KAWASAKI

ロードバイク好きの30代男。筑波大学スポーツ医学修士号。吉田記念テニス研修センター(フ…

KAWASAKI

ロードバイク好きの30代男。筑波大学スポーツ医学修士号。吉田記念テニス研修センター(フィジカルコーチ)、国立スポーツ科学センタートレーニング指導員(非常勤)を経て、現在フリーで活動中。日々のライドが楽しくなるような記事を投稿しています。Strava: Akito Kawasaki

マガジン

  • エネルギー代謝

    サイクリストや持久系競技者の皆さんに向けてエネルギー代謝についてまとめています。

  • サクッと一本!論文レビュー

    ロードバイクとトレーニングに関する論文を一記事につき一遍ご紹介しています。

  • 個人的な考察記事

    論文などを読みながら考えたことを記事にしています。

  • 富士ヒルクライム

    富士ヒルに関する記事を書いています。

  • 海外記事紹介

    サイクリストや持久系競技者に役立つ海外の記事を意訳、要約してご紹介しています。

最近の記事

ストレスのエネルギーコスト

仕事や学業、人間関係、お金の問題など、私たちの周りにはストレス反応を引き起こす種がたくさんあります。 また心配や不安といった感情も、ストレス反応の引き金に。 今回の記事ではストレス反応によってエネルギーコストが増え、場合によってはトレーニング適応に必要なエネルギーをも費やしてしまいかねないことを説明してみたいと思います。 仕事や学業とトレーニングの両立を目指すため、ストレスをエネルギーコストという観点から深堀りしていきましょう。 是非、読み進めてみてください。 スト

    • オーバーワークの悪循環

      特に体の不調は感じないのに何故かパフォーマンスが停滞したり、すぐに疲れてしまうといった経験をされたことがあるかもしれません。 それが数日では回復せず、数週間あるいは数カ月、場合によっては年単位で続くような大変困った状況はオーバーリーチング、オーバートレーニングといった言葉で知られています(この記事では一括してオーバーワークと呼ぶことにします)。 このような状況は過酷なトレーニングを続けるアスリートだけに起こるものなのでしょうか? 答えはノーで、オーバーワークの弊害は誰し

      • カフェインの効能

        コーヒーに紅茶、エナジードリンク、コーラ、風邪薬、etc… 仕事前には集中するためにコーヒーを一杯、休日には友人とおしゃれなお店で紅茶を楽しみ、運動時にはパフォーマンスアップを目指してエナジードリンクを。 カフェインは私たちの日常に深く浸透しており、何気なく摂取することでその効果の恩恵を受けたり、反対にカフェインの摂り過ぎによる頭痛などネガティブな作用に悩まされたりしています。 今回はサイクリングやランニング、トライアスロンなど持久系競技に取り組む方々へカフェインについ

        • 辛さとの対話

          ヒルクライムやレース、トレーニングの終盤に感じるあの辛さ。 今のパワーでいけるのか、下げるべきか - 持久系競技は疲労感と向き合い続け、その辛さにどう折り合いをつけられるかがパフォーマンスを決める一つの要因です。 様々な論文を俯瞰する限りパフォーマンスがメンタルによって頭打ちになっていることに疑いはなく、生理学などフィジカルな面と並行してメンタルな側面について知ることは大変有用です。 今回の記事では持久系競技特有の「辛さ」について理解を深め、辛さとどう向き合い、対処

        ストレスのエネルギーコスト

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        記事

          ミトコンドリアのトレーニング適応 -エピソード3-

          今回の記事ではミトコンドリアのトレーニング適応について解説していこう。 今回でミトコンドリアについての連載記事3つ目になる。こちらからでも問題なくお読みいただける内容になっているが、過去の記事との関連が強いのでそちらも是非ご覧いただきたい。 ミトコンドリアのトレーニング適応については研究者間で様々な意見が出されており、すっきりと統一された見解は存在しない。どの論文を採用するかで、意見が少しづつ異なってくる。 この記事でご紹介している内容もその例に漏れず、やはり読み進めて

          ミトコンドリアのトレーニング適応 -エピソード3-

          ミトコンドリアの離れ業 -エピソード2-

          ミトコンドリアについての連載記事2つ目となりますが、こちらからでも問題なくお読みいただける内容になっています。 始めから読んでみたい方は、以下のリンクよりご覧ください。 前回の記事ではミトコンドリアが筋線維の三大構成要素の一つであることをご紹介し、その役どころについて話を展開してみた。 今回はよりミトコンドリアに的を絞り、その素晴らしき離れ業について解説していこう。 1. 悠々自適なお隣さんリードストーリーとしてまずはミトコンドリアの昔話から始めたい。 ミトコンドリ

          ミトコンドリアの離れ業 -エピソード2-

          ミトコンドリアの存在感 -エピソード1-

          どんな細胞にも必ずあるミトコンドリア。持久系スポーツにおいては非常に大きな役回りを果たしてくれてもいる。 この細胞小器官は知れば知る程に奥が深い。不思議でたまらない。 そんなミトコンドリアについて書籍や論文、大学で学んだことを一度文章として整理をしてみようと思い立った。 話の筋がまとめ切れていないため1つの記事では完結させず、いくつかの記事に分けて展開していこうと思う。 また整理すると言っても教科書のように網羅的にまとめるのではなく、サイクリングや持久系競技を楽しんで

          ミトコンドリアの存在感 -エピソード1-

          簡易的なFTPテストのススメ

          1時間維持できる最大パワー = FTP ご自身のFTPを把握していると長期的なトレーニング計画を立てやすく、またヒルクライム大会などでも目標設定の際に重宝する。 最も信頼のおける測定はもちろん1時間全力で走ってみることではあるが、身体的にもメンタル的にもスーパーハードである。 代替の方法としてコーガン博士によって20分間の測定からFTPを導く方法が開発され、またランプテスト(漸増負荷テスト、zwiftでお馴染み)による測定もメジャーである。他にはクリティカルパワーテスト

          簡易的なFTPテストのススメ

          アミノ酸&タンパク質代謝のダイナミズム

          アミノ酸とは、窒素を含んだ超優秀な物質である。 体の構成物であるタンパク質はアミノ酸の集まりであり、DNAなど多種多様な窒素を必要とする物質を作る際にはアミノ酸を変形し利用可能な窒素を手に入れる。 つまり、アミノ酸が無ければ生物が始まらない。そのためアミノ酸は「生命の源」と呼ばれリスペクトされている。 小惑星「りゅうぐう」の砂からアミノ酸が見つかったときに世間が湧いたのも、アミノ酸の存在が生命を予感させるからだ。 天然には500種類ほどのアミノ酸が確認されているが、私

          アミノ酸&タンパク質代謝のダイナミズム

          乳酸代謝のダイナミズム

          「乳酸」。この物質は大きな謎をはらんでおり、今日でも多くの研究者を悩ませ続けている。 その理由は乳酸が単なる疲労物質という見方から体のシステムにとってなくてはならない存在であることが分かり、除去すべき対象ではなく再利用可能なエコな物質へと認識が変わりつつあるからだ。 今回の記事では乳酸について、サイクリストや持久系競技者が知っていると役に立ちそうな内容をまとめてみた。 なぜ乳酸がエネルギー源になるのか? なぜ疲労物質扱いされてきたのか? 乳酸閾値とはどういった現象な

          乳酸代謝のダイナミズム

          富士ヒルクライムに必要なFTP -富士ヒルに向けて#2-

          いよいよ近づいてきた富士ヒルクライム。皆さんも目標タイムを定めつつあるのではないだろうか。 今回の記事では以前に書いたものをアップデートし、必要な情報を加えブラッシュアップを試みた。 記事中には年齢、性別、体重、機材の重量を記載してもらうと、各ゴールタイムとそれに必要なFTPがグラフとして出力されるExcelも用意している。 皆さんそれぞれの状況で、どのくらいのFTP(1時間維持できる最大のパワー)があればどのくらいのタイムが見込めるのかを是非確かめてみてもらいたい。

          富士ヒルクライムに必要なFTP -富士ヒルに向けて#2-

          ケイデンス -生理学的な側面からの一考察-

          筋肉は不思議だ。 足音がしないように繊細な力加減で接地したり、ダッシュするときにはコンマ数秒地面に接地し大きな力を立ち上げる。 このような筋肉の不思議さに魅了された研究者たちによってスポーツ科学は今なお発展中だ。 そんな現代なら、最適なケイデンスや最良のペダリングについても結論が出ているだろうと考えたくもなるが、論文を読み解いていくと現実はそうなってはいない。 まだまだ議論の余地がたくさんあるのだ。 そのためこの記事に正解を探し求めておられる場合、残念ながら期待にお

          ケイデンス -生理学的な側面からの一考察-

          糖質代謝のダイナミズム

          自転車を楽しまれている方ならポタリングやロードレース、どのようなシーンであれ一度は糖質(炭水化物)の摂取について思いを巡らせたことがあるだろう。 今摂取している量は足りているのか?それとも過剰なのか? 補給食としてどれくらい摂取すべきなのか? ヒルクライムの大会では糖質を摂取すべきなのか? このように、糖質摂取に関する疑問はいくらでも挙げることができる。それくらい糖質はサイクリストにとって密接であり、また謎多きものでもある。 そこで今回の記事では糖質(炭水化物)摂取につ

          糖質代謝のダイナミズム

          脂質代謝のダイナミズム

          (※この記事は今までとは異なった文体で構成してみました。以前から私の記事を読んでくださっている方は始め違和感を感じるかもしれませんが、ご容赦ください) 今回の記事ではサイクリング中に脂質(脂肪)がどのように利用され、パフォーマンスを支えてくれているのかについて深堀りしていこう。 ポタリング、ブルべ、ヒルクライム、そしてトライアスロンやロードレース、どのようなシーンであっても脂質は私たちを支えてくれていることを実感していただきたい。 実感を強めていただくためにところどころ

          脂質代謝のダイナミズム

          簡易的なトレーニング計画のシュミレーション

          先日の記事へのご意見のお礼先日投稿した記事(FTPとトレーニング負荷の考察)について、たくさんのご意見を頂くことができました。 多くの方よりリアクションをいただけたこと、誠に感謝しています。 そして頂いたご意見の全体的な印象としては、やはり理論値をつなぎ合わせても実状にそぐわないケースは体力水準が高い場合に多いということです。 皆さまそれぞれの経験と方法論のバリエーションが増えると、一つの曲線としてまとめてしまうことに無理が生じるのは必然で、ここに科学と実践のギャップが

          簡易的なトレーニング計画のシュミレーション

          パワートレーニングの用語を理解する -TSS, CTL, ATL & TSB-

          今回の記事はパワートレーニングを実施する際に登場する用語について説明してくれている海外記事をご紹介します。 これらの用語は以前にもご紹介していますので、そちらと共に読んでもらえるとより理解を深めてもらえるかと思います。 今回もTrainerRoadの記事から意訳、要約させてもらいました。 用語の理解を深め、パワートレーニングの効果を高めていきましょう。 ご紹介する記事 Training Stress Score:TSSTSSとは何か? トレーニングストレススコア(

          パワートレーニングの用語を理解する -TSS, CTL, ATL & TSB-