職場の教養9月6日 「海を渡った葛」

秋の訪れを感じる頃となりました。秋の七草の一つに数えられる葛は、この時期に紫色の花を咲かせます。
日本では古くから親しまれ、葛粉を利用した葛切りや葛餅、根を乾燥させた生薬の葛根湯は馴染み深いものです。
葛は繁殖力が強く、蔓を伸ばし、他の樹木に絡みつき、旺盛に繁茂します。そのため、植林した木の幹を締め付けて林業被害を引き起こすこともあります。
近年、この日本原産の葛がアメリカに渡り、日本とは比べ物にならないほどの猛威を振るっています。家畜の飼料や土壌流出防止を目的に植えたものが爆発的に広がり、地域の生態系や産業に多大な被害を与えました。
そのため、国際自然保護連合から「世界の侵略的外来種ワースト100」に認定されてしまいました。日本とは違い、葛を食べる昆虫がいない、競争関係にある種がいない、冬季の寒さで成長が抑制されない、などの理由が考えられています。
自然界は、様々な種が絶妙なバランスを保って成り立っているのでしょう。

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