見出し画像

【不妊治療】第3章【諦める事も一つのゴール】ゴールは何処・・・?

ゴールは何処・・・?

平成7年8月19日

顕微授精をする勇気がないだけなのか・・・?!
やっても、失敗したら・・・きっと立ち直れない。

だからやる勇気がないのかも知れない。金銭的負担・精神的負担・肉体的負担・・・その全ての負担と、全ての『期待と絶望』に耐えられるだろうか?!
『まだ、なにも始めていないじゃない!』そう言われてしまえばそれまでだけど。始めるには、それなりの覚悟と勇気が必要でしょう。今その全てを背負いきれるほど強くないから・・・。


平成7年10月14日

主人の4度目の検査から10日ほど経つ。私達はまた『ダメです』と言われて帰って来た。
救いは、唯一彼がさほど落ち込まなかった事だった。

もう、顕微授精をするほか、方法は残されていない
それでも、泌尿器科のMA医師は『あと3ヶ月待って欲しい』とおっしゃった。『今の治療を、あと3ヶ月続けて、それでも改善がなければ体外受精に踏み切って下さい』と。

何をしても効果が上がらない・・・むしろ悪くなっている事もあ
後3ヶ月で何が変わるのか?!彼も、もう10ヶ月ぐらい、毎日、薬を飲み続け、おそらくめんどうになってきているはずだ。


平成7年12月27日

もうすぐ、平成7年が終わる
主人の『男性不妊』の治療をはじめて、1年が経つ
3ヶ月スパンの検査を繰り返し、その度に改善も進展もなく、ジレンマにおちいり、色々なつらさと戦ってきた1年だった。

『不妊症レース』に参加して、まだたった1年・・・次の主人の検査は来年の1月10日。その結果が、何も変わらなければ、『顕微授精』を、本当にするか、しないか・・・結論を出さなくてはならない。
失敗する可能性も十分にある。

自分に問う。『本当に子供が欲しいの?』

治療しながらも迷いに迷った1年だった。

・・・ただ、『不妊』と言う事実に勝ちたかっただけじゃないの?
以外にひょっこりと、治っていて、次の検査で良い結果を得られれば、『な~んだ、それだけの事だったのか!良かった良かった!』なんて、何事もなかったかの様にまた、子供のない生活を送っていたりするのかもしれない。

体外受精(顕微授精)なんて、言葉にしてしまえば簡単な事なの?!何も知らない人が聞けば、とても成功率の高い治療法だと思われるだろう。
そこに、計り知れないリスクと、苦痛が存在するなんて思いもしないで。

次の検査しだいで、結論を出して良いのだろうか?
まだ迷っている。・・・次の検査が怖い


平成7年1月23日

先日は、主人の5度目の検査だった。

『不妊症』と言うものには、女性が原因となるものと、男性が原因となるものの2通りある。時には、男女(夫婦)のどちらにも原因がある場合も。

私達が、まともに『不妊』と言う問題に向き合って1年以上になった。

あっという間の1年だった。その間、何度も通院し、何度も検査を受け、どれほどの薬を飲んだかもうわからない。初めに持っていた≪99%の希望≫が、だんだん削がれて減って行く事は覚悟していたが、こんなに早く、しかもこんなにたくさんの『希望』が失われるものなのか・・・。

主人の検査結果は、今までと変わりなく、1年間の治療は無駄に終わった。

それでも、また新たな方法として、≪スプレキュア≫によるホルモンを強制的に出させる治療をはじめる事となった。
この方法は、ほとんど≪イチかバチか≫の方法で、スプレキュアをする事によって、逆に精子が今までより減ることもあるらしい。

スプレキュアは、鼻の穴に直接ホルモン剤を注入するもので、女性のホルモン治療では、良く使用されるものらしい。これによって、どれほどの効果が得られるかは、やってみなければ分からないらしい。

人工的に、1つの命を作り出す≫・・・神様にしかできなかった事を、今の医学の力でやってのけようというこの時代。

だからと言って、100%、安易に命が作れる訳がない。
成功する確率なんて自然妊娠と変わらない・・・それより、低いかもしれない。
何も知らない人達は、無神経に人の気持ちを傷つける。治療しているのだから、あたりまえに治ってすぐに子供ができると思っている人もいる

せめて、主人の状態が、少しでも改善されれば・・・今までのようなAIH程度の軽度な人工授精で、妊娠が可能なら、治療を続けても良いと思う。
無理して≪顕微授精≫をしなくても良いんじゃないか?!

この1年、不妊症レースを走りつづけた結果、ゴールは今だに見えないままだったけれど、もうやめようかと思う。
でもこれは≪リタイア≫ではなく、逃げるのでも、目をそむけるのでもない

やっと少し分かってきたのだ。このレースの事が・・・
以前は、≪ゴールがあるのかすら見えなくて、ゴールを探す事に必死だった≫ように思って、悲観しているところもあったけど。
なんてことはない・・・≪ゴールラインは自分達でひく≫のだと・・・ようやく分かった。
ゴールは≪子供を持つ事≫じゃない
≪諦める事≫もまたひとつのゴールだと思う。

別の生き方に切り替えるだけの事。

子供を持たない人生にだって幸せはある。きっと。
これも、また一つの夜明けでしょう・・・


次回・・・第4章 顕微授精に至るまで<1>
新しい夜・・・
をお届けします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?