股関節脱臼について2-予防と早期発見

 子供の股関節脱臼は、対応を誤れば生涯にわたって影響が出るかもしれません。重症度にもよりますが、最初はそれなりに歩けるものの股関節に痛みを生じてきます。最終的には変形性股関節症となり、手術が必要なこともあります。

  子供たちが将来股関節脱臼の後遺症で苦しまないようにするためには、股関節脱臼の予防と早期発見が大切です。

 予防のためには、股関節を含めた脚の動きを自由にし なおかつ 両膝と股関節を曲げてM字型に開脚した状態(開排位)にすることが必要です。また、抱っこするときは、原則正面にして脚を広げる「コアラ抱っこ」にしましょう。向き癖があると向いた方向の反対側の脚が伸びるため、向き癖を調整してださい。

 家庭でも早期発見ができるように、日本小児整形外科学会では乳児股関節脱臼の二次検診へ紹介する項目を次のように定めています(PDF)。

① 股関節開排制限(開排角度)
② 大腿皮膚溝または鼠径皮膚溝の非対称
③ 家族歴:血縁者の股関節疾患
④ 女児
⑤ 骨盤位分娩(帝王切開時の肢位を含む)

二次検診への紹介について

・ 股関節開排制限が陽性であれば紹介する

・ または②③④⑤のうち2つ以上あれば紹介する

・ 健診医の判断や保護者の精査希望も配慮する

 上記で気づいたからもいるかもしれませんが、この基準はかなり幅広いです。網で言えばかなり目の細かいもので、股関節脱臼ではないケースも拾いあげることが多くなります。できるだけ股関節脱臼を拾い上げるためだと思いますが、この基準を厳密に適応すれば おそらく 2割程度のお子さんが紹介の対象になるでしょう(家族歴があり女の子であれば自動的に紹介です)。これほど多くの赤ちゃんが整形外科に受診するのは大変なことです。紹介先との連携が今後の課題になります(必ずしも治療を行う大病院とは限りません)。今後より精度の高い選別方法ができることが望まれます。

 ここまで目の細かい網にかけても、すり抜けてしまう例が残念ながらあるようです。まずは、下のリンクから日本小児整形外科学会のパンフレットを印刷し壁に貼り、いつも注意するようにしてください。

日本小児整形外科学会公開資料

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