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Oculus Quest 2を使い始めて、ひと月。

Oculus Ques t2は先月発売された、VR用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)です。発売時の在庫がなくなる前に、私は運良くOculus Quest 2を入手することができました。
1ヶ月が過ぎたところで、主に建築計画のビジュアライゼーションへの活用の視点から、使ってみた感想を以下にまとめたいと思います。

1. Oculus Quest 2について

Oculusは、数年前Facebookに買収されたOculus社により開発された、VR用HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の製品シリーズです。

PC接続型(PCが本体となる)のOculus Riftスタンドアロン型(HMDだけで独立して動作)のOculus Goなどが発売されてきましたが、昨年に登場したOculus Questは、スタンドアロン型でありながら、USB接続によってPCの外部機器として機能させることもできる、ハイブリッド型とでも呼ぶべき製品になっていました。

そのOculus Questの新型が、今年の10月に発売されたOculus Quest 2です。一時期、日本のテレビでも盛んにCMが流されていたので、名前を耳にされた方は多いかもしれません。

2. 便利なところ(1) PCなしで使える

建築設計の現場でVRを使うことを想定すれば、社外、あるいは社内の打ち合わせ時に、HMDを持ち込んで使うというような局面が多くなると思います。
そんな時、HMDだけを持ち込めば済むわけなので、PC接続型のHMDとは使い勝手に大きな差があります。

「設計中の建物がどのような感じか」を確認するだけであれば、360度のパノラマ画像があれば十分です。この場合は、USBケーブルやWifi経由で、ファイルをPCから移し、あとはHMD上で再生するだけです。

UnrealEngine4などを使って、Oculus用のアプリとして空間を作ることもできます。

HMD自体にインターネットブラウザも備わっているので、WebVRを使ったページを閲覧したり、YoutubeでVR動画を再生したりすることもできます。

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建築設計の現場では、ゲームのように気合の入ったVRを動かす必要はないので、Oculus単体での演算能力で十分だと思います。その点でも、スタンドアロン型のHMDというのは建築設計の分野には親和性が高いと言えます。

3. 便利なところ(2) PC接続型としても使える

上に書いたことと矛盾するようですが、これまでOculusGoしか持ったことのなかった私にとっては、PCに接続し、PCに演算を行わせることで、VRの世界がここまで広がるのは驚きでした。

私がまずやってみたのは、このGoogle Earth VRというアプリです。Steam版を使いました。Googleマップの3D表示とほとんど同じものですが、HMDで見るだけで全く違う体験ができます。
ミニチュアの模型の中を歩き回っているような気分というか。カメラ付きドローンで飛び回ると、このような風景が見えるのかもしれませんね。

Oculus Quest 2をPC接続型HMDとして使うには、Oculus Linkという機能を使います。

Oculus Linkを使うためには、
「Oculusソフトウェア」がインストールされたWindowsパソコン
「USB3.0」対応のケーブル(推奨長さ3m以上)
が必要です。

また、3D空間の中を動き回るわけなので、PCにはそれなりの性能のグラフィックカードも必要です。
具体的な要件については以下をご確認ください。

Oculus Linkの要件https://support.oculus.com/444256562873335
Oculusソフトウェア(PC用): https://www.oculus.com/setup/

Oculus純正のUSBケーブルは高額ですが、普通のUSB3.0ケーブルでも、問題なく使えています。(実際に私が使っているのは以下のものです)

Oculus Quest 2はもともとの重量が軽いので、「本来スタンドアロンのものを無理してPC接続型で使っている」という感じにもなりません。


建築設計との関連で言えば、例えばTwinmotionというビジュアライゼーションソフトはOculusLinkに対応していて、OculusLinkが起動した状態にしておくだけで、作成した空間をそのままVRで見ることができます。(スタンドアロンで使うためには、パノラマ画像の形で書き出すなどの手法が必要になります。)

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4. 気になる点

・Facebookアカウントが必須

Oculus Quest 2からは、HMDを使うために「Facebookアカウント」の利用が必須となりました。

私は以前からFaceebookを長く使っているので問題はありませんでしたが、Oculus Quest 2の購入と同時にFacebookアカウントを作った(作らされた)人が、直後にアカウントを凍結されるということが、一時期問題になっていました。

その問題が解決したとしても、「FacebookアカウントがないとOculus Quest 2が使えない」というのは、そもそも建築設計の実務で使うには問題となります。
私の職場では個人のSNSアカウントの利用は禁止されている一方、Facebookは一個人が、自宅用と会社用など2つのアカウントを持つことを禁止しているからです。

OculusGoではOculusアカウント(Facebookアカウントとは別)の利用も可能だったので、問題になりませんでしたが、Oculus Quest 2については職場での実用に至らないでいます。

・OculusGo用のアプリが使えない

OculusGoでは、パノラマ画像を表示したりDropboxと連携できる「Oculusギャラリー」という便利なアプリがあったのですが、Oculus Quest 2では使えなくなっています。(Questでは使えるそうなのですが)
代替のアプリはありますが、ビューアーとしての機能が弱く、使い物になりません。

何かこう、「ユーザーのためにFacebookがあるのではなく、Facebookのためにユーザーがいるのだ」という巨大企業Facebook社の本音が見えてしまったような、そんな感じがあります。

5. 終わりに

ここまで、Oculus Quest 2の可能性と限界について書いてきました。

これまで一部のマニア向けのもの、という印象が強かったHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が、ある程度一般的なものになったのは、FacebookというSNS企業が手がけたことが大きいと思います。PC接続・スタンドアロンどちらでもいける、"ハイブリッド型"のHMDというジャンルを押し広げた功績は、否定しようがありません。

一方で、個人アカウントと紐づけないと使うことすら出来ない、という仕様になってしまったのは、販売元がSNS企業であるがゆえの弊害に思えます。HMDを特定の"個人"に付随するものと位置づけてしまっては、社会の中で普遍的な道具とはなり得ない気がします。

ということで今後、OculusQuestシリーズに続く、手軽さを備えたハイブリッド型のHMDが他社からも発売され、選択肢が増えていくことを期待したいと思います。



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