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日記のような

新居に慣れてきた。写真はアロマキャンドル。

もともと「条件先行」で部屋を探していたので土地は二の次三の次(その上都内で土地勘のある場所が限られる)で、条件さえ満たしてくれるならどの区、どの市の、たとえ駅から徒歩30分であろうとも一向に構わんでござる、という姿勢で臨んだところ、変に高望みし過ぎなかったのが良かったのか、結果的には当たりを引けたと思う。そも「あ、ここにしたいな」と思えた筆頭候補の物件に住めた時点で勝ちなのだ。当たりも当たり。大当たりだった。はじめまして東京都。

いざ住んでみると雰囲気が良い。治安もとてつもなく良い。僕が愛してやまない”まいばすけっと”や”ドミノピザ”が近くに無いのだけが残念ではあるけれど、暮らしていく上での大凡のことはコンビニさえあれば事足りるのでよしとする。街並みの景観も良く、ほどほどに自然もある。散歩好きにはたまらない。ステータスを「住みやすさ」に極振りしたような街だ。

横浜に住んでいた時はどこに行くにも雑踏を掻い潜る必要があったため、これはものすごく新鮮なことだった。終電で帰っても倒れている酔っ払いや騒いでいる学生を見かけない。盛り場が好きな人には良いのかも知れないけれど。

隣人への引っ越しの挨拶も済ませた。
ヤンキーやイケイケな人だったら危うく未来が閉ざされるところだったけれど、穏やかな老紳士と陽気な白人だった。隣人ガチャSSRである。
逆に向こうから「イケイケな怖い人が隣に来た」「平穏だった日々が脅かされる」と思われてはたまらないので、髪を結び、髭を剃り、小綺麗な格好で挨拶に臨んだ。害をなす存在ではないことをアピールしなければならない。
特に鬱陶しがられることも不審がられることもなく、つつがなく済んだ。重畳。ご近所付き合いは大切にしたい派。

「あのあの、肉じゃが作り過ぎちゃって」

みたいなことにはならない。この先もならないと思う。作り過ぎてみようかな。一人で食べるのも味気ないし。誰か食べに来い。

もし隣人が単身の女性だったら6フィートの長髪が突然訪ねてきただけでイレギュラーな事態、きょうび事案である。懸念していたルートは無事に回避できた。
よって、5秒待たないと飛ばせない安っぽい広告やスクロールしようとしたらうっかり開かれてしまうFANZA漫画のような展開にはならない。家から駅までは車通りがほとんどないため僕が異世界に転生する可能性も極めて低い。山も谷もない日常モノの5分アニメのような日々になるであろう。

ちなみに住み始めて1週間が経過したのだけれど、隣も上も生活音らしきものが一切ないのでこれはこれで少し怖い。

溜まりに溜まっていた家具類の組み立てと段ボール解体も終わりの目処が立ってきた。揃い切ってはいないけれど、現状でも十分暮らしてはいける。あとは追々、ゆっくりと整えていくとしよう。街だってまだゆっくりとは見て回れてない。

なんにせよ、一切妥協せずに理想通りの物件に巡り会えて本当に良かったと思う。知らない街だったけれど、結果的には此処で良かった。このまま無事に暮らしていけますようにと願うばかり。



仕事の方はレコーディング案件多め。スタジオに行くまで何を録るのか、何曲録るのかを一切知らされない系現場である。当然、仕込むことができないのでその場で対応する。きょうびこういうワークフローの現場も珍しいとは思うのだけれど、個人的には自分のポテンシャルを試される状況なので楽しいし、学びがある。
何よりも呼んでもらえていることが、有り難い。嬉しい限り。
発表は追って、いずれ。

レッスンの方はお休み気味。というのも生徒の大半が大学生なので就活や新生活、就職などのタイミングに重なるため。大切な時期だからね。

趣味の時間はまったくと言っていいほど取れていないのだけれど、仕事が充実しているのでそんなにフラストレーションはない。落ち着いたらゲームしたいなぁ。観たい映画も読みたい本も溜まってきている。






あの日のこと。

自ら言及することはあまりなかったのだけれど、子供の頃に過ごした街の中でも特に思い入れが深いのが仙台と名取。

1つ年上のレスポールを使う洋楽かぶれのギタリスト。同い年で内気だけれど音楽のことになると熱っぽく語るシンガー。2つ下なのに妙に大人びていたパンクが好きなベーシスト。劇団の旗揚げを夢見ていた演劇部の女の子。雑誌の文通やメン募(当時は住所や電話番号といった個人情報が丸々載っていたのだ)楽器屋やライヴハウスで知り合った人たち。彼らと。

閖上海岸を歩いて横目に見た水平線。夜通し馬鹿なことをして、一晩かけて福島まで遊びに行ったりもした。お金を出し合って1時間だけスタジオに入ったりもした。塩釜や石巻、松島にも行った。

音楽を通して知り合った、学校と社会の外側の手のひらサイズの青春だったけれど、あの日々がとてつもなく愛おしい。

13年。

再会して「老けたね〜」「でも変わんないね〜」なんて会話を交わせない事実が胸を刺す。街と人々を悼む。

丹念に、丁寧に、織り込むように。
追憶を愛しんで、日々を慈しんで生きて往くこと。
忘れないこと。

多分それが、僕にできる手向け。




さ、今日ものんびりと。
息を吸って、目を開いて、ときどき立ち止まって、目を閉じて。

無事に一日を過ごせますように。


読んでくれてありがとう。

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