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玉岡あひるの荷物と荷づくり

 日本は平和なんさ。そう、恐らく根本的に、土とか水の段階からして平和なんさ――中学生までの期間をニューヨークの都市部で暮らしていた玉岡あひるにとって、それは日比谷公園の鳩をみながら、山の手の満員列車でスマホケースを破損させた女性の悲鳴を聴きながら、神田川をみながら、つねづね確認させられている揺らぐことなき胸懐で、そしてそのものの見方や感じ方が彼女の態度のはしばしにあらわれると、それはクラスメイトたちからみた彼女の、高慢な印象となって映った。そんな時の玉岡あひるは根拠なく人を見下していて、無前提に街をバカにしている風であって、したがって玉岡あひるは高校のクラスに友人を多くはもたなかった。
 こうも謂えた。玉岡あひるにとって...

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静かに本を読みたいとおもっており、家にネット環境はありません。が、このnoteについては今後も更新していく予定です。どうぞ宜しくお願いいたします。