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#29 最大心拍数は人によって一般的な平均とどれくらい違うのか?

最大心拍数を計算式から知ろうとすると、いくつかの式がインターネットで検索できます。

220 - 年齢

208 - 0.7×年齢

などがあります。今回は、「208 - 0.7×年齢」という式を発表した論文をご紹介したいと思います。

年齢の平均値、そして個人差がどれくらいあるのかなどを分析してくれていますので、是非読み進めてみてくださいね。



「220 - 年齢」は高齢になるほどズレがある

今回ご紹介する論文は2001年に発表されているものですが、論文が書かれた理由は巷で利用されている「220 - 年齢」という式が不正確なのではないか?という疑問から出発しています。

特に60歳以上の方の最大心拍数が「220 - 年齢」の計算式では低く見積もられる傾向にあるようです。そしてこの計算式が考案された当時のデータは心疾患や喫煙者、様々な要因を含んだ人たちのデータから導かれたものであったため、改めて検証しようじゃないかというものが今回の論文になります。


「208 - 0.7×年齢」の方が推定精度が高い

この研究ではまず過去に最大心拍数が検証されている351本もの論文、計18,712人ものデータを同じ土俵にのせて統計的に分析をしています。

そこから「208 - 0.7×年齢」という式が導かれました。

「220 - 年齢」の式と比べてみると、推定値が高齢になるほど異なっていることがうかがえます(下図)。

そして今度は論文の筆者たちが行った514名分のデータでも同じような結果になるのかを検証。おおよそ同じ推定式が導かれたため、「208 - 0.7×年齢」の方が妥当性が高いと判断されています。


個人の最大心拍数と計算式の最大心拍数にはズレがある

おそらく皆さんも、上で出てきたどちらかの推定式でご自身の年齢の最大心拍数を計算したことがあるかもしれません。

ここで注意をしておきたいことが、推定式で出た値は年齢の平均値であって、個人個人にはズレがあるということ。

例えば私の場合、現在36歳です。「208 - 0.7×年齢」にあてはめれば、最大心拍数は183bpmあたりになるはず。

職業柄、何度も最大心拍数を出すような研究の被験者を行っていますが、最大心拍数は174bpmほどです。平均から9拍も少ないです。

逆に平均よりも高い最大心拍数が出る人もいらっしゃいます。

平均からズレが大きいほど不安になるのが人の心理。ですがご安心ください。私も含め、至って正常な値です。

というのも上の計算式で出た最大心拍数は平均値であって、そこからズレることがむしろ一般的。今回の分析からは計算で出た値から上下±10拍の中に、約70%の人の最大心拍数が該当するというような個人個人のばらつきがあることも分かっています。

私の年齢(36歳)では平均値が183bpmですので、173-193bpmに約70%の人が含まれています。そしてより大きく幅を取れば、163-203bpmのどこかに約95%の人の最大心拍数が当てはまります。

図でお示しすると下図のように平均値(緑線)があって、濃い緑の中に全体の70%が、薄い緑の範囲までいけば約95%の人の最大心拍数が含まれます。

ということで、計算式の結果とご自身で把握している最大心拍数が違っているからといって、あまり心配する必要はありません。


最大心拍数の低い/高いに運動習慣や性別は関係ない

そして今回の調査から更に分かったことは、運動習慣の有無と最大心拍数が高い/低いに関係性はなく、それは性別にも言えるということでした。

統計的な分析からは年齢によってばらつきの80%が説明できて、残りの20%は遺伝やその他個人差による影響であることが分かりました。

ですので計算式が運動習慣や性別によって場合分けされずに、「208 - 0.7×年齢」で一本化されています。


計算式を上手に使いましょう

今回の結果をまとめると、以下の4点になります。

  • 「220 - 年齢」よりも「208 - 0.7×年齢」の方が精度が高い

  • 人それぞれに最大心拍数は平均値からズレるもの

  • 年齢を重ねるに従って最大心拍数が落ちていくことは間違いない

  • 最大心拍数に運動習慣や性別は影響しない

トレーニングをしっかりとされている方は、ご自身の全力を発揮することで最大心拍数を把握されていることが多いと思います。

しかしトレーニングを始めようとしている方、全力を出すようなトレーニングを行っていない方にとっては計算式が便利です。

そのような皆さんはまず「208 - 0.7×年齢」でおおまかに値を掴むことをおススメします。計算で出てきた最大心拍数から運動強度を設定していくと良いと思います。

そしてトレーニングにも慣れてきたら、是非全力を出すようなテストにチャレンジして最大心拍数を把握してみましょう。

以前ご紹介した海外記事に挙げられていた一例をお伝えすると、

1.3分間全力を出す(走るorバイク)
2.3分休息をとる
3.再び3分間全力を出す(走るorバイク)

最も高い心拍数(おそらく2回目の全力時)があなたの最大心拍数です。

かなりキツい方法ですが、ご自身の最大心拍数を把握することでトレーニングがより効果的なものになりますので、気合いのある日に行ってみてくださいね。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。スキ、フォローを頂けると大変励みになります!

次回も読みに来てくださいね。


ご紹介した論文

Tanaka, H., Monahan, K. D., & Seals, D. R. (2001). Age-Predicted Maximal Heart Rate Revisited. Journal of the American College of Cardiology.


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