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おすそわけ日記 201「平和を貪る」

目覚ましをかけずに好きな時間に起きる。

洗濯をして、仏壇に手を合わせる。


お昼になったので、母とご飯を食べる。

昨日、三度目のワクチンを摂取した母が

鍋一杯のけんちん汁を作っておいてくれた。

これで四日は食べ物に困らない。


食事に二時間ほどかけていたら、

あっという間にオヤツの時間。

テレビでオリンピックを見る母とスマホで漫画を読む私。

紅茶を啜りながら、小川軒のレイズン・ウィッチを大切に食べる。


このレイズン・ウィッチはバレンタインに買ってきた残り。

我が家は積極的に祭りを楽しむことにしているので

女二人でもバレンタインにケーキを用意。


今年は小川軒のサバランに初めて遭遇し、予定外のケーキ三個買い。

勿論、十個入りのレイズン・ウィッチも忘れずに。


サバラン、感動的な美味しさだったなぁ。

ラム酒の甘みに苺の酸味が利いて。

母と半分ずつにしても大満足の味の濃さ。


その日、毎夜つけている日記に

「小川軒のサバランが美味しかった」

と力強く書いたところで

ショートケーキが美味しかったことも書きたくなり。

さらには、レイズン・ウィッチの美味しさも書きたくなり。

結局、日記はオヤツの感想で終わってしまった。


ちょっと恥ずかしくなって、母に報告。

「私も同じ」と返された。

あ、なんだ、そうなの。

えへへ、うふふ。

「だって、すごく美味しかったから」

親子って、怖いぐらいに似るもんだ。


今日はワクチン摂取翌日で、母は身体の節々が痛いらしい。

母がベッドに入っていると、色々考える。


目の前にある金銭的な不安。

私が働かなきゃと云うプレッシャー。

でも、何もしたくない。

やりたいことを探さなきゃ。

このまま、時が止まってしまえばいいのに。

この平和がずっと続けばいいのに。


十年近く前に、アロマトリートメントの授業で

先生が口にされた「平和の感覚」

当時の私は、それがわからなかった。

今は日常で、折に触れて、それを想う。


明日のことはわからなくても、

今この瞬間、家族と共に

ケーキが美味しいねと笑顔になっている。

月が綺麗だねと目を輝かせている。

もう十分、これで十分。


家の平和が世界の平和だと、私は信じている。

一人暮らしになっても、平和な感覚を保っていたい。


世界中が平和であればいいと願うのだけれど

どうやって、それを伝えたらいいのかわからない。


だから、私は平和をむさぼっている。


今のこの平和を大切に味わって

貪欲に、魂と身体に染み込むように。


冷蔵庫に残っているレイズン・ウィッチは、あと一つ。

じっくりと噛み締めて

クリームも、ラム酒が利いたレイズンも、サブレも

全部全部、余さず美味しさを感じたい。


そんな私の様子に

「それ、いいね」と誰かが思うかもしれない。

レイズン・ウィッチって、いいね。

平和って、いいね。

そう思って貰えたら、本望だ。


今日も私は全身全霊で、のんきに平和をむさぼっている。



【今日の一枚】最後のレイズン・ウィッチ。有難さが最期の晩餐級。

あ、折角なので、サバランの写真も載せておきますね。

小川軒 新橋・目黒のサバラン

【#つづく日々に】のタグをつけて、日常で心ときめいたことを投稿中。日常のよろこびをみんなでシェアしあって、笑顔が増えたら嬉しいです。


毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。