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母というひと-005

ここで少し、母の苗字の話を。

祖父は稼ぎ手としては有能だった。
しかし、夫、そして父親としては最悪だった。
稼いだ金はほとんど一人で飲んで食って
女郎屋に入り浸って
新興宗教に言われるままつぎ込んで
家族の暮らしのために使おうという考えはまるでなかった。

子供がわがままを言えばすぐ買ってやる甘やかしはしても
貯金はしない、家も買わない、妻に余計な金は渡さない。

くわえて酒癖が悪く、酔うと暴れた。
子供は叩かないが、妻が逆らうと容赦無く打ち据えた。
家も船も造る腕の良い職人の殴る力がどれほどのものか
サラリーマンの家庭で育った私にはちょっと想像がつかない。
祖母はひどい青あざをしょっちゅうつけられ
何度も離縁する覚悟で実家に逃げ戻ったそうだ。

しかしその度、立派な魚を抱えて祖父が迎えに来る。
土下座して謝る。
その様子に親がほだされ、結局は親に叱られて家に戻る、
その繰り返しだったと聞く。

とうとう堪忍袋の尾が切れて親にも相談せずに祖母は籍を抜いてしまう。
どういうタイミングの悪さか、直後に祖父の友人の店が火事に。
炎の中に飛び込んで商品(貴金属)を運び出したことで、煙を吸いすぎて肺炎を起こしてしまう。

祖母が籍を戻す間もなく祖父はそのまま他界。

一つの家の中に、
北山(仮名)……長男・長女・次男(私の伯父、伯母ら)
柳田(仮名)……母親(祖母)
矢田(仮名。養女に出された先の苗字。この時はまだ柳田性の祖母から生まれたばかりだが、出産時の届けは未提出)……次女(母)
という3つの苗字が同居することになってしまった。

#母親
#人生
#波乱万丈
#実話
#エッセイに近いかな

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