見出し画像

とんぼ返りな休日に

昨日の夜は天気予報を見たら
雪にミゾレに強風に
気温は3度とか
暑さ寒さも彼岸までと言ったくせに彼岸の嘘つきと思ったけど
行くことに決めてもう切符も買っちゃったんだからしょうがない
雨が降ろうと槍が降ろうと
雨なら傘を槍なら盾を持って出かけるのだ

ヒートテックのタイツを引っ張り出して
長靴風のブーツで完全防備
ホカロンもあったはずとポケットに忍ばせて

朝日の昇り始めたまだ暗い街に繰り出す

そうだ
思い立ったら大安吉日
牛に引かれて善光寺参り
そうだと思うそのフックがあるなら
それに乗っかってみるのが
自分のツマ先の感性を信じてみるのが
旅の醍醐味だ

3週間位前の日曜美術館を寝ぼけ眼で見ていて
番組の終わりに全国の美術館の展示の紹介がある

うわあ なんだこれ
目が画面に釘付けになる
僅かに三十歳で夭逝した画家の初の大規模回顧展

行ってみたい
行こうかな
行こうと三段活用させるのに
導火線は短いのが取り柄の赤毛だ

チケットを取って
毎日残業してもしても終わらないクソ忙しい引き継ぎの3月20日のお彼岸に行くことにした

車窓から見える景色に
昨日降った春の雪が家々や山々の屋根に尾根に白く降り積もって
ああ春はまだ浅いのだと思い知るけれど

ひんやり頬を撫でる空気は冷たいピンと張り詰めた冬のそれで
駅員のオジヤンも今日は寒いねえと
互いに挨拶を交わしているのを聞いて
ああ寒いのは私が東京モンだからじゃないんだと思って少し安心するけど

遠く山々を望む景色に立ってみて
なんの根拠もなく思いつきの割には
随分と遠くまで来てしまったかなと
いやこれでいいのだと自分を鼓舞する

その画家のことを私は全く知らない
ゴッホとかルノアールとか評価の決まった
WBCの四番打者みたいな展示じゃない
片道3時間以上かけて電車賃払って
やって来るなんて酔狂にもほどがあるのかもしれない

けど
そんなときほど
絶対にこれは行くべきやつなのを
ちょっと長めに生きているから
私は知っているんだ

馬鹿げていると思うことを
やってみたいと思うときほど
それはやったほうがいいやつなのを
そしてやめておこうかなというインセンティブはいくらでも働くけれども
明日仕事だし
給料日前だし
遠いし
そもそも見たからいいと思うかもわかんないし
金と時間のムダ遣いかもしんないし

その行かないまともな理由を
揺さぶって振り切ることが
恋だったり旅だったりだと思う

評価の決まった作品を見て
良かったと決め打つのも
またその感想に対して肯定的なリターンがあるのも
全部安心安全出来レースだ
すごく意地悪な言い方だけど
メジャーが悪くて
マイナーインディーズがいいと言ってるわけじゃない
けど
それが本当に好きなのか
その人気がスキなのか
一度自分で精査してみたほうがいいと思う
私はマイナーなだけでもう必要十分に好きだけど笑笑

これだけウダウダとゲロ吐くみたいに
帰りの車中で図版見て興奮が醒めなくて
心地よい揺れなのに眠くならなくて
noteにシコシコ書き始めるくらい

すげえよかったということです

どう良かったのかのセトリを解説するみたいなレポは赤毛には書けない
そういうのはライターの人のお仕事だと思うから一任したいし
やっぱり行ってその目で見ないと絶対にわからないから

逆に行けば一発でわかる
その凄さが

美術館を出ると春の粉砂糖みたいな雪が街を舞っていて
パチパチと小さく頬に打ち付けられて
お彼岸に雪に降られたこともきっと一生忘れないお彼岸のたびに思い出す記憶になるだろうなと思いながら

峠の山道は強風に煽られて徐行運転
東京は遠い
煽るのは野田洋次郎のMCだけでいいのになあと思いながら
真っ暗闇を銀河鉄道あずさはノロノロ進む
ええ明日は出勤です笑笑






この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?