サザエさんの憂鬱と、今の私

高校生だったとき、高校に行きたくなかった。

いじめられていたわけでも、友達がいなかったわけでもない。

ただ単純に、行くモチベーションみたいなものが一ミリもなかったのだ。

高校は男子校だった。これが共学だったら、好きな女の子を一目見るのがモチベーションになったのだろう。

しかし男子校の日常はとにかく鬱屈していた。夜寝る前も、「もう目が覚めなければいいのに」とすら思っていた。

日曜はサザエさんを見ると絶望的な気持ちになった。サザエさん病と呼ばれているが、私は重度のサザエさん病にかかっていた。病は、高校を卒業するまでずっと続いた。大学に入ってからは、知らない間に治っていた。

社会人になったら、サザエさん病がぶり返すものだと思っていた。

前ブログに書いた通り、私はスタバのバイトを1か月でクビになるほどの社会不適合者だ。スタバ以外にも、居酒屋とインターンを2カ月でくびになったことがある。アルバイトが3ヶ月以上続いたことは一度もなかった。こんなやつがまともな社会人になれると誰が思うだろう。しかし、社会に出てみたら、懸念していたような息苦しさはなかった。

私が苦手なのは「接客」なのだと思う。人と、上っ面だけで話している気がしていて嫌だ。日本は接客がとても丁寧な国だ。タイやヨーロッパに行ったとき、店員の接客がクソ適当過ぎてびっくりした。並みの日本人なら不快に思うだろうが、私は羨ましいと思った。気遣いがあまりないというのは、本当の意味で心が通い合っているのではないかと思った。

私は美容師とまともにしゃべることができない。昔、話を盛り上げようとして、だだすべりしたことがある。それ以来、美容師と話すのをあきらめた。髪を切ってもらっている間は、ずっと目をつむっている。美容師との会話は、聞いてもらいたい話を客がはなし、美容師がリアクションをとるという、「丁寧な接客」が根底にある。そこに私は、本当の意味で腹の底から語り合えないという虚しさを感じる。

私は今、「接客」に全く関わらないコピーライターという仕事をしている。
もちろん敬語で話す機会は多いが、あくまでそれは社内の話で、社外に出て営業などと言うことはない。
自分が好きな文章を書くということが出来ていて、なおかつ絶望的に不得意な接客がない仕事に就けているのは、本当に奇跡的だと思う。
これからもサザエさんを見て、憂鬱にならない日曜が続けば良いと思う。

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