カスリメティ

131.カスリメティはどうやって使うのが効果的か? 問題

カスリメティというドライハーブが好きだ。フェヌグリークの葉のことである。日本では生の葉が手に入りにくいため、ほとんどの場合、乾燥した状態で使うことになる。
その香りをどう表現していいのかわからないのだけれど、ちょっとクセのある深煎りした緑茶葉のような香り? これをカレーの使うと不思議とおいしい。日本ではバターチキンカレーの仕上げに混ぜ合わせているケースに出会う。「バターチキン発祥」と言われるインド・オールドデリ―の「モーティマハール」を取材したときは、「バターチキンにカスリメティは入れないよ、風味が濁るからね」と言われたのを記憶している。とはいえ、僕はカレーによってはカスリメティを使うことがある。

たいていの場合、仕上げに加えることにしている。手でよく揉んでパラパラと鍋に加えたら、ざっと混ぜ合わせ、少し煮てカレーを完成させる。調理の途中で加えて炒めることもある。いずれにしても、乾燥したスパイスは温まった油脂分と絡め合わせるのが僕の中では鉄則だ。“香りが立つ”のと“雑味や舌触りの違和感が減る”のと“香りが定着する”のだから。とはいえ、カスリメティについては使い方の工夫をこれまであまりしたことがなかった。

地元の浜松でカレーを作る機会があった。イベントとデモンストレーションと試食で3回のカレーを作る。そのすべてを“ドライハーブチキンカレー”として、同じ材料と分量で作り方を変えて挑むことにした。裏テーマは、「カスリメティの使い方を3パターン試す」である。次のように決めた。

A.イベント用のカレー
鶏肉とカスリメティをよく混ぜ合わせてしばらく置き、油で炒める。

B.デモ用のカレー
油で玉ねぎ、にんにく、しょうがを炒めた後、パウダースパイスと一緒に加えて炒める。

C.試食用のカレー
ほうれん草のピューレと混ぜ合わせ、油でにんにく、しょうがを炒めた後に加えて炒める。

鶏肉とマリネするAは、マリネ自体にそれほど意味があるとは思えなかった。最終的にカレーは鍋で他のものと一緒に煮込まれるのだから、鶏肉にカスリメティの香りがしみこむわけではない。それよりも、油で炒めるときに鶏肉の表面全体が色づくまで炒めると必然的にその周りに付着しているカスリメティは鶏肉以上に火が入ることになる。それがよかった。鶏肉の脂分ともうまく融合している感覚があった。

割とオーソドックスなBは、カスリメティをパウダースパイスと同じ感覚でとらえれば、正攻法と言えそうだ。実際、AIR SPICEでカスリメティをミックスするときは、中心のスパイス(パウダースパイス)の袋に混ぜることにしている。鍋中の水分が飛び、油分が浮いた状態で加えることになるのだから、頼もしく油脂分と絡み、いい香りが生まれる。

初めてCをやってみたのは、「カスリメティを水で戻してみよう」と思ったからだ。ほうれん草を湯がいて水で洗い、ミキサーでピューレにしたところに加えているから、ストレートに水で戻したわけではないが、混ぜ合わせて3時間以上は置いていたから、カスリメティ自体はしっとりとした状態になっている。これを炒めるのだが、ほうれん草が邪魔していることもあるからか、なかなかイメージ通りに火入れが進まず、かなり長い時間、炒めることになった。

結果的には、AもBもCもそれぞれにカスリメティのいい香りは出たし、ネガティブなイメージはなかった。温かい油脂分と絡めるプロセスさえ経ればカスリメティは実力を発揮してくれる。あとは、作りたいカレーによって、どのタイミングでこのスパイスを加えるのがいいかを選べばいいのだと思う。カスリメティの加え方についてこれで5パターンくらいのバリエーションを持てたのはよかったかな。

浜松のイベントでは、使い方とは別に使用量についても、実は、挑戦をしていた。
1人分のカレーにカスリメティはどのくらい加えることができるのか?
地元の友達から「ネット通販で買ったもののでっかい袋が届いて使いきれず困っている」と連絡があった。そういう人は多いと思う。「使わないからあげる」と彼女からもらった袋には、100gのカスリメティが入っている。たしかに、毎月カレーを作っても5年分近くはありそうだ。
今回のカレーでは、40人分に対して60gのカスリメティを使ってみた。自分史上最大量である。できあがったカレーはおいしかったし、評判もとてもよかったから、この量は、“おいしいカレー”として成立する量だったと言える。でも、個人的な感想でいえば、「ちょっと雑味が立ち始めているかな」と思う。60gではなく、50gくらいを最大値としておいたほうがよさそうだ。4人分なら5g。意外と少なそうに思えるかもしれないが、実際に計量してみると「え! こんなに入れていいの!?」というほど多い。好みもあるけれど、まあ、自分なりの限界を知っておくのは大事だと思う。

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水野仁輔

スパイスを通じて刺激的な体験をお届けする「AIR SPICE」代表。カレーにまつわる大小さまざまな問題についてウジウジと実験したり考察したりします。 http://www.airspice.jp/

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