見出し画像

知財②_知財金融

1.知財金融とは?

知財金融について、統一された定義はありません。私が考える知財金融とは、「金融に知財を結びつけること」である。

銀行は、財務情報のみによって融資判断を行い、場合によっては、不動産等を担保にして融資を行ってきました。直近になって、財務情報に非財務情報を組み合わせて、融資判断をする事例も散見されるようになってきました。しかし、現在も財務情報に依存していると状況は続いている。

一方で、ベンチャーキャピタルは、財務情報に非財務情報を組み合わせて、投資判断を行っております。特に、医薬やバイオの分野では、会社の成長に特許権が大きく影響しており、投資に際しては、知財デューデリジェンスを行うことも多い。そういう意味では、スタートアップ投資を行うベンチャーキャピタルは、知財金融を行っているということができます。

知財金融をさらに推進するうえでは、「銀行の融資判断に、非財務情報の一つとして知財を結びつけること」が重要になります。

「銀行の融資判断に知財を結びつける」というと、銀行が知財を担保にして融資をするというのを想像する方も多いと思います。しかし、一般的には、知財は、事業で使用(実施)されることにより、意味を持つものです。また、➀単独で価値を生む知財の存在、実際の執行の場面での知財を活用方法、➂担保価値の測定できる鑑定人の存在など、解決すべき課題は多い。将来的には、課題を解決し、メジャーになる可能性はあります。

この点、知財担保融資の知財評価に向けた動きもあります。今後進展する可能性は大きいとも思います。詳細は、こちら

話を戻すと、「銀行の融資判断に知財を結びつける」とは、融資を判断する際に事業評価を適切に実施し、事業評価の重要な要素として、知財を考慮するということを意味しています。事業評価には、財務情報だけでなく、非財務情報も含むのは言うまでもありません。

なお、特許庁は、「知財金融(事業)とは、金融機関による、知財に着目した、取引先企業の事業・経営支援」と定義しております。なお、私は、特許庁の定義をベースに考えています。

 2.特許庁の知財金融促進事業

現在、知財金融促進事業の詳細なウェブページはありません。随時、公開されると思います。
昨年までの事業を参考にすると、特許庁の知財金融促進事業はこんな感じで行われております。

➀知財専門家が、金融機関のクライアントに対してヒアリング等を行い、知財を含む事業を評価した「知財ビジネス評価書」を作成。

➁金融機関は、「知財ビジネス評価書」を通じて、クライアントの知財を含めた事業について深く理解することによって、会社理解や融資の判断に利用

➂知財専門家が、将来のクライアントの事業戦略に資する情報を提供する「知財ビジネス提案書」を作成する場合あり。

➃「知財ビジネス提案書」は、金融機関にさらなる理解を促進。

知財金融促進事業は、金融機関がクライアントとの接点を増やすという意味でよい事業だと感じます。また、融資判断の最後の一押しにもつながるという側面もあると思っています。

最終的には、金融機関が自走することが理想ですね。そのためには、金融マンが知財の知識をつけるとともに、知財の専門家に支払う報酬をプールするということが今後の課題ですので、そのあたりも議論の対象になっていくと思います。


3.これからの知財金融

投資と融資では、リスクリターンも異なりますので、同じ土俵で考えることは難しいと思います。

融資においては、投資と比較して、多額のコストをかけることは難しいと思います。一方で、金融機関がクライアントの事業を理解するということは重要ですので、知財金融促進事業で自走のための基礎を固めることは重要と思います。

現在、知財金融促進事業の詳細なウェブページはありませんので、知財金融がどのような動きになるのかは、随時更新していきたいと思います。

(記事は、個人の見解です。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?