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【劇場版ツルネ-はじまりの一射-】京アニと弓道の相性の良さ

始めに

8/20(土)ミッドランドスクエアシネマにて、「劇場版ツルネ-はじまりの一射-」を見てきた。時間は2時間ないくらい。TVアニメはもちろん視聴済みで、それの総集編となる映画版なので見にいくことに迷いはなかった。

そして今から実際に見てきた感想を書くわけだが、あまりにも心動かされる部分が多かった。まだ見ていない人もいると思うので、ネタバレは避けて感想を書いていく。よかったらこのNoteを参考にしてほしい。

僕は弓道部

大前提として僕は元々弓道部だった。バスケ部にとってのスラムダンク、サッカー部にとってのキャプテン翼と同じような立ち位置の作品だ。そもそも、弓道をモチーフにした作品は非常に少ない。

だからこそ、大好きな京都アニメーションが弓道アニメに手を出すというのは、それだけでテンションが上がった。大人になると、作品の放送が始まるのを今か今かと待つことも少なくなる。そんな中でツルネは、僕の好奇心を掻き立てる作品だった。

美しさを体現している

作品について語る前に、弓道というスポーツについて触れておこう。僕は弓道をスポーツと表現するのは好きではない。弓道はスポーツではなく、武道。これが僕の考えだ。

何が違うのと思うかもしれないが、実際に弓道に触れてみるとわかると思う。弓道は他のどのスポーツよりも過程を重んじる傾向にあるのだ。

弓道は矢を放って的に当たればいいという非常にシンプルな武道だ。極端な話をすれば、どんな手を使っても当たればいいのである。弓から矢を放ち、的に当たる。この工程を経ていれば、試合としての結果に差はない。

しかし、弓道を本気でやっている人でただ当たればいいと考えている人はそれほど多くないだろう。もちろん、いるとは思うが僕はその考えを肯定しない。弓道は一つ一つの所作を美しく行い、結果として的に矢が当たるから価値があるのである。的に矢を当てるのは弓道ではない。的あてだ。

この考えはツルネの中にも登場している。実際に敵キャラには、ただ当たればいいと言わんばかりの存在がいる。それに対して主人公が諭すシーンもあったりして、弓道に取り組む心構えを考えさせられる。

この心構えが弓道においては非常に大切だと思う。他の競技と比べて、精神面が占める割合が大きいと思うのだ。もちろん、技術的な部分も大切ではある。しかし、上手な選手が試合になると全く結果を残せなかったり、逆に本番だけは強いというケースはよくある。他のスポーツでもこのようなことは起こると思うが、弓道はそれがより顕著だ。

しかし、そんな弓道をアニメ化するにあたって僕には懸念点があった。それがアニメ映えするのかという問題である。

アニメ映えはしないが京アニにはぴったり

結論からいうが、弓道はその性質上アニメ映えはしない。いや、他の全てのスポーツと比べてかなり上位でアニメ化しづらいといえるだろう。

理由1つ目。弓道における試合とは5人対5人(3人対3人のときもある)で行われ、1人が4本ずつ矢を射る。それの合計数を競うというものだ。

他のスポーツと明確に違う点がわかるだろうか。そう、弓道には妨害が存在しない。だから対戦相手ごとに独自の戦術を展開したり、新しい技で切り抜けたりといったお決まりの流れが発生しない。厳密にいえば、対戦しているかどうかすら怪しいのだ。

試合という名目ではあるが、やっていることは練習と変わらない。一人で弓を引くだけ。アニメに限らず全ての作品は、駆け引きに面白みがあると思う。そんな駆け引きのない弓道は、アニメ映えするとはいえないだろう。

2つ目。行動が変わらない。弓道の動画を見てもらえれば、射ごとに微妙な違いがあるのがわかるだろう。しかし、それを絵で表現できるだろうか。どれだけ精密に描いたとしても、絵での表現には限界がある。

例えば、矢を放つ寸前の状態(会といいます)の矢の高さ。矢は口と同じ高さにあるのが望ましいとされているのだが、よく口より少し高くなったり低くなったりしてしまう。僕が弓道をしている頃はよく指摘されたものだが、高い低いの違いは数mm程度である。それを絵で表現するのは不可能だろう。

このように弓道の上手い、下手を絵で表現するのは難しい。しかし、ここで京アニはすごいところに目をつけたと思った。

それが本作のタイトルにもなっているツルネ(弦音)である。これは矢を放ったときに鳴る音のことなのだが、人によってこれでもかというくらい違いがある。そしてこれは音で表現できるのがポイントだ。つまり、主人公の弓道がどんな状態にあるのかを音で表現することで、視聴者の心を掴んだのである。

そして散々アニメ映えはしないと説明したが、圧倒的な画力を持つ京アニなら別だ。弓道特有の所作の美しさ、それを絵で表現できるからである。実際に映画館で見ると、美しいと感じる部分は多かった。絵だけを見たとしても価値がある、そう感じられる作品だったと思う。

弓道経験者として言わせてもらうが、弓道の本来の価値をツルネは存分に伝えてくれていると思う。弓道を知らない人が見ても、弓道はスポーツとは違うとわかってくれるはずだ。

映像作品としての価値は高い

ストーリーには深く触れないが、僕個人としては悪くないと思う。男がメインで登場するので、どうしてもBL臭がする展開もあるがそれはそれで悪くはない。別にくどくもなかった。

キャラによっては受け入れられないという人もいるかもしれない。ただ、作品全体として見たときに非常に価値は高いと思う。特に劇場で見る価値は高い。あの空間で澄んだツルネを聞けるというのは、それだけ贅沢だと感じた。

今後もこのような記事を書くかもしれないので、上からではあるが評価をしてみようと思う。100点満点で、80点以上で優秀、60点以上80点未満で可もなく不可もなく、それ以下はお察しという感じで。

「劇場版ツルネ-はじまりの一射-」の点数は88点とさせてもらう。シナリオとキャラに関しては好き嫌いが分かれそうという点を考慮したが、映像と音楽に関しては完璧だった。さすが京アニ。

2期も楽しみではあるが、できれば総集編をまた劇場でやってほしい。劇場映えする作品だと心から思った。

終わり

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