瓦礫の下で助けを待つ少女の
あなたの召使になります発言が世界を駆け巡って

まるで今知ったくらいの勢いで
内戦が子供に与える心理的な影響は！とか
産まれてから一度も平和を知らない子供がいる！とか
衝撃発言！とか
テロップが出るのを見ると

虫唾が走るというか

シリアの内戦が何年前から起きていて
世界が見て見ぬふりをし続けているかを

まさか世界が私たちを見捨てるとは思っていなかったと
こんなことが世界が許すはずがないと思っていましたと
世界が明日には助けに来てくれると思っていたと
死にゆく息子を胸に抱いて叫ぶ母親に
私は黙ってうな垂れるしかできない

首都圏への降雪の交通機関への影響のニュースと
今夜のおすすめ番組の間に
消費される
海外の大地震で被災した人たちのニュース

それはニュースなんかじゃなくて
現実で
凍えそうな空の下で
来ない助けを待つ人がいるということで
その人の身には
安全地帯でぬくぬくとテレビを見ている私はなれないということだ

私たちは気まぐれにチャンネルを合わせて
ああ気の毒だとか
ああ酷いとか
プーチンは恐ろしい侵略者だとか
ゼレンスキーは愛国者だとか
好きなことを言うけれど

フリーチベット
フリーウイグル
フリーウクライナ

次々旗の色と柄を変えて
アイコンを染めるけれど

まるでアマゾンで買い物するみたいに指先クリック一つで
フラッグを付け替えるけれど
その人たちの暮らしはその土地に縛り付けられているから
指先なんかじゃ変えられない

自分の正義感を満足させるために
困った人がいるわけじゃない

そんなつもりじゃないと思うけれど
私の見方が穿っているとは思うけど
そう見えてしまうくらい
回転ドアみたいに身のこなしが早すぎる

ずっと同じ国旗をアンプの上に置いて
歌い続けている人もいる

無関心でいることが
為政者が好き放題一番やりやすいんだそうだ
選挙を恐れる必要もない
革命が起きる土壌もない

政治を語るとか
怒りを語るってことは
ダセえというか
はあ？と興味関心を呼ばないんだと思うけど
畢竟
無関心って
自分で自分の首を絞めていくことなんだと思うけどな
民主主義の国のシステム下にいるのだから

この国が経済も人権意識も周回遅れだとしたら
それは国なんて実体はないんだから
そこに暮らす私が周回遅れだってことだから

って自分に苛つきながら
本に目を落とす夜に
頭に上った血は
落としたりしない