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やわらかい手 (2007) IRINA PALM 監督 サム・ガルバルスキ


最近マリアンヌ・フェイスフルが新型コロナ肺炎で入院していたみたいなんですが、退院したというニュース(https://www.barks.jp/news/?id=1000181651)を見て、この映画のことを思い出しました。

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マリアンヌ・フェイスフルと言えば、あの峰不二子のモデルになったとか、ミック・ジャガーの恋人だったとか華々しい過去が有名です。でも彼女が38年ぶりに主演したというこの映画はそんなことはみじんも感じさせません。生活に疲れた中年の主婦が、ひょんなことから接客業(手を使った風俗店)に就くが、意外な才能を発揮して… というお話。

彼女は優しくて、でも、おどおどとしてて、表面を取り繕って、自分の希望に全部フタをするような人生をなんとなく過ごしていた。そう、孫の手術のためにお金が必要になるまでは。まあでもこれって日本人にもなんとなくわかりやすい感覚だっていう気がしますね。

I'm Irina Palm.(私はイリーナ・パーム:彼女の源氏名)

マギーが見せかけの友人たちにきっぱりとこう宣言した時、彼女はそれまでのあいまいな人生と決別したんだと思います。そして、新しい自分の人生を生きることを選択した。薬局で、マギーの仕事のことを知った見せかけの友人その1が侮辱してきた時、マギーが強力なネタで相手をギャフン(死語?)と言わせてやったのにはスッキリしました。ていうか今までよくお互いに友人面していたなーとちょっと呆れたけど。

マギーはラッキーホールの裏側という自分の仕事場に、花柄の仕事着(!)とお茶の入った魔法瓶をまず持ち込みます。次第に根性が座ってくると、自分の気に入った絵画や花、好きなクリームなどを持ち込んで、自分の場所をそこに作ってゆきます。ちょうど読んでいたエッセイで、「イギリス人というのは、それが仮の住まいでも、数日間そこで過ごすのであれば、好きな絵を飾ったり花を買ってきたりして自分らしい空間をつくるものです」みたいな内容を読んだばっかりだったので、かなりこのシーンはツボでした。まあ、ラッキーホールの裏でそれをやっているというので輪をかけて笑えてくるのですが。

ラッキーホールの表側のシーンは、さすがにわたしも経験がないので(裏もないですが)なかなか興味深く、穴のあいた壁の上側につかまるためのバーがあるのがなんだかちょっと可愛いく思えてしまいました。

テーマ的に微妙だから見る人は選ぶのかもしれないけど、心が温かくなって勇気がもらえる映画だと思いました。

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