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【吐き気という地獄】

 抗がん剤治療を受ける患者が、吐き気に苦しむという話を耳にしたことがあるだろう。
テレビのドキュメンタリーなどで、よく聞く話だ。

 私が経験した白血病の治療で、最も苦しかったのが、この吐き気だ。

 みなさんは、吐き気が2週間以上続いたことがあるだろうか?
その経験がある方は、どれほど苦しいかお分かりいただけると思う。
1日中吐き気に襲われ、何もする気が起きない。
そんな状態が長い時で3ヶ月続いた。

 特にひどく吐き気に襲われた時期がある。
それは、
1,ご飯の時間
2,造血管細胞移植を行った後
だ。

1,ご飯の時間

 1日中吐き気がある中で、ご飯の時間ほど苦しい時間はない。
食べることはもちろん、香りを嗅ぐだけでも吐きそうになるからだ。
だが、入院しているのは私だけではない。
他の患者さんも当然いる。
周りにいる患者さんに出されたご飯の香りが、漂ってくるのだ。
これを無臭にすることは、不可能である。

 毎日、朝昼晩の3回、ご飯が運ばれてくる。
その度に、嗚咽が止まらなかったのをよく覚えている。
吐き気どめの点滴や薬をもらうこともできたが、私には効果がなかった。

2,造血管細胞移植を行った後

 移植後2週間。この時期が最も苦しかった。
四六時中トイレにこもっていたい、と思うほどだ。
昼だろうが、夜中だろうが、吐き気は襲ってくる。
そのため、寝ても1時間ごとに起きては吐き、起きては吐き、の繰り返しだった。
食事をとっていないので、吐くものは無いが、ずっと嗚咽が続いた。
嗚咽にも体力がいる。
体がしんどくてたまらなかった。
それでも吐き気がおさまることはなかった。
死んだほうが楽だ、と思うほどだ。
人生で最も苦しい2週間だった。

 その後、時間が経つにつれ、マシにはなった。
ご飯が食べられるようになるまでは、3ヶ月かかってしまったが。

 吐き気に関しては、人それぞれ症状が違うらしい。
なんともない人も、中にはいるそうだ。(羨ましい。(笑))

 吐き気の嫌なところは、周りの人が手助けできないという点だと思う。
見守ること、祈ること、しかできないのだ。
見守る側としては、どんなにもどかしいことか。

 吐き気の苦しみを分けることはできないが、今苦しんでいる方は、思っていることを伝えてほしい。
誰かに、"苦しいよ。“ "辛いよ。“ "しんどいよ。“
と。
周りに、吐き気に苦しむ人がいる方は、しっかりとその言葉を聞いてあげてほしい。
"あなたのそばにいるよ“と伝えてほしい。
"あなたは独りじゃないよ“と伝えてほしい。
その言葉が、どれほど支えになるか。
弱音を吐けない方は、ここのコメントに書いていただいても構わない。
どうか、1人で抱え込まないでほしい。

 この記事が、少しでもあなたの心を動かせますように。


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