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人から人に伝わるものは

20年前清水から飛びますって勢いで
一生もんだから高くないと
自分なりに算盤はじいた
ポール・スミスのチェスターコートは
娘たちがふたりとも
争うようにヘビロテして
今年の冬は私の羽織る幕がなかった

ドクターマーチンの赤茶色のエイトホールは
最初から長女のモノだったみたいな顔して
私が履くとそれは貴方のものですか
それは若い人が履くものじゃないなんですかと赤の他人にいきなり言われる始末だし

もう30年前パリの古着屋で見つけた
ウールのグレーと黒と白のタータンチェック
箱ヒダのロングスカートも
下北の古着屋巡ってもなかったけど
ママどこで買ったのと
こういうの欲しかったんだよと次女が不思議そうに見ている

イッセイミヤケっぽく捻れたヒダの
赤地に黒と黄色とタータンチェックのミニスカも
流石に50で膝はヤバい犯罪逮捕されちゃうと
それでも気に入ってジーパンの上から重ね着してたんだけど

どうやらそういうグランジというか
シカゴかアメリカ村の店員さんみたいな着方が流行っているらしく

周回遅れの独走態勢のママに
時代が追いついたみたいだよ
ママの貸して頂戴と
次女はせっせと自分のタンスに移し替えて

おおそんなふうに歴史は繰り返すのだと
目を細めている
ファッションのジェネレーションは30年周期だっけ?笑

ねじ式、ゲンセンカン主人
鉄コン筋クリートにAKIRA
元はと言えば私の本棚から始まったけど
長女の目に留まってからパワーアップ
ラインナップは遥かに母親を超えて自分のコーナーを増殖させて

長女の音楽の趣味は圧倒的に父親譲りで
本人も驚くくらい父親が同い年くらいの頃に聞いたジャンルの音楽を
そっくりトレースなぞり始めた時期があって
時空は40年くらいずれてたんだけど
やっぱりパンクとテクノと
SFとアングラにハマっているのを見て

遺伝子が発動したのかと

血は争えないなあ
自分で選択した気になってることも
輪廻っていうか
予め予定された線をまあ自分の足で歩いてるって程度の自由意志なのかしらと思うくらいで

TGAC4つの塩基対の私の並びの1部が
ムスメ等の中で小さくキラッと煌めいて
ああそこにいるんだねと微笑みたくなるけれど
そのねじれは私のそれじゃなくて
彼女たちのオリジナル
今見て感じて食べて考えたことで日々複製していく生まれ変わっていく今日の積み重ね

それは子どもを生むとかそういうことじゃなくて
旅をするなんかは全方位的だと思うけど
絵を見たり音楽を聞いたり
ご飯を食べたり街を歩いたり
一緒に何かをすることで
時を共有して
自分の中の一部分が
関わった人の中に転写されていくというか
また相手の一部分も自分の中に取り込まれていくのもまた
出会っていく醍醐味だと思う土曜日の昼下がりに

ああセックスなんかはまさにそういう体験なのかもしれない
その話はまた

暗くなったらね

星野源さんは
初めて貼り付けたかもしれない
くも膜下出血の2度のキャリア
大先輩やと知った2年前から
急に勝手に身近になりました








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