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思い出しては思い出せなくなってきた話

先週、素敵な式にお呼ばれされて行ってきた。
昔から知っている彼女の晴れ姿は清澄でとても綺麗で、ずっと見ていたくなるような幸せに包み込まれて、式の時点から涙が止まらなかった。

余韻に浸る中、私は両親にこんな素敵な経験をさせてあげれない悲しみで、ただ虚しくなった。

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終われなかった恋が杭を打たれたように心にずっと残っている。

20歳になりたての頃、顔も声も名前も存在も、絵に描いたような理想の男の子に恋をしていた。
誰かと群れて大きな声を出すような人ではなく、暗所で咲く花のような影っぽさに惹かれていた。

会社の飲み会で話すタイミングを見計らいたくて二次会に着いて行った先のバーで、カウンター話す中、話題に上がったカクテルを一口飲んでグラスを渡された時、目が眩むほどの衝撃を受けた。

まずは友達になりたいから"さん"付けはやめてほしいと、ろくに仲良くもない状況でお願いをし、照れくさいながらもすれ違うたびに手を振り合って親睦を深めた。
ガストでご飯を食べて飲みに行って会話が弾まなくても、好きだからずっと同じ時間を過ごしたくて、酔い覚ましのファミレスを出た時の朝焼けがあまりに綺麗で瞳のシャッターボタンをゆっくり押した。

バレンタインには東京で買ったお高いチョコを渡すと、私にでなく別の男性に「とにかく嬉しい」「もったいなくて食べれない」と話をしてくれていたようで、お返しは地元の銘菓だったけど何を貰ってもあの時は嬉しかった。

2人きりでご飯に行く約束をしていた日、仕事の上がりが遅くなって相手に連絡が滞ったときでも、足がないから迎えに来て家まで送ってくれた。

行けなかった分のリスケをいつにしようか話を振っても曖昧で、焦ったくなった私は「なんで2人でご飯に行きたいって言うのか分かる?好きだからだよ」と話をしてしまった。早とちりが過ぎたが、もう決着をつけないと心が済まなかった。
ここでキスの一つでも出来たのなら、してくれたのなら、かろうじて手を握ってくれたら何か進展があったのかもしれないけど、『何も言われなかったこと』が答えとなった。

その後LINEはブロックされ、話す機会はなくなってしまった。
思い出しては後悔の念を抱く中、数年後に彼が退職の手続きをする場面に出会した。
手続きが終わって立ち上がると、近くのデスクにいた私にさよならを言うような切ない目線が飛んできて、足先からじっくり凍った。

今までの私の悪いところを全て謝るから、行先をせめて教えてほしいと無我夢中に追いかけようとしたら、タイミング悪く同僚に話しかけられて見逃してしまった。
あの日からの後悔が一生付きまとっている。

何度でも夢で会っているし、眠りに入る前に思い出しては新鮮に泣けてくる。
あまりに身勝手だった20歳の私の恋心に添削をして、今度は間違えないから、上手く恋をするからやり直させてほしいって何度も思う。

脳内のHDDで何度も擦ってるから、次に進めないんだよな。と考えながら寂しい気持ちに入るような隙間風を受け止めるだけだった。

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