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#18 ”わかめ”コワイ

 落語の”饅頭コワイ”では、饅頭がコワイという主人公がみんなに苦手だと言うと、饅頭にありつけるという人間社会の面白い一面が表現されている。ああ、私も”饅頭コワイ”。

 日本から遠く離れた南半球のニュージーランドでは、日本から運ばれた”わかめ”が湾内で繁殖をして迷惑をかけているらしい。輸送船のバランスを保つためにバラスト水として日本の海水を船底に入れ運び、現地でその水を放出する際にワカメの胞子が運び込まれたという。日本なら”生わかめ”としてタコと一緒に酢の物として食べたり、みそ汁の具材となり食卓に上れば「湾」を埋め尽くさず「お椀」の中にあるだろう。

 ここで問題発生、タコ? 海外では一般的に食べない。なにより、海草を食べる習慣がない!! 英語で、昆布と”わかめ”はどちらも”海の雑草” seaweed としか言わず区別しない。だって、食べないんだもの。ましてや、”メカブ”なんてきっと存在すら知られていないでしょう。(TOFUのようにヘルシー志向の方々には、もしかしたら高機能性食品として知られているかもしれないけれど、、、。)。

 食べ比べをすると、言葉は自然と分化するのが食文化。例えば日本語では、牛肉は”牛”と”肉”という既存の言葉の合成でしかない。英語では、cow(牛)とbeef(牛肉)と言葉が個別に用意されている。意識があると言葉は、個別に用意される。牛肉をスーパーに買いに行くと、肉の部位をあらわす”地図”が、日本に比べてアメリカの方が細かい気がする。あばら骨の周りとか、場所による味の違いを意識している(最近は,日本の肉”マップ”もグルメブーム以降にかなり詳細になったと思います)。日本でいえば、鯛の頭頂部と目の周りの肉の違いを、名前を付けて区別したりするのに似ている。

 昔,日本食として寿司がアメリカ西海岸に持ち込まれた時、海苔(のり)のあの黒さが気持ち悪がられたらしい。海苔巻きは外側が黒くなるので、”カリフォルニ アロール"などと、まるでプロレス技のような名前を付けて、内側と外側を逆にして巻いて出したところ、徐々に海苔が受け入れられて今ではノリノリ(?)だそうだ。なぜ海外では海草を食べないか?何代も海藻を食べていない人類のグループは、生の海藻を食べると体内で消化できず腹をこわすという。食べ続けた人たちだけが今でも海藻を生で食べれる。海外でも加熱調理したものはOKだそうだから、見た目さえ我慢すればお味噌汁のワカメもOKなはずなのだが,,。

 以前,モンゴルからの留学生と話をしていたら、モンゴルの人々は外見はアジア人だけれど、体内の消化器は西欧人に近いと言われ驚いたことがある。(日本人と見た目そっくりなのに。)乾燥している平原では、食物繊維を含む野菜などを食べる機会は少ないそうだ。ビタミン不足にならないのは,人間が食べることができない”雑草”を食べて生育する羊たちを食べるからで,消化器系は肉食適応になっていると。なるほど、生き物の適応力ってすごい。ワカメか羊かの違い.

  ”ブラック バス”、”アメリカ ザリガニ” は、日本固有の生物態系に影響を及ぼしている。一方、”わかめ”は見た目も響きもかわいい気がする(サザエさんの影響?)が、ニュージーランドではワカメの天敵のウニがあまりいないために、現地の人も食べる習慣がなく(もちろん生では食べれない)、いまのところ”敵なし”のこわい存在だ。本当に、”わかめコワイ”だ。見た目で判断はできない。

 ちなみに、米国では”Japanese Green Monster”と呼ばれる日本からの外来種がある。ヒント、1930年前後にニューディール政策で土壌と水源の保護目的で日本から大量に輸入された植物。(ヒントにしては難しい?) 答えを知りたい? Webで調べてみましょう。前回の「言わずもがな」の二つ目の意味 https://note.com/aito_suzuka/n/n49c75201eaa6 から、自分で調べてみましょう。古(いにしえ)から伝わりし脳に記憶を刻む人類伝統の方法で記憶が自分のものになりますよね。(記憶の定着法:手間をかけると記憶に残りやすい.)

(写真: ニュージーランドで買った世界地図 ”Upside Down World Map" 。たまには”視点”を変えて世界を眺めよう.)