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映画「THE FIRST SLAMDUNK」感想(ネタバレほぼなし)

Twitterでも書いたけど正直面白かった。
「リアル」風に再構築されたスラムダンクという感じ。
個人的に満足度は高いし原作ファンなら一度観て損はないと思う。
できればネタバレ見ずに行ってほしい。
俺は事前情報一切なしで行ったおかげでOPでテンションぶち上がって最高だった。
マジでその試合やってくれるんだ!?というサプライズだけでも超盛り上がったし単純に井上雄彦の絵で5人が動いてIMAXの大画面の中こっちに歩いてくるのは音楽もマッチしててめちゃくちゃ痺れた。
資生堂のCMを超贅沢にした感じ。
このOPは観た人全員がテンション上がったんじゃないかと思うくらい良かった。

ここから箇条書きメモ。

・総じて映画の情報解禁時に批判受けてた部分はそこまで気にならなかったという印象。
声優変更については映画始まってすぐに「本当に過去の声優が嫌いというわけではなく、こういう演出だから今回は若い自然な芝居が欲しかったんだな」と理解できる。
特にこの映画の宮城の声が塩屋翼では渋すぎてストーリーに影響が出るレベルだからこの変更は納得できる。
他のキャストも少し若く感じるが話してるうちに段々と慣れてくる。
唯一桜木の叫ぶ声がどうしても最後までジャイアンっぽく感じた。
しかもなぜか宣伝で使ってる「天才・桜木!!」の部分が1番ジャイアンっぽい。
他の喋ってる部分はそこまで変じゃない。

・CG作画もリアルなバスケを描くことにすごく効果を発揮してた。
声優変更と合わせてこういう映像がイノタケの頭の中に理想としてあったならそりゃ低予算で広いコートを走って止め絵で尺稼ぎしてたTVアニメには満足できんわな。

・気にしてた点が大丈夫だったなら何も問題ない良い映画だったのかと言うとそうでもない。
この映画の気になるところは声優とかCG作画とかじゃなく根本的なストーリーの構造部分にあった。
はっきり言ってしまえば主人公である宮城のストーリーと試合の展開があまりマッチしてない。
もう制作側もそこは諦めてて原作読んでるならその辺はわかるよね?という清々しい作りなのだけど1本の映画として観た時にストーリーが奇妙に感じる。
そもそも原作のsnnu戦で1番目立ってなかったのが宮城なのに(俺は好きだけど)、試合展開を変えずに宮城の回想ばっかり入るから普通の映画なら脚本がめちゃくちゃだと叩かれると思う。
一応宮城の兄がsnnuを倒すことを目標にしていたみたいな繋がりは作っているのだけど、原作から試合の流れはまったく変えてないからそうした設定が試合中に活かされるようなことはない。
もちろん最後は主役の宮城が空気になり1番バックボーンの描かれてない一年生コンビが試合を決めてハイタッチする。
え?こいつらが決めんの?とまったく原作知らない観客は戸惑うことだろう。
逆にその違和感さえ割り切って脳内で補完すれば、十分にクオリティの高い映画としてオススメできる。
試合展開の面白さは折り紙つき。
試合後半の音と映像のマッチしたシーンのかっこよさはどれも異常。
観てどう思うかはともかく井上雄彦の頭の中にあった試合はこういうものだったのか、と思えるだけの高品質な仕上がりにはなっているので確実に観る価値はある。
少なくとも同じジャンプ映画で今ワンピースフィルムREDを観に行くなら断然こっちを勧める。

・以下気になる点
カットされてる部分沢山あるから細かいこと言い出したら山ほど言いたいことあるよ。
基本的に心の中の台詞や試合中に喋るには不自然な台詞、漫画っぽいギャグシーンなどは削除。
俺がsnnu戦で1番好きなdumt監督の「kwt、skrgにつけ!」の名シーンもまさかの台詞なし。
三井がグレてた理由や期間をしっかり描いてないから後半開始時にバテバテな様子を見ると体力なさすぎない?と思ってしまう。
安西先生の桜木へのあと少しで一生後悔するところでしたの台詞も谷沢の話がまったく出てないから軽く感じる。
魚住はギャグすぎて存在ごと抹消。
森重やその他の高校の連中なんて当然抹消。
海南だけちょこっと背景にユニフォームが見えた気がする。
……などなど尺と演出の都合上「ない」シーンは山ほどあるからそこは我慢するしかない。

あ、でも宮城があの名台詞と共にドリブルでhktとswktのダブルチームをぶち抜くシーンは300点満点でした。
ここはかっこよすぎてなんか泣けたので是非観てほしい。

・俺もさすがにこの映画を無名の新人監督がやってたら「お前のオナニーにスラムダンクを利用すんなよ!!!!」とほんの少しだけブチ切れてたかもしれない。
しかし井上雄彦が監督・脚本をやってるという事実だけで何か改変されていてもこれがイノタケの頭の中だったのか、とかバガボンド・リアルを経てこういう心境になったんだな、とか都合よく思えるので原作者が関わってるって本当に大事。

・できれば落ち着いた時間帯に行ってスラムダンク好きな客層だけで集まって観るのがオススメ。
試合終盤は無音の演出が続くが劇場の観客が一切音を立てずに集中して観てたのがとても気持ちよかった。
20〜40代くらいのスラムダンク好きな観客達全員と心が通じ合った瞬間だと思えた。

・ネットで調べてるとこの映画のことをこれが初めてのスラムダンク体験でも楽しめると言う感想がちらほらあるがあまり正しくないと思ってる。
多分演出が漫画っぽくないという意味でそういうことを言う人がいるのだと思うし、スタッフも興行のためにはそう言うしかないのだろう。
だがしかしその原作ファンでなくても楽しめるという評はあくまで映像表現のレベルの話であり、この映画のストーリーは詳しくは原作読んで補完する作りのため正真正銘のファン向け映画である。
なんなら「ピアス」「リアル」まで読んどいた方がいいまである。
なので足りないシーンを脳内補完できる原作ファンじゃないとかなりストーリーがぶつ切り&意味不明に感じるところが多いと思う。
そもそも原作知らない人間がこの映画を100%楽しめるわけない。
入場者特典のポカリから意味不明だろ。

・賛否別れる理由もよくわかるが20年間も映像化を待った試合を映画にしてくれたというだけで俺は満足してる。
兎にも角にもスラムダンクという歴史的名作漫画の持つ最大の弾をここで使い果たした。
映画のタイトルがFIRSTだからSECOND、THIRDとこの映画の後の話が続いていくんじゃないかという感想も目にしたがそれはないと思う。
スラムダンクの魅力は高校生の問題児達の底知れない輝きと青春であって渡米後のプロバスケは興味ない。やったら観るけど。
映画途中まではやはりsnnu戦は桜木メインの試合なので桜木目線でもう一度描いてほしいと思ってたけど、ここまでガッツリ宮城視点で最後まで表現した以上それももうないだろう。
何にしてもsnnu戦の映像化という長年の心残りがようやく無くなった。
井上先生ありがとうございました。

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