうなりました。しかし、我々が決められるものではなく、ガーデンの管理者とクライアントがどういう判断をするか、全てそれに委ねられます。

YESかYESであれ!お願いだから、切らせないでください。

YESでした!その木は保留で良いとのことで。

ありがとうございます。理解のある関係者とクライアントで良かった。作業自体は、枯れ枝除去と透かし剪定のみに留めムササビの生活を維持させることに成功しました。

これは個人所有の敷地内の樹木の話です。もし所有者が「そんなの関係ない」といえばそれまで。

時代の潮流に乗った重機伐採だったら、ムササビの存在に気づくこともなかったでしょう。

自分たちが正義と言う気もないし、都合があるのも理解した上で...。

森に入ったら、樹木に向き合ったら、人間は一歩遠慮をすることも必要ではと改めて思いました。

現代人は森や樹木から距離を置きすぎてしまいました。

森や動物に遠慮ができる現代人が、増えて行くことを願っています。





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