母というひと-006

祖父は倒れてほどなく、事切れた。

そもそも祖父の家は宮崎の延岡城に勤めていた船大工の棟梁一家で
先代が延岡城の家老の一人娘と恋仲になって駆け落ちしたらしい。
駆け落ちとはいえ侍女をつけてきた娘は
自分が産んだ子供たちに対して
「鼻水が汚い、体が臭い」と抱っこも嫌がるので
祖父ら子供たちは全員、侍女に育てられたとか。

それがどう影響したか、兄弟姉妹で互いに助け合おうというような情は皆無だったようだ。
次々と家に押し寄せてきて、お悔やみを告げる体で箪笥を漁り
「形見に頂いて行くけんね」と
高価な着物や祖母のものだったかんざしなどを根こそぎ持って行って
そのまま、縁が切れたと言う。
私も、祖父がわの親族には生まれてこのかた一人も会った事がない。

昔は嫁いだ娘が実家に頼るのは、今ほど簡単な事じゃなかった。
それで祖母は自力で稼ぐ道を選び
行商のあてを見つけて
ヨチヨチ歩きを始めた末の娘を、ある日矢田家へ約束通り連れて行く。


#母親
#人生
#波乱万丈
#実話
#エッセイに近いかな


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