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認知症の症状のある方に寄り添うということ

[認知症の症状のある方の帰宅願望]


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これは現在では身体障害者2級、要介護2、電動車椅子である自身が、まだ歩けて介護福祉士として働いていたときの話である。

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入所されているBさん。

午後3時になると帰宅願望が激しく、痙攣を起こすぐらい家に帰りたいとドアを力一杯開けようとする。

帰宅願望とは、単に家に帰りたいというものではない。

その認知症の症状に寄り添った背景で、そのときその当時、家に帰らなければならないという、やりがいを持った希望である。


Bさんには優しいご主人がいた。
御主人は近くにお住まいであるが、歩行器を使っており、その歩行器で毎日面会したいと訪れる。

歩くことが大変なのに、坂道を登り、雨の日も風の日もやってくる。


しかし、私たちはその面会をお断りしなければならない。


なぜなら、Bさんの帰宅願望が激しくなってしまうからである。


私は当時、帰宅願望となる30分前に、NHKののど自慢の録画をテレビで流していた。


毎回その録画なのであるが、新鮮にみなさん喜んでくださる。


そののど自慢の左上にある時間は12:30、

まだBさんは楽しくリズムをとって穏やかである。


しかし本来の時間は15時である。

Bさんは立ち上がった。


[市場(八百屋)にいって買い物してご飯の支度しないと!]


帰宅願望がはじまった。


施設内で一緒に料理ができればとアプローチしたが、
あくまでも家に帰ってくる旦那さんのためである。


帰宅願望は激しく、私の手は力一杯掴まれて腫れた。


Bさんは身体中に汗をかいて力一杯振り切ろうとする。
不穏になり人手が足りず、施設の事務職員も見守りに入った。


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ここでお気づきになられた方はいるだろうか。




Bさんは見当識障害はもちろんのこと、20年ぐらい前の世界で暮らしている。


しかし、


[時計が読めるのである。]


これはなんと素晴らしいことだろう!


時計が読めることを上手に活用しBさんに心地よく何かを楽しんでもらえたらと試行錯誤する中で、私の体はアザだらけになっていた。


それでもお互いに諦めない。


解決方法はなく、いつも帰宅願望で悲しい思いをさせてしまった。



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そして行ってみたこと。


時計はもっと大きなものに変えてみた。

Bさんはとても喜んでくださった。


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ある日、その時、いま。

利用者にとっては大切な命である。
尊厳を守り、心に寄り添いたい。


昔暮らした背景、大切にしていきたい。


全日本バリアフリー推進協議会 代表理事
バリアフリースペシャリスト®︎静ちゃん

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