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自分で自分の首を絞めていないか?

少し過激なタイトルを入れましたが、これには理由があります。
先日、全国鰹節類青年連絡協議会(以下、全鰹青)という、まあ鰹節類に関わっている事業者の青年(といっても中年代もいらっしゃいますが)会の全国大会が、東京で開催されました。

とはいっても、今回はコロナの影響で規模は格段に縮小され、各地区の代表者と東京地区、そして来賓の方がごく少数の、総数で30名程度の非常にコンパクトな会でした。(平時なら150名以上)
その中でぽろぽろと聞いた話で、本節(いわゆるカビをつけて、1本丸のまま売られているかつお節)が、どんどん売れなくなっているという話がありました。

これは実際に、生産量のデータを見ても数字に出ていて、このグラフの一番下の赤い『グラフ』とも呼べない線のようなものが本枯節の生産量です。

(こちらのデータは無断転載・転用を禁止します)

元の量が少なすぎるので、どのくらい減ったのかわかり辛いのですが、数字で表すと909tから435tと、約52%の減少です。僅か10年足らずで半分以下に減っています。これは、姿売りの節を作れる生産者が減っていることが原因の一つにもありますが、それ以上に恐らく、使う人が減っていると考えられます。
これまで、かつお節を削ってだしを引く人たちは、比較的ご年配の、それまでの習慣で継続されている方が多いと、私自身も実際にお客様と接していて感じています。

では若い人はどうでしょう。
若い方は削ることに興味が無いのでしょうか?
いえいえ、そんなことはありません。
イベントや教室で、削りたてのかつお節で出汁を引いて、味わっていただくと、削ることに興味を持つ人は少なからずいます。お子さんと一緒に、食育も兼ねて、親子でやりたいと仰る方も少なくありません。
うちではそこから削り器を買って、実践に繋げられる方は決して少なくありませんし、その後のリピート率も低くはありません。

では、なぜ他社では、実際にそういった方々が、削ることが少なかったり、削らなくなっているのでしょうか?
ここに、私は2つの大きな原因があると考えています。

①削り方を知らない
②道具の扱い方を知らない

意外に思えるかもしれませんが、自分でかつお節を削っていないかつお節屋は少なくありません。そのため、削り方を知らない、またはうまく削れない方は、少なくありません。

そして、もう一つ。
こちらの方が大きな問題なのですが、削り器の構造や、扱い方を知らない人が大半で、対応ができないのです。
道具の良し悪しを判断することができないため、また、どうやったらうまく削れるか道具の扱い方を知らないため、お客様の『うまく削れない』に対応できず、結果としてお客様が離れていくのです。
場合によっては、「かつお節って難しい」と思われて二度と手に取っていただけなくなるかもしれません。
これでは、かつお節を売りたくても売れません。それどころか、自分たちで売れない状態を引き寄せているとしか思えません。

商いとして、売りたいのなら、売れない原因を取り除くことがまず第一歩ではないでしょうか。その最も簡単で確実な方法は、削り器の扱い方を知り、お客様の「困った」に対応する事です。
これをやると、必ずお客様との対話が生まれますし、削れるようになると嬉しくなり、自社に対してプラスのイメージがついてきます。
(尚、削り器の扱い方は、こちらの取扱説明書【かつお節がうまく削れない方へ】でも取り上げております。)

売れない状態からの離脱を考えるのであれば、今やっている事とは逆の手が必要ではないかと考えます。

なぜかつお節が売れなくなってしまったのか、その一因として、自分たちの対応を考え直す必要があるかもしれません。
自分たちの対応が、実は自分たちの首を絞めていないか?
自分に対応できる範囲が増えることで、これまで取りこぼしてきたお客さまを集めることができれば、それは確実にお客様が増えていきます。

かつお節屋さんには、削り器の良し悪しや、扱い方を覚えていただけたら、きっと消費も少し回復するのではないかな?なんてささやかな期待を込めます。

文章に残して、後の世代に繋いでいきたいと思っています。 サポートいただけると、とても励みになります。 よろしくお願いします。