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胃カメラと私とライブと

そもそも健康診断ではここ数年胃の検査をパスしていた
理由は単純で
バリウム飲むとそのあとしばらく続くお腹の急降下が不快だし
胃カメラは異物を飲み込むのが恐怖で
とてもじゃないけどできる気がしなかった

胃痛や胃重や食欲不振やなんかの症状があってからでいいと
自己判断でスルーしていたのだけど
健診のルールが変わって全項目受診しないと
助成金が下りないとか何とかで

しぶしぶどちらかを選択せざるを得ない状況に追い込まれ
あれそういえばとカレンダーを見やれば
その日は大好きなバンドのライブの日で

消去法で自動的に胃カメラを選ぶことに決まった

だって
スタンディングのライブの最中にギュルギュルって音させて
脂汗流してトイレに駆け込むわけにいかないからなあ

人生初胃カメラ
初荷・初鰹・初夢・初恋
歳とってくると初ということがなくなってくるので
これはこれで貴重だなと
然程嫌な感じも身構える感じもなく
なんならちょっとワクワクして
あさイチで病院に到着すると

これに着替えてくださいと
懐かしい水色のストライプの病院御寝間着を渡されて
あああこれ着ると気分はすっかり病人なんだよなあとブツブツ言いながら
待合室で待つ

今日の担当の先生は、福祉会の嘱託医も務めてくださっている先生で
聴診でペロンとお腹をめくろうとする赤毛を
大丈夫ですと
服の上からの触診で、甲状腺、心臓、脇腹、腹部と見てくださり
なんだか気恥ずかしかったけど
これが先生のお仕事なんだと顔を真面目にしたけれど
間に合ってなかったかもしれない笑

赤毛さんは今日は胃カメラですね

はい
初めてです

そうですか
僕は実は内視鏡手術が専門でして
安心してお任せください。
初めての人の方が、変な癖がついていないのできっとスムーズにできます。
検査室でいくつか注意点を申し上げますから
それだけしっかり守って下されば
大丈夫ですから!!!!

は、はい。
よろしくお願いします。

そんなに先生がお任せ下さいとか張りきらなきゃいけないようなことを
これからするのかと思うと
逆に不安になってきたけど
普段見ない先生の鼻の孔膨らませたドヤ顔もまた面白いなと思って
ああ、これから日常とは違うディメンションのことが起こるんだな
しっかり見ておこう💗と
自分のことなのに傍観者モードに入って
名前が呼ばれるのを待つ。

検査室は思ったより物々しくて
説明もいっぺんに沢山されるので
正直よくわかんねえなと思ったけど
言われるがままに口に一口麻痺薬?を含んでしまったので
質問もできなくなってしまい笑
うんうんと、俎板の上のコイになって頷いた

準備万端整ったらしく
先生が登場下さり、役者は揃ったんだけど
オエオエ普通に餌付いてる赤毛にお構いなしで
グリングリン胃カメラを入れたのに
カメラのシャッターが下りないんだかなんだかの機材トラブルが発生して
検査室の空気が凍る
普段温和な先生の顔つきがピッと引きつって
どうしたんだ⚓映らないぞ⚓どうなってるんだ⚓
と怒鳴り散らし始めるわで
看護婦さんはオタオタオタオタして入れ代わり立ち代わりで
2、3人がモニターをピコピコ大汗かいて弄っている

ええええ?マジ?
ツッコんでおきながら
再挿入とか言わないでよね
ワタシ胃カメラ処女なんだから!
痛いのはもう嫌!

と言いたかったけど
胃カメラツッコまれて言葉にならない
頼むよお、写してよおと祈りが通じたのか
モニターに赤毛の思ったよりもピンク色の胃壁が映る笑

せ、先生映りましたあああ

分かってる⚓
赤毛さん、これから十二指腸にはいりますね

すっかりいつもの冷静さを取り戻して
何事もなかったかのように私の胃の中を縦横無尽にカメラを移動させて
先生が胃壁の状態を異常がないということを説明してくれたのだけど

先ほどの人が変わったような先生の怒号との落差が可笑しくて可笑しくて
でも、先生は私の命を預かっていて真剣だったからこそ
不測の事態に真剣に反応してくれたわけで
これでモニタ映らないのにしれっとして大丈夫ですよおなんて
のらりくらり言われたら
そんな人に万が一のリスクのある医療行為を任せたいとは思わない
私はこの先生を信頼しているんだと思ったりしながら

早く終わんないかなーと思いつつ
食道を引っこ抜くときがまたやっぱり苦しかったけど
無事に検査を終えることができた

赤毛さんとてもいい検査でしたよ
上手でした

と褒められて正味10分足らずで検査は終了したと思う
永遠のような長さに感じたけれど苦笑

夜のライブも胃カメラのことなんかすっかり忘れて
スタンディングで2時間踊り明かせたので
個人的には来年も胃カメラ一択でと思っている

麻酔という選択肢もあると教えていただいたのだけど
赤毛の健診の医療機関にはその設備がないと思われ
来年もちょっとはオエオエしながらになると思うけど
年に一度は調べたほうがいいお年頃ですよ、赤毛さんも
僕もですがねと
先生にニッコリ笑って背中を見送ってもらった

自分に起こることを半分どこか他人事で
幽体離脱した自分みたいに眺めたり考えてみると
その当事者にどっぷりなってしまうと痛みに支配されて
他のものが見えなくなってしまうところで
その人の仕事への真剣さや、優しさがみえたり
思いがけない一面を見たり、ちょっと面白いかなと思う健診でした



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