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Strategic Pupil

乃木坂46の奥田いろはさん、筒井あやめさんへ:

 小学生の僕がアコースティックギターを持って路上で弾き語りをするにあたり、最も重要と分かったのは「濃い常連客」を作ることでした。

 そのための1ステップ目は、街行くお客さんに、会話のキャッチボールが成立する「コミュニケーション可能範囲」に入ってきてもらうことです。

 駅前を通りゆく人のほとんどは、何か話しかけられるのが怖いとか、図々しく投げ銭やCD購入を促されるのではないか、といった理由で、心理的にも物理的にも素通りしていきます。見たとしても、遠巻きに眺める程度。そういった人たちを、どう惹きつけるか。

 僕の場合、お客さんがぐっと近くに来てくれるようになったのは、曲のセットリストを手書きしたボードを掲げてからです。
 松田聖子やテレサ・テン、吉幾三などと書いてあると、街行くお客さんは「小学生が歌謡曲を?」「吉幾三って……まさかこの子が?」という疑問を持ちます。

 テレサ・テンの『つぐない』を見て、「あなた、『つぐない』の歌詞の意味わかるの?」と大人の女性が尋ねてきます。
「あっ、不倫の歌ですよね」と返すと、驚いたり、笑ってくれたりします。
 この、通りかかった人が素通りできないような、つっこみどころを自分の中にどれだけ作れるか、この発想が功を奏しました。


一部編集して抜粋。単行本は2017年刊





「海外の興味ある国、街から定期的にエッセイ、ルポを発信し、読む方々が精神的に豊かになれる架け橋となる」という生き方を実現するため、そこへ至る過程の"応援金"として、感謝を込めて使わせていただきます。