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プレゼント

その子は、レジ横にある玩具が詰め込まれた段ボールのてっぺんから、僕を見つめていた。これから店内に陳列されるであろうウサギのぬいぐるみ。悩み顔のうさぎが、赤ちゃんみたいなパンツを履いている。そのうるうるとした瞳が僕を離さない。

よく見ると可愛い、というより気持ち悪いキャラクターだなとも思う。

どこかの家の子供が腕に抱いていた、あるいは枕元に置いていたであろうぬいぐるみ。あるいは、僕みたいなイケオジが変な趣味で集めていた代物かもしれない。中古のぬいぐるみなんて、どんな念が込められているか分からない。いや関係ない。それでもいいんだ。僕は彼女を家に連れて行く、そんな強い衝動にかられた。

お店の人に尋ねて、その子を僕の腕に迎え入れることに成功した。
クールなお姉さんは、いい年した僕の興奮した様子に戸惑いを隠せない様子だったが、さっと対応してくれた。

値札がついたその子は、近くで見ても中古とは思えない綺麗さで、早々に持ち主から手放されたであろうことを思うと憐れみを覚える。耳を優しくなでると、その瞳が一層うるうるしているみたいだ。

拾ってくれてありがとう、そう言ってくれてるのか?

僕はもう、いい年齢のおじさんだ。20年前に妻と結婚し、一人だが子供も育てた。息子はもう大学生で、ここから遠く離れた地で元気にやっているはずだ。

仕事では、堅実にキャリアを築きそこそこのポストにも就いた。だが、なんだかあくせくした日々に嫌気が差し、もっと楽に働ける環境を求めて転職したばかりだ。周りの環境には適応するのが得意な僕は、なんだかんだそれっぽくうまくやっている。

そんな僕の今の癒しは、こういうものばかりだ。周りからみたらきっとただの気持ち悪いおじさんだろう。別に恥ずかしくはない。実は小さい頃は、女の子に混じってぬいぐるみでごっこ遊びをしていた。疑わしくも今になってあの時の感性が蘇ってきたのだ。強烈に心惹かれるのは何故だろう。

いつしか青年となった過去の僕は、自分の少女的な部分を捨て去り、社会の枠にはまって生きていけるよう、望まれる男性像を実現できるよう、一生懸命もがきながらも頑張ってきた。しかし奥底の部分は今でも幼い子供のままなのかもしれない。

沢山のものが堆積して押しつぶされてきた一番下にある僕の純粋な部分は、まだ残っていたようだ。

こんな年にもなって、本当の自分というものを認識するなんて、なんだかおかしいな。

クリスマス仕様の店内の雰囲気に、僕の心が踊る。

帰ったら、この子を僕の仕事机の上に置いてあげよう。

僕は誰も見ていない車の中でその子の額にキスをし、助手席に座らせた。

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