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3人以上になると、一言もしゃべれなくなるあなたへ。

会社の座席は私が座る列に3人、向かい合わせになって女性3人が座っている。

違う部署だから、向こうの3人とはまったくしゃべらない。朝の「おはようございます」と退社時の「お疲れ様です」くらいだ。

3人はお昼休みの時、とてもしゃべりづらそうだった。真ん中に座るBさんが、AさんとCさんの橋渡し役を務めなくてはならないからだ。Bさんは、CさんよりもAさんと仲が良かった。仕事中でも、Aさんとばかり雑談しているのだった。

3人の中で独りだけしゃべる頻度の少ないCさんに、私はいつも小学生時代の自分を見ている。Bさんに話題を振られてもうまくレスポンスができないCさんに、腹の底から歯がゆい思いがする。

私は、誰かとお昼を食べるのがとても嫌いな子供だった。子供と言うか、大人になった今でもそうだ。ストレスですぐお腹を壊してしまうのは、昼食時のコミュニケーションが原因だった。


「クラス全員と仲良くなるために毎日席替えをしましょう」
小学校時代の担任はそう言って、毎朝くじを引かせた。仲がいい友達と同じ班になれたときはいい。しかし、そうじゃない人と机をくっつけてご飯を食べるのは苦痛だった。

無言で食べる給食はなんでこんなに美味しくないのだろう。何かしゃべることを頑張って考えるのだけれども、考えたところで口に出すことはしない。何かをしゃべることで、再びの沈黙が余計に気まずいものになってしまうからだ。

私は給食後の5時間目に、必ず手を挙げてトイレに行った。自分がストレスによってお腹を壊すことを、このころ知ったのだった。


3人以上になると私は話すのがへたくそになる。自分はしゃべらなくていいのではないか。そんな考えが頭によぎり、考えることをやめてしまう。出会い系で女の子と会うと「しゃべるのに慣れてる感じがする」とよく言われる。でもそれは二人きりでいるからで、ここにもう一人が加わった瞬間、私の人柄は大きく変わる。

私の部署の人たちは基本的に昼ご飯を食べながら仕事をするスタイルなので、向かいに座る彼女らのように活発にコミュニケーションを取ることはしない。だから小学生のころに感じたストレスに苛まれることはないのだけれども、やはり自分と同じ境遇の人を見つけてしまうと感情移入してしまう。

でも、3人以上で話すスキルは必ずしも必要ではないと思う。大事な恋人や親友といるとき、思い浮かぶのは2人きりのイメージだ。3人以上になると多くの場合で仲の良い二人組ができる。それを取り巻く痴情のもつれや嫉妬に、わざわざ自分から踏み込んでいくこともないのだ。

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