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12年で8,760時間を漫画に費やしたボクが選んだたった5つの漫画

今回のかきあつめのテーマは「自分を構成する漫画5選」だ。なかなか大変なテーマだなぁと思いながら、やはりワクワクしてしまう。それは、最近でこそあまり読まないが、僕が漫画人間だと自負しているからだ。

僕は4人兄弟の末っ子なのだが、実家には5,000冊近い漫画がある。感覚としては長男500冊、次男1000冊、三男2000冊、僕が1500冊くらい買っている計算だ。これくらい漫画があると、自宅時間がだいたい漫画になる。

当時は毎日漫画を読んでいたので、累計すると膨大な時間になる。少なく見積もって1日2時間だとすると1年で730時間。小学生から高校3年の受験直前までそれは続いていたので12年とすると8,760時間だ。実はこの数字、24時間で割り込むと365日となるので、僕は実質12年のうち1年は『漫画』という時間を過ごしていたことになる。おおー。

今回はテーマにのっとり5つの作品をピックアップしてみた。『自分を構成する漫画』なので、90年代・00年代という古いマンガばかりになるが、同世代(30代~)の人たちが「あぁそういえばそんな漫画あったな~」と思ってもらえればありがたい。

『銭』著:鈴木みそ(コミックビーム)

漫画は数多くあれど、それでも結局選んでしまうのがこの『』という作品。死後に幽体として徘徊する少年少女が、世の中のビジネスやお金の流れを俯瞰して追っていくという、何か「すごく面白いストーリー」があるわけではないが何度も読み返した漫画である。

お金に関する漫画であれば、「ナニワ金融道」や最近では「グラゼニ」、「エンゼルバンク」など。ビジネスで思いつく漫画だと「課長島耕作」や「カバチタレ」(並べてみると全て週刊モーニングだ!!)などを読み込んできたが、やはり「銭」のほうが影響を受けたと言えよう。

もともと作者の鈴木みそは週刊アスキーの連載で知っていたのだが、僕はなんと言っても鈴木みその『(ちょうどいい)斜め感』が好きなのかもしれない。世の中のあらゆる事象を、ただまっすぐ見るのではなく、「お金」という切り口で覗いていこうという考え方が当時の僕にとても興味深く感じたのだ。

手元に漫画があるわけではないので若干違うが、漫画内で出てくるこのようなニュアンスのセリフに痺れたのを覚えている。

『お金ってとても不思議だと思わないかい。お金は世の中の価値基準になっていたり、下手すれば命さえ買うことができる。そして、そのお金は紙のように実在するかと思えば、電子化したただの数字になっていて、そんなものが経済を動かしていたりする。』

調べてみると漫画「銭」1巻の出版が2003年だから、中学3年生の頃に出会った作品だ。僕の「お金を考えること」が好きなのは、この漫画の影響といえよう。

『岸和田博士の科学的愛情』著:トニーたけざき(月刊アフタヌーン)

次に紹介するのは月刊アフタヌーンで連載していた『岸和田博士の科学的愛情』という漫画である。第1巻の発売が’92年なので完全に兄の影響を受ける作品だ。Wikiがこの漫画をちょうど分かりやすく説明していた。

「マッドサイエンティストの岸和田博士とその仲間たちが織り成すコメディ。作中世界では、岸和田博士のような超天才科学者は国際法で保護されており、博士はその行為によって被害が生じても、首都壊滅級の大災害でもない限り全く責任を問われない。そのため、周りの人間や一般市民は、度々被害(死亡及び死亡よりも酷い事象を含む)に遭っている。」(Wikipediaより

タイトルにもある通り本作品は「科学」が念頭にあるSF的な要素の多い漫画である。物理の不確定性原理(素粒子のレベルでは観測行為そのものが測定結果に影響を与えてしまうということ)はこの漫画で初めて知った単語なのだが、本作の第5話では「『見る』という行為が目の前のりんごをりんごの形状に変化させているのであって、誰も見ていない場面ではりんごは別の形状をしている」という話がでてくる。

小学生だった僕は「バカバカしい内容だなぁ~」なんて思いながらも、「科学の知識があれば世の中をもっと面白く切り取ることができるのかもしれない」とワクワクしながら読んでいた漫画である。そう考えてみると僕が科学に興味をもったのはこの作品が最初かもしれないので、強く影響をうけた漫画と言えよう。(決して科学漫画ではない。)

『おしゃれ手帖』著:長尾謙一郎(週刊ヤングサンデー)

大学入りたての頃、お笑いサークルに所属していた僕はコント大会で一人の女性に出会ったのだが、彼女が作ったという寸劇(コント)が強烈でいまでもよく覚えている。男子2人からなるストーリーが終始意味不明なのだ。

コントはまったくウケず客席が静まり返っていたが、僕だけが爆笑をしていた。意味不明だけど面白く、確実に僕はあのコントで恋に落ちた。その女の子が以前交際していた人であり、この漫画『おしゃれ手帖』を教えてくれた当人である。

読んでみて「うおおおー、面白い!!」と驚愕したのを覚えている。なんだろう、ジャンルで言うとエロ・グロ・ナンセンスなギャグ漫画なのだが、説明が難しい。Amazonのレビューですてきなコメントがあったので引用させてもらう。

漫☆画太郎先生が体育会系とすれば、
長尾 謙一郎先生は間違いなく文系。
理数系ではありません。
ロジックなど存在しません。
詩的で夢想的、支離滅裂に描き散らした
連続するコマに、小さな宇宙が見えます。
文章で説明できない……。
ぜひ感じてください。
この壮大なくだらなさ!!

なるほどなぁ。そう考えると風間やんわり平本アキラ野中英次もロジックだ。木多康昭古谷実もロジックだ。シュールで通っているうすた京介吉田戦車もロジックかもしれない。あ、おおひなたごうはそうでもないか。(おおひなたごうが彼女にハマったときは嬉しかったなぁ。)

今では『おしゃれ手帖』を僕にプレゼントしてくれた彼女は、「あんたのコントはマジメすぎるよ。もっと支離滅裂だっていいんだよ。」というメッセージを込めていたんではないかと考えている。

確かに本作を知ってからは、世の中の芸術の捉え方が変わったと思う。そう考えれば、僕に多大な影響を与えた漫画のうちの1つと言えるだろう。

『GS美神 極楽大作戦!!』著:椎名高志(週刊少年サンデー)

ここまでは青年コミックが多かったが、決して少年誌を読んでこなかったわけではない。むしろ少年誌のほうが数は読んできただろう。あれだけ散々時間を費やした漫画たちを、残り2つにまとめることなど、到底無理なのだ。それでもあえて挙げるなら、『GS美神 極楽大作戦!!』を挙げさせていただきたい。

改めて読んできた漫画を俯瞰して考えると、若干であるが僕は小学館と相性がいいらしい。ヤングマガジンよりスピリッツ派だし、ヤングサンデーがあったころはヤングジャンプやモーニングより読み込む漫画が多かった。そして作品数で言うならば、もしかしたら週刊少年サンデーが最もお世話になった雑誌になるかもしれない。なので今回は、「GS美神 極楽大作戦!!」というより、「週刊少年サンデー郡」として挙げさせていただきたい。

【あらすじ】
悪霊や妖怪の退治を仕事とするゴーストスイーパーの美神令子と助手の横島忠夫。己の欲望のまま動く二人と、まともだが幽霊のおキヌを中心とした日常のドタバタや、悪霊・妖怪との戦いを描くオカルトコメディ(Wikipediaより

本作の第1巻も’91年か。古いなぁ。やはりこの辺も兄の影響といえよう。ここでGS美神を挙げたのは「『うしおととら』も読みまくったけど、トイレに持ち運ぶに気軽な漫画としては『GS美神』の方が多かった」というのが理由だ。それだけ当時の僕には漫画が身近にあったのだ。

Wikipediaによると週刊少年サンデーは1990年代と2000年代で大きく区切りがあるようで、具体的には1994年頃から2000年頃まで発行部数が伸びた「黄金期」であり、2000年前後から長期連載や人気作が次々と終了し部数が低迷していったという。僕も黄金期を楽しみ、ごたごに漏れず長期連載が終わったと同時にあまり読まなくなった側なので、この流れはよく感じている。

「うしおととら」「今日から俺は!!」「ガンバ!Fly high」「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」「烈火の炎」「め組の大吾」「神聖モテモテ王国」「ARMS」この辺は小学生だったがリアルタイムで楽しんでいた。(犬夜叉コナンは読んでいなかった。)

その頃は漫画熱が高かったので、よく県道沿いのブックオフまでチャリで走っていた。「炎の転校生」や「青空ふろっぴぃ」「陸軍中野予備校」「拳児」など、とうとう最近では見なくなった80年代の漫画も、2000年代中頃までは古本屋をうろつけば見つかるので、そういう古い漫画家知ることで青年誌への足がかりとしていた。(昔に少年誌を書いていた漫画家が青年誌で活躍していることが多いので。)

このような「漫画を探す」時間を考えると冒頭の数字はもう少し多くなるので、当時は漫画に相当なウェイトを置いていたんだなぁと考え深くなる。

『ONE PIECE』著:尾田栄一郎(週刊少年ジャンプ)

最後に挙げるのはご存知『ONE PIECE』(以下ワンピース)である。この漫画については説明は不要だと思うが、簡単なものを貼り付けておこう。

【超概要】
海賊王を夢見る少年モンキー・D・ルフィを主人公とする、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を巡る海洋冒険ロマン。(Wikipediaより

これはもう、メジャー作品だとか内容がどーだとか関係ない。’97年の連載開始から今日の今まで23年間を毎週立ち読みをしてきて、「自分を構成する漫画でない」なんて言えないのである。

よく友人と『ワンピース』派か『HUNTER×HUNTER(以下ハンターハンター)』派かを議論する時がある。そこでは「ワンピースはずっと面白いけど、ハンターハンターの方が最大瞬間風速が上だ」という意見でハンターハンターが上になることがある。いやいやいゃ、確かにその話も分かるがワンピースはスゴイぞ。と。

この作品は全てにおいて圧倒的だ。それは数値が証明している。漫画全巻ドットコムの漫画歴代発行部数ランキングによると、あのドラゴンボールが2億5000万部に対して、ワンピースは4億7000万部とダブルスコア近く差をつけている。一方ハンターハンターは7200万部で1億の台にすら乗っていない(2020年7月時点)。Wikipediaにもこう書いてある。

第67巻は初版発行部数405万部、第66巻は初週売上227万5000部の国内出版史上最高記録を樹立し、第57巻(2010年3月発売)以降の単行本は初版300万部以上を10年以上続けているなど、出版の国内最高記録をいくつも保持している。(Wikipediaより

そう。ここまで圧倒的な数値を作り出した尾田栄一郎という人物は、漫画歴上で鳥山明どころか手塚治虫、藤子F不二雄に並ぶ人物として評価されるような人物であり、ワンピースはそういった作品なのである。

そして僕自身もなんだかんだいって思い入れがある作品で、第1巻を地元の本屋に買いに行ったのをよく覚えている。たまたま同級生の女の子がいて「ワンピース買いに来たの?」と何気なく聞いて「え?(本屋で服を?)」と言われたのだ。軽い挨拶だったのでそれで終わったが、まぁそりゃそうか。当時はジャンプの新連載の1つである。しかし、それから10年くらい経った頃にはジャンプ=ワンピースとなるくらいバカ売れしているのだから感慨深い。

ワンピースは20巻ぐらいから単行本を買わなくなったが、コンビニでの立ち読みは続けていた。中学の頃から毎週月曜日はジャンプの立ち読みから始まる生活を、とうとう今日まで23年間続けている。これは飽き性の僕にとって驚異的なことで、もしかしたらコツコツと続けている唯一の趣味なのかもしれない。今回の「自分を構成する漫画5選」というテーマのおかげで初めて認知することができたのだ。

うーーむ、さすがはワンピースだ。23年も毎週立ち読みし続けている漫画なんかないだろうなぁ。

と思っていたら、

・・あっ! あった!! 刃牙』だーー!!!

【概要】
地下闘技場の最年少チャンピオン範馬刃牙と、刃牙の父で地上最強の生物と謳われる範馬勇次郎を中心とし、様々な格闘家との闘いが織り成す長編格闘ドラマ。通常の格闘技の試合のみならず、色々な条件下での死闘が数多く描かれており、本作の持つ「『地上最強』は誰か?『地上最強』とは何か?」のテーマに深みを持たせている。(Wikipediaより

くっそーー、刃牙があったな~。今でも週刊チャンピオンが読めるコンビニを探しに昼休みにウロウロしているような僕だから、思い入れはワンピース以上かもしれない。(週チャンを立ち読みできるコンビニは少ない)

ってか初めから5つに絞るのだって無理だったんだよ。実家帰って漫画部屋を覗いたらまだいっぱい出てきそうだしね。

久しぶりに振り返ったら楽しかった。

どうだったろうか。本当に個人的な内容だが、これまで読んできた漫画を振り返ることで「20年以上という年月を立ち読みしてきた」という事実を知ることができた。

学生時代は学校の近くのコンビニを使い、社会人になっても昼休みは立ち読みにふける。仕事現場が変わるたびに立ち読みができるコンビニを探しているし、学生時代に遅刻確定でノビノビと立ち読みしていたら担任に見つかったのもいい思い出である。

月曜日はジャンプ・スピリッツ・ヤングマガジン、火曜はイブニングとヤングチャンピオン、水曜日はマガジンとサンデー、木曜日はヤングジャンプとモーニングとチャンピオン、金曜日はスペリオールとヤングアニマル、たまにビックコミックオリジナル、コンビニによってはアフタヌーン、たまにゲッサン・GX。SPA!やプレイボーイもあるか。おおー、まるで忙しい日々を送ってるようだー。笑

今回の記事で久しぶりに読みたくなった作品や、気になった漫画があれば嬉しいし、自身を振り返るのは楽しい時間であった。少しでも漫画を読む人であれば、いちど試してみてはいかがだろうか~。

(※画像は全てAmazonより引用)

記事:アカ ヨシロウ
編集:ホン サチ

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