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ソラニン

ああ、深夜2時のiPhoneの熱があなたの体温だったらなあ!!

ひとりぼっちの憂鬱を駅のホームの吐瀉物が慰めてくれるから、なんとか立っていられる気がしている。私じゃない人と笑った全ての時間に舞い戻ってもいいからさあ、張られた肩をきつくかき抱いて、私は自分の嘘を知ることになる。いつも、いつも、間違えたって口に出してから気づくんだ、崩れる牡丹、降りた花弁を拾い集めても夢は思い出せなくて、両の手に思い切り舌を出して吐く真似をしてみた、少し泣いた。

見張られている、雑踏に、ショーウィンドウのマネキンに、駅構内を歩く鳩に、あるいは中華料理屋に。許されてみたいし、許されないでみたい、依存が愛なら常に責任が伴うから無闇に売ってはいけない、そんな一番恥ずべきで唾棄すべきところ、誰にも見せてあげないよ、あなたにもね。
生活の全てが誰かのために在った私が、今更私のために出来ることってなんだろう。今日日珍しいぐらいの臆病だし、奥の方やわらかすぎてちょっと引っ掻かれでもしたら二度と剥き出せないかも知れない。怖いんだいつも、私の震央から吹き荒ぶ風にあなたが凍えてしまわないかがたまらなく怖い。そんなことばかり気にしてる、それはつまり誰かのための生活は私のためにあるってことなんだけど。

世界で一番暗い部屋に君の寝息が響いて、それだけで全部うれしくなっちゃった。人工物で作られた暖かさは本物の幸せとは言えないかもしれないけど、これまでの泥濘は今日を得るために在ったとするなら、まあいいかって言える気が、している。通学路に咲いてる小紫のちっちゃな花見つけた時、下ばっかり見ている私も嫌いじゃないなって思えたし、あなたが寄り添うでも包み込むでもなくぶん殴ってくれる人で心底安堵してる、いつまでもコピーページじゃない日を過ごせるように。

しづかに目を瞑ってみる、私の本質は何も変わらずに鎮座しているけども、私を取り巻くものは1秒だって形を留めてくれないから、常に全力で手を伸ばしている。それは手芸用のリボンの様なもので指先を掠めては交わされてしまうけど、飢えている今、どうやって手を伸ばすのを辞めたらいいだろう?そっとつま先でアスファルトを押してみる、今の私は普段より美しく立てている気がして悲しかった。

もう、さよならなんだ。

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