見出し画像

森蘭丸の数々のエピソードをまとめてみました

こんにちは!戦国ヒストリー編集部です。今回も戦国ヒストリーで未公開の記事(色々訳あり)で、上記テーマをnote向けに再編集してみました!

注意:各人物のセリフ等はあくまで史料を基にしたフィクションです。

1、蘭丸の配慮(障子編)

※『鳩巣小説』より再現。

森蘭丸が14、15歳頃の、とある日のこと。

【信長】「今、障子を開けっ放しにしてきた。閉めてまいれ」
【蘭丸】「はいっ!」

蘭丸は信長の命で障子を閉めに行ってみると、障子はきちんと閉まっていた。そして蘭丸はひらめいた。

【蘭丸】「!?(…もしや殿は、私を試しているのかも知れぬな…)」

蘭丸は音がたたないように障子を静かに開けると、今度は勢いよく音をたてて障子を閉めた。そして蘭丸が信長のもとに戻り、

【信長】「どうじゃ。障子は開いておっただろう」
【蘭丸】「いえ、閉まっておりました」
【信長】「なにぃ? では今 ”びしっ” とした音はなんだ?障子を閉めた音ではないのか」
【蘭丸】「その通りでございます」
【信長】「では、障子はやはり開いておったのだろう」
【蘭丸】「閉まってはいたのですが、殿は先程みなに聞こえる大きな声で ”障子を開けっ放しにしてきた" とおっしゃいました。皆が耳にしているのに "閉まっていた" と申し上げれば、殿がうっかり者だと周囲に知らせることになります」

【信長】「むむうっ…」
【蘭丸】「閉まっていたままでは、ご命令を無視することにもなりますので、わざと開けてから、皆に聞こえるように大きな音を立てて閉め直したのです」

信長はこの配慮を気に入り、蘭丸の才覚を認めたのであった。

2、蘭丸の配慮(みかん編)

※『朝野雑載』より再現

ある日、森蘭丸が台の上にみかんを一杯積み、皆の者に見せてまわっていた。

【信長】「蘭丸!おぬしの力では危ない、倒れるぞ」
【蘭丸】「あああっ!!」(ダダーーン)
【信長】「それ見ろ!わしの言った通りになったではないか」

信長が心配したとおり、蘭丸は台ごと倒れ、みかんが辺りに散らばった。そしてまた別の日・・・。ある家中の者が蘭丸のみかん転倒事件について蘭丸に言った。

【ある者】「あのとき殿の面前であんな無様をさらして恥ずかしいと思わぬのか?」
【蘭丸】「なんのみっともない事がございましょう」
【ある者】「えっ?」
【蘭丸】「あのとき殿が注意下さったのに、ミカンの台を持ちこたえていたのでは、殿の御眼鏡違いということになります。それでわざと倒れたのです。まあ、座敷で倒れたからといって武道の傷にはなりませんから。」
【ある者】「ぬぐぅ…(こやつ、、まさかそこまで考えておったとは…)」

3、光秀が恨む、蘭丸へのご褒美

※『改正三河後風土記』より再現

ある日、信長は森蘭丸相手に褒美を与えようとしていた。

【信長】「蘭丸。この中からお前のほしいものは何でも与えよう」
【蘭丸】「この中に私の望む物はございません」
【信長】「では、そちが望む物を手の平に書いてみよ。わしも書いて見せてつかわそう」

信長がそう言うと、2人はそれぞれ手の平に書き、その後に内容を照らし合わせてみると、同じ文字が書かれていた。

【信長】「フフ。どうだ。わしはお前の胸中をよく察しているであろう。望み通りにつかわすぞ」
【蘭丸】「殿にはまいりました!」

信長は笑いながら言い、蘭丸は深く頭を下げたのだった。そして2人の手の平には ”近江坂本6万石” の文字が書かれていた。

近江坂本は蘭丸の亡き父・森可成(よしなり)の旧領であり、可成が討死したのちは明智光秀に与えられており、蘭丸にとって念願の地であった。しかし、その明智光秀が障子越しにこっそりと2人のやりとりを聞いていたのだ。

【光秀】「くっ…(おのれ… このワシをないがしろにしおって!)」

このときから光秀は信長を恨むようになり、それが本能寺の変の動機の1つになったという。

4、信長の爪の数

※『老談一言記』『朝野雑載』などより再現

あるとき、信長が自分の爪を切った後に言った。

【信長】「蘭丸、この爪を捨てておいてくれ」
【蘭丸】「・・・・・」(黙っていて捨てる気配もなし)
【信長】「ん?なぜ行かぬのだ。」
【蘭丸】「それが…。殿の切った爪が一つ見当たらないのです」

そこで信長が蘭丸の袖を振ってみると、爪が一つ落ちたという。

【信長】「フフッ。(小童のくせに、よう気が付くやつだ)」

5、信長から刀をもらう

※『老談一言記』『朝野雑載』などより再現

あるとき、信長が厠(=便所)へ入る際、蘭丸は信長の刀を持って待つ間、刀のつばの菊模様の花弁を数えてみた。それからしばらくたったある日のこと…。

【信長】「わしの刀のつばの模様の花弁の数をあててみよ!あてた者にはこの刀を与えよう」

信長がたまたまその刀について近習たちに言った。皆が答える中、蘭丸だけは黙っていた。

【信長】「蘭丸よ。なぜそちだけは答えぬのだ?」
【蘭丸】「先日、殿が厠に入ってその刀を預かっている際、花弁の数を数えておりましたゆえ…」

これを聞いた信長は感心して蘭丸に刀を与えたという。

6、明智の謀反を察知

※『武将感状記』より再現

あるとき、蘭丸が言った。

【蘭丸】「明智殿の殺害をそれがしにお命じ下さい」
【信長】「…。理由を申してみよ」
【蘭丸】「今朝、明智殿が食事する様子をみたところ、口中の飯も噛まずに何やら考えているようでした」
【信長】「それで?」
【蘭丸】「箸を落としても気付かず、しばらくたって "ハッ" と驚く始末…。それほど深く何を考えているのか。おそらく天下の一大事を思い立ってのことでございましょう」
【信長】「むむむ」
【蘭丸】「手前が思うには、殿への逆心かと…。かようなことを申し上げるのも、明智殿が日ごろから殿を恨もうと考えられる事が幾多あるからでございます。決して油断はなりませぬ」

この蘭丸の警告に信長は聞き入れなかったが、のちには明智の謀反により、実際に本能寺の変が起きたのである。

7、明智を殴る

※『絵本太閤記』より再現

本能寺の変が勃発する約1カ月前、信長は家康を招いて安土で歓待することにした。

その接待役を命じられた明智光秀は、かねてから自分が主君信長に気に入られていないと思っていたため、このことを大いに喜んだ。光秀は喜びのあまり、家康の宿所とした大宝院に仮の御殿を造って壁に絵を飾り、柱には彫刻を施し、庭には珍しい草花を植えるなどし、さらには四方の警固までするほど万全を期していた。

その様子は誰からみても十分なほどに準備が整っていたが、これを知った信長は光秀を呼び出して言った。

【信長】「こたびの接待をなんと心得ておるのか!!」
【光秀】「えっ!?」
【信長】「贅沢の限りを尽くすとは不届きであろう。関東の上客にこれほどのことをすれば、朝廷から勅使を迎えるときにはどうするつもりだ?」
【光秀】「うっ… ぬぐぐぐっ!!」

皆の前で恥をかかされた光秀は、怒りを顔にあらわした。すると信長は

【信長】「そちは反省せんのか。おい誰か、光秀の頭を打て!」

周囲の者たちは互いに顔を見合わせ、ためらっていると、蘭丸がスっと立ち上がって光秀のそばに寄った。

【蘭丸】「ご上位でございまする。」
【光秀】「ぐあっ!! ・・・・・」

『絵本太閤記』内の森蘭丸が光秀を打つシーン

蘭丸が鉄扇で光秀の頭を打つと、光秀の烏帽子が破れ、額には血が流れた。

光秀は屈辱に耐えながら、その場を退いた。本能寺で信長を討ったのは、それから約半月後のことであった。

──────────────────────────────

いかがだったでしょうか。エピソードの多くは創作だと思いますが、森蘭丸の人物像が伝わったのではないでしょうか。

戦国ヒストリーの森蘭丸の生涯記事もありますので、もしご興味がありましたら以下の記事のご一読よろしくお願いいたします!

「森乱丸(蘭丸)」信長に寵愛された聡明な近習