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205.インドカレーの次はタイカレーの時代なのか? 問題

このところ、タイカレーのことばかり考えている。
タイカレーを作り、タイカレーを食べに行く。ハーブと発酵調味料の織りなすハーモニーがたまらない。1月にはタイ南部を旅したし、クロック(石臼)も新調したし、バンコクで知り合ったタイ人の料理人と日本人の仲間たちを集めて「タイカリ~番長」なるグループも結成した。ひとまずライバルは「東京カリ~番長」ということにしている。

僕は、自分が興味を持っていることがあると、少なくとも自分の周囲にはうるさいほど吹聴することにしている。誰かをその気にさせたいわけでも世の中に発信したいわけでもない。数は少なくても身近なところに共感してくれる仲間が生まれてくれたら、一緒に楽しみたいと思っているからだ。

最近、カレー特集を計画している、とある料理雑誌の編集チームと雑談をしたところ、「そういえば、○○さんが『これからはタイカレーの時代が来るよ』って言ってました」という。「へえ、何を根拠に?」と聞いてみたら、「水野君が最近騒いでいるから」と。いやいや、僕にそんな影響力はない。僕はただ自分が興味を持った分野や切り口を狭いところで楽しみ尽くしたいと思っているだけなのだ。編集チームには「タイカレーの時代は来ませんよ」と答えておいた。時代が来るも何も、タイ料理は、とっくの昔からおおいに盛り上がっているのである。

本来、インドにカレーがないのと同じようにタイにもカレーはない。外国人が一部の料理を「CURRY」と名付けたことから、呼称が流通して今に至る。でも僕は、へんてこなキッカケで生まれたCURRY文化にこそ興味があるため、インドカレーにもタイカレーにも興味が尽きない状況だ。

とはいえ、インドやタイの食文化を学び、伝える活動は、古くから諸先輩方がどっさりいて功績を残しているから、僕自身は、遠慮して別のステージで動くことにしている。かつてインドカレーを学び、独自のアレンジを加えて“スパイスカレー”としたように、いまはタイカレーを学び、独自のアレンジを加えて“ハーブカレー”を表現しているのは、そんな理由からである。

僕がひとまず整理したハーブカレーの手法には、5つあると前回の記事に書いた。もちろん、キッカケがタイカレー(ゲーンの一部)なのだから、メインの手法としては、「ペースト」となる。そこで、今回は、新刊『ハーブカレー』から自家製ペーストの章と市販のタイカレーペーストを使う章の2種を紹介したい。

まず、第2章の自家製ペーストについて。
個人的には、タイのクロック(石臼)を使うが、書籍化するにあたっては、できるだけ汎用性の高い手法をと考え、ミキサーやハンドミキサー、ブレンダーを使うレシピにしている。(それだってハードルはそこそこ高いのだけれどね)
日本のにんにくやしょうが(カーの代わり)、長ねぎ(ホムデンの代わり)、香菜の根だけでなく茎や葉、グリーンチリ、レモングラス、タイではあまりペーストにはしないバジルやミントなど様々なものをすり潰してペーストにする。これができてしまえば、あとは、具や発酵調味料、ココナッツミルクなどと煮込むだけである。

今回の本は「ハーブカレー初めまして」なので細かいところまで言及していないが、僕の探求テーマとしては、タイカレーを構成するいくつかの要素をどの順番で加えて加熱していくか、それによってどう風味が変化するかを整理したいと思っている。

A.    ガピを含むペースト
B.    ココナッツミルク
C.    具
D.   発酵調味料
E.    油

わかりやすく5要素だとしたときに、「A+Bを鍋に入れて煮て、CとDを加え、必要に応じてEを加える」手法もあれば、「EでAを炒めてからCを入れ、BとDを加えて煮込む」手法もある。A、B、C、D、Eをどう組み合わせるかだけでかなりのバリエーションがあるわけで、作りたいカレーによってそれらを自在に選べるようになりたい。
いま紹介した2通りでいえば、市販のタイカレーペーストを使う場合は後者が採用されることが多い。

市販のタイカレーペーストはよくできた商品で、グリーンカレー(ゲーンキョワーン)、レッドカレー(ゲーンペッ)、イエローカレー(ゲーンカリー)はどこにでも売られているし、少しマニアックなスーパーにいけば、マッサマンカレー(ゲーンマッサマン)、パネンカレー(ゲーンパネン)などもペーストも売っている。
新刊『ハーブカレー』でも、市販のカレーペーストを使うレシピは第3章で紹介している。

市販のペーストは油分を含むものも多いから、簡単に作ろうと思えば、ハンズオフでも調理可能。すなわち、材料のすべてをいきなり鍋に入れ、火にかけて具に火が通れば完成。この場合、時間は15分ほど。調理中はいっさい鍋に触らずにカレーができあがる。一応、新刊では、市販のペーストを使いつつも、もう少し手を加えてできあがるカレーを紹介した。

僕の好みとしては、市販の章で紹介している“グリーンカレーそうめん”は超気に入っているので、ぜひつくってもらいたいなぁ、と思う。



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