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クラウドファンディング

尾崎世界観さんのこちらの小説を読ませてもらった。

内容としては、ぜひ上のサイトで読んでもらいたいが、ネタバレすると...

クラウドファンディングにハマっている「私」が、近所の高齢者、西岡さんのためにクラウドファンディングを勝手に立ち上げる。

そのクラウドファンディングは成功を収めて、集めたお金を西岡さんのところに持っていったのだが...。

西岡さんはなんか浮かない顔をしている。

そしてこんな言葉を放つのであった。

「こんな出所のわからない金なんて要らない」と怒りを滲ませ言い放ったのだ。私は呆然としながら、ただ西岡さんの口の端に溜まった泡を眺めるしかなかった。
「余計なお世話なんだよ。あんたはあんたで自分のことをやってくれ。俺は、自分が生きる為の金は自分で払うと決めてるんだ」

引用元:〈6月6日〉 尾崎世界観|tree

私はこの言葉にびくりときた。

「そうかあ、良かれてと思ってしたことも、そうなるんだよな」
とか
「高齢者と若者では考えにギャップがあるのだな、西岡さんの気持ちもわかる気がするなあ」
「私もそういう余計なお世話をしているのかも」

と色々考えていた。

しかし、尾崎世界観さんの小説はそれでは終わらなかった。

私は途方にくれた。そして、心の中で怒りの火が燃えるのを感じた。家に帰った私は、すぐにPCを起動させた。まだ、心が熱くてしょうがなかった。暗闇の中、怒りに歪んだ顔が浮かぶ。私は西岡さんに復讐する為、また新たなクラウドファンディングを立ち上げた。

引用元:〈6月6日〉 尾崎世界観|tree

なんと「私」は、怒りを西岡さんに抱きながらまた別のクラウドファンディングを立ち上げるのであった...。

この小説の終わり方は、私だったら「自分が悪かった、自分はダメダメ人間だ、反省して次に活かそう」と終わらせるところを、そういう終わり方にしていないところが、さすが才能のある尾崎世界観さんだなと思った。

そのような終わり方をしてもらったことで、何かとても色々考えさせられた...。

言葉にはできないし、ここには書けないことも色々考えた。

私は最近、寄付をしたけれど、それも「私」と同じような気持ちでやったんじゃないか?
もらった側は西岡さんみたいな気持ちになったんじゃないか?

色々考えさせられた。

文章とはこうでないといけない気がした。

何か、人の心に、ギーッと爪痕を残さないといけないんだ。

ライターとして反省した小説であった。


皆さんは、この小説を読んで何を感じましたか?

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