見出し画像

子どもに観せて、一緒に語り合いたい作品に出会えた2020年

今回のかきあつめのテーマは「今年の振り返り」だ。今年は世界的な例のアレのため映画館に行けなかった一方、ふだん見ないようなコンテンツの消費が多い1年だった。

当初はタラタラと印象深かった作品を紹介する記事を書く予定だったが、思い返していると「あぁ、これは子供のときに見たかったな」と思えるような、良作が多い印象であった。

そういうことで今回の記事では、今年僕がみた映像コンテンツのなかで、『子供に見せたい作品』として個人的に「これはっ!」ってなった作品を3つ紹介してみよう。

道徳の時間:【ドラマ】北の国から

画像5

あらすじ
半年前、妻の令子(いしだあゆみ)に去られ、東京の暮らしに嫌気がさした黒板五郎(田中邦衛)は、二人の子ども、純(吉岡秀隆)と螢(中嶋朋子)をつれ、故郷の地でやり直すために晩秋の北海道・富良野に帰ってきた。 市街からさらに20キロ奥地に入った麓郷(ろくごう)という過疎村に朽ちかけた五郎の生家が残っていた。どうにか住めるように修理した家で、電気もガスも水道もない原始生活が始まった。 都会育ちの子どもたち、とくに純は、東京でガールフレンドの恵子ちゃんから聞いたロマンチックな北海道とはおよそかけはなれた厳しい現実に拒絶反応を示す…。(BSフジ公式HPより

「『北の国から』が面白い!」話は昔から方方聞いていたのだけど、見てみたらホント、見事にハマった。やぁー、役者が良い、脚本がいい、演出がいい。うぅむ、見事な作品だ。

そして見ていて感じたこととしては「これは、子どもの道徳の授業に使えるんじゃないか?」ということだ。というのも、人間ドラマとして普遍的なことを伝えると思いきや、多様なのである。

豊かさとはなにか、命とはなにかという多くのメッセージを、本作は「都会と地方」「開拓民がいた時代と現代」という角度から突きつけてくる。田中邦衛が演じる父親役の黒板五郎も「北海道で教えたいことがある」と子どもたちを東京から北海道の極地へと連れてきた。その彼の伝えようとしたメッセージは、今みたとしても考えさせられることが多いように感じる。

1981年のドラマなので価値観が異なるところも多いが、そこも時代背景を教えるのにいいのではないだろうか。当時少年だった吉岡秀隆も今年50歳のいいおっさんだ。「男だから、女だから」という当時の価値観も、今の子どもたちのお父さんたちにとっては普通だったのだと、意識が広がる機会になるのではないかと思う。

社会の時間:【ドキュメント】即位の礼 晩餐(さん)会 密着・ホテルマンの1か月

画像5

あらすじ
2019年10月23日、世界の国家元首級VIP600人が出席した晩餐(さん)会の裏側に密着。料理のテーマは「日本を伝える」。
栗や雑穀など最高の国産食材にこだわって和洋中を融合した究極のフルコース、この日のために特注した岩の形をした有田焼きの皿、全国から集結したホテルマンの秒単位で繰り広げられる至高のサービス。その一方で、前代未聞の晩餐(さん)会には想定外の難題が次々と立ちはだかる。目指す「最高のおもてなし」は実現するのか…。ホテルマンのプロフェッショナルリズムと華やかな世界の華やかなサービス、極上の料理に加え、その裏側の人間味あふれる奮闘を追う。(NHKスクエアHPより

この作品は2019年にあった即位の礼の晩餐会を支えてきた仕事人たちのドキュメントである。600人の国家元首級の超絶VIPを同時に接客しなければならないという、見ているだけで胃が痛くなるような本作だが、見終わったあとの感動は凄かった。

僕はもともと仕事人が好きなのだが、ここで出てくるホテルマンと料理人なんて超のつくエースだ。そんな彼らが相当なプレッシャーのなか自分の仕事をまっとうする姿を、仕事や大人に対して斜に構えているようなガキンチョに見せてやりたいと思った。これでもお前は仕事をナメてとりかかろうと思うのか、と。

自分の仕事に誇りをもって真摯に向き合う姿はカッコいい。本作は子どもたちに伝えれるような教材になるのではないかと思う。大人はいつだって本気だ、と。

この作品について1点問題があるとすると『オッサン「しか」いなさすぎる』ことが挙げられる。もしかしたら現場には多くの優秀な女性がいたのかもしれないし、そうでないかもしれない。女性のピックアップが少なかったのは少し寂しいが、一生懸命働く大人をみて「頑張りたい」と感じる女児も多いのではないかと思う。

歴史の時間:【映画】日本のいちばん長い日(1967年)

画像1

あらすじ
1945年8月14日正午のポツダム宣言受諾決定から、翌日正午の昭和天皇による玉音放送までの激動の24時間を描いた名作ドラマ。広島・長崎への原爆投下を経て日本の敗戦が決定的となった昭和20年8月14日、御前会議によりポツダム宣言の受諾が決定した。政府は天皇による玉音放送を閣議決定し準備を進めていくが、その一方で敗戦を認めようとしない陸軍将校たちがクーデターを画策。皇居を占拠し、玉音放送を阻止するべく動き出す。(映画.comより

2015年に役所広司や本木雅弘らによってリメイクもされている本作だが、ここでは1967年版をオススメしたい。というのも、戦争という今でいう非日常は、当時を生きていた人間でしか分かりえないものだと思っているからだ。

僕の死んだ祖父は戦地にいった人間で、1950年生まれの父親は幼少期に戦争の話を多く聞いたらしい。一方、妻方の義父は1958年生まれで、妻の祖父は戦争に行っていない。この映画を見たときに改めてこの事実を考え直し、「あぁ家族親戚から戦争の話を聞けるのは、僕の世代あたりが本当に最後なんじゃないか」と感慨深くなった。

何をもって「正しい時代解釈」というかは難しいところだが、1967年公開の本作は終戦から20年足らずしか経っておらず、戦争体験者がキャストに多くいることからも、世界観をより再現できていると考えれる。この映画はそう感じるほど、終始ヒリヒリとして、かつ、現代と比較して異常だと思うような空気感を醸し出している。

「全滅か勝利か、二つに一つしかない」とか、多用される『二つに一つ』という極論でやりとりが進むところとかが、やぁーー、ゾッとする。世論がどう形成されるかだけでなく、いつの時代も人間は本気で生きていたんだということを、子どもに教えれる作品ではないかと思う。

【最後に】ステイホームにいかがだろう

『子供に見せたい作品』として3つ挙げたが、いかがだろうか。古くて渋いものばかりだが、「DVD買っちゃおうかな」って思うほど心からオススメする作品である。

まだまだステイホームが続きそうな時期である。ダラつきがちな今だからこそ、深く考えさせられるような3作品を子どもたちと一緒に見て、感想を話し合ってみるのはいかがだろう。

記事:アカ ヨシロウ
編集:真央

================================
ジャンルも切り口もなんでもアリ、10名以上のライターが平日(ほぼ)毎日更新しているマガジンはこちら。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?