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八月生まれのサバイバー(新作小説の献辞)

 スキゾの母のもとにそだてられた。
 宗教団体につきまとわれて四六時中監視をされ、夫が隣人と愛人関係にあると、最期の最期まで信じて疑わなかった、それが伊藤の母親だった。
 小学校の教員からはあろうことか虐待をうけてそだった。気狂いの息子でうしろめたくしていた伊藤が、彼の弱みにつけこむ格好の的となった。心身共に虐待をうけた。
 小説みたいな人生かもしれない。小説ではないのだ。小説ではないことに困難がある。あった。自分のことももう書けない。自分のことすら書けないのならば、そも、小説さえもが書けない……。
 それももう終わったのかもしれない。
 隣室から物音がしなくなったとおもったら事故物件、パトカーがかけつけて来て孤独死をしらせ、スキゾの母親も介護施設おくり。
 その、母親よりも早く逝った、仲間のために書いた小説をここに擱いておきます。
 ありがとう。さようなら。
 ――この小説を、いつも一人すくない、仲間たちにささげる。

静かに本を読みたいとおもっており、家にネット環境はありません。が、このnoteについては今後も更新していく予定です。どうぞ宜しくお願いいたします。