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バロック期のスペインの画家 ディエゴ・ベラスケス


6月6日は、バロック期のスペインの画家であるディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス(Diego Rodríguez de Silva y Velázquez, 1599年6月6日(洗礼日) - 1660年8月6日)の洗礼日です。

ディエゴ・ベラスケスは、スペイン絵画の黄金時代であった17世紀を代表する巨匠です。19世紀のフランスの画家であり、印象派の画家にも影響を与えたエドゥアール・マネは、ベラスケスを「画家の中の画家」と呼んだそうです。

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下記「目次」の「ギャラリー」の項目以下において、ディエゴ・ベラスケスのいくつかの作品を鑑賞することができます。

小学館の日本大百科全書(ニッポニカ)によれば、ベラスケスの項目として次のように記載されております。

ベラスケス

17世紀スペイン絵画の巨匠。セビーリャに生まれ、マドリードで没した。父はポルトガル系の貴族で、ベラスケスは母の姓。生地で、のちに義父となる後期マニエリスムの画家で『絵画論』の著者パチェーコの工房に学び、1617年、職業画家となった。23年、義父同道の二度目のマドリード訪問で、同郷の宰相オリバレス伯公爵の助力もあって、一躍フェリペ4世(在位1621~65)の首席宮廷画家に登庸された。彼はまた、温和で誠実な性格ゆえに王の強い信頼を得て、宮廷役人としても重用された。セビーリャ時代の作風は、カラバッジョ風の明暗法と自然主義で、強固なボリュームの木彫のような人物像と、光や色彩のコントラスト、物の質の追求などを特徴とし、厨房画(ボデゴン)(『卵を料理する老婆と少年』『セビーリャの水売り』ほか)や肖像画(『修道女ヘロニマ・デ・ラ・フエンテ』ほか)、さらに宗教画(『東方三賢者の礼拝』ほか)を描き、日常的で卑近な主題に卓越した技法を発揮した。


 この傾向は、マドリード初期の傑作でセビーリャの農夫たちを主人公とした『バッカスの勝利(酔っぱらいたち)』(1629)まで続くが、ベネチア派とフランドル派を中心とする膨大な王家コレクションとの接触、外交官としてスペインを訪れたルーベンスとの親交、その直後の第1回イタリア旅行(1629~31)を通じ、色彩は明るさと透明度を増し、筆致も軽妙さを加えていったローマのメディチ家別荘の庭を描いた2枚の風景画を第1回旅行の際の作とする説があるが、それらはコローさえ想起させる。
 第2回イタリア旅行(1649~51)までの17年余は、ベラスケスのもっとも多産な時代であった。『ブレダの開城(槍(やり))』『カルロス4世騎馬像』『皇太子バルタサール・カルロス騎馬像』をはじめ、王族の狩猟服姿の肖像や、宮廷で養われていた小人や道化をヒューマニスティックに描いた肖像など、数多くの傑作を描いた。これらの作品において、セビーリャ時代の固い造形は、光と空気を感じさせる透明な色彩のタッチによって溶解され、対象は視覚的な真実を増していった
 ベラスケスは寡作家だが、作品が門外不出だったために、自分の作品に取り巻かれながら一作一作を新たな実験の場とすることができた。こうした技法上の革新は、第2回イタリア旅行とそれに続く晩年に完成した。ローマで描いたさまざまな赤の階調による『教皇インノケンティウス10世』は、ヨーロッパ肖像画の最高傑作の1枚である。さらに、帰国後に描いた傑作群、一連の『マルガリータ王女』、絵画の神学大全といわれる集団肖像画の傑作『ラス・メニーナス(宮廷の侍女たち)』、神話と現実が混然一体となった『ラス・イランデーラス(織女たち)』は、ベネチア派に始まった空気遠近法の完成、つまり、われわれの目が空気の厚さと光の量によって対象の形と色をさまざまに見るように、三次元空間とその中に存在する対象をカンバス上に描く技法の完成を、ひいては、印象派を先駆する色彩分割描法の完成を物語っている。[神吉敬三]『神吉敬三解説『世界美術全集15 ベラスケス』(1976・集英社)』▽『M・セリュラス著、雪山行二・山梨俊夫訳『ベラスケス』(1980・美術出版社)』

また、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のディエゴ・ベラスケスの項目の中の「宮廷画家」の説明によれば、次のように記載されております。

宮廷画家

1623年、マドリードに2回目の旅行に行く。このとき、スペインの首席大臣であったオリバーレス伯爵ガスパール・デ・グスマンの紹介を受け、国王フェリペ4世の肖像画を描いた。国王に気に入られてフェリペ4世付きの宮廷画家となり、以後30数年、国王や王女をはじめ、宮廷の人々の肖像画、王宮や離宮を飾るための絵画を描いた。
美術愛好家であったフェリペ4世は、ベラスケスを厚遇し、画家のアトリエにもしばしば出入りしていたという。当時、画家という職業には「職人」としての地位しか認められなかったが、フェリペ4世は晩年のベラスケスに宮廷装飾の責任者を命じ、貴族、王の側近としての地位を与えていた
ベラスケスの作品では、画面に近づいて見ると、素早い筆の運びで荒々しく描かれたタッチにしか見えないものが、少し離れたところから眺めると、写実的な衣服のひだに見える。このような、近代の印象派にも通じる油彩画の卓越した技法が、マネらの近代の画家がベラスケスを高く評価したゆえんである。
1628年には、スペイン領ネーデルラント総督のイサベル・クララ・エウヘニアから外交官として派遣されてきたピーテル・パウル・ルーベンスと出会い、親交を結んだ。この年から翌年にかけて、「バッカスの勝利」を描いている。
1629年、美術品収集や絵画の修業などのためにイタリアへの旅行が許される。イタリアへ向かう船の中でオランダ独立戦争の英雄であったアンブロジオ・スピノラと同乗することとなり、親交を結んだ。イタリアではヴェネツィアやフェラーラ、ローマに滞在し、1631年にスペインへと戻った。
帰国後、1634年から1635年にかけて、新しく建設されたブエン・レティーロ離宮の「諸王国の間」に飾る絵の制作を依頼され、すでに故人となっていたスピノラ将軍をしのんで「ブレダの開城」を制作。他にも1637年には「バリェーカスの少年」、1644年には「エル・プリーモ」や「セバスティアン・デ・モーラ」など多くの作品を制作し、役人としても順調に昇進していった。
1648年には2回目のイタリア旅行に出発し、1651年まで同地に滞在した。各地で王の代理として美術品の収集を行うかたわら、「ヴィラ・メディチの庭園」、「鏡のヴィーナス」や「教皇インノケンティウス10世」などの傑作を制作している。


1651年に帰国すると、1652年には王宮の鍵をすべて預かる王宮配室長という重職につくようになり、役人としても多忙となる。一方で、1656年には「ラス・メニーナス」を制作し、1657年には「織女たち」、1659年には絶筆となる「マルガリータ王女」など、この時期においても実力は衰えず、大作を完成させていった。1660年にはフェリペの娘であるマリー・テレーズ・ドートリッシュとフランス国王ルイ14世との婚儀の準備をとりしきるが、帰国後病に倒れ、1660年8月6日にマドリードで61歳で死亡した。
ベラスケスは寡作であり、2度のイタリア旅行や公務での国内出張を除いてはほとんど王宮内ですごした上、画家としてのほとんどの期間を宮廷画家として過ごしたためにその作品のほとんどが門外不出とされ、21世紀の現在でもおよそ120点の作品のうち3分の1がマドリードにあるプラド美術館の所蔵となっている。


ギャラリー

以下の絵画についての説明文は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用しております。

ブレダの開城 1634-1635 プラド美術館

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『ブレダの開城』は、王の離宮の「諸王国の間」という大ホールを飾るために描かれた戦勝画。1625年、ネーデルラント南部の要塞ブレダにおけるスペイン軍の戦勝を記念して制作されたもので、敗れたブレダ守備隊の指揮官ユスティヌス・ファン・ナッサウ(オラニエ公ウィレム1世の庶子)が、勝者であるスペイン側の総司令官アンブロジオ・スピノラに城門の鍵を渡そうとする場面が描かれている。
この種の戦勝画では敗軍の将は地面に膝をつき、勝者はそれを馬上から見下ろすという構図が普通であったが、この『ブレダの開城』では、敗軍の将ユスティヌスと勝者スピノラは同じ地面に対等の位置で立っている。温和な表情のスピノラは、まるで長年の友人に対するように敗者ユスティヌスの肩に手を置いている(ちなみに両者は1601年にニューポールトで対戦したこともある)。スピノラの傍らに大きく描かれた馬は、彼が敗者に敬意を表するためにわざわざ馬から下りたことを示している。このような、勝者側の寛大さを二重三重に強調した表現は、敗者に名誉ある撤退を許したスペインの騎士道精神の勝利を表したものといわれている。


《教皇インノケンティウス10世》1650年、 ローマ、ドーリア・パンフィーリ画廊蔵

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1649年、ベラスケスは2度目のイタリア旅行に出かけ、ローマに2年ほど滞在している。この間に描かれた教皇インノケンティウス10世の肖像は、カトリックの最高位にある聖職者の肖像というよりは、神経質で狡猾そうな一人の老人の肖像のように見える。国王、教皇から道化師まで、どのようなモデルをも冷徹に見つめ、人物の内面まで表現する筆力はベラスケスの特長である。
椅子に座るモデルの膝から上の部分が、画面の中心に大きく描かれている。モデルの背後は緞帳により完全に閉ざされている。これにより画面のほとんどはこの緞帳か教皇が身に着けた服飾、すなわちなんらかの繊維製品により占められている。それ以外の部分には椅子の木製あるいは金属の部分と、衣装から覗くモデルの顔と手が描かれている。人物像の周囲の余白はほとんどない。特にラファエロが描いた教皇レオ10世の肖像に見られたような、侍者など他の人物の姿や小道具は描かれていない。わずかに持物として左手の紙片が確認できる。この構図により鑑賞者の視線は、画面の大部分を占める布地の色彩と質感、あるいは頭部の再現的描写の観察へといざなわれる。
色彩に関してはまず、緞帳、帽子、上着、椅子のカバーに見られる赤が支配的である。その次に広い面積を占めるのが白で、シャツと下衣に認められる。赤と白が画面のほとんどを占める中で、顔と手の肌色、椅子の金属部分の金がアクセントとなっている。
後にフランシス・ベーコンがこの肖像画をモチーフにした一連の作品を制作したことでも知られている。


鏡の前のヴィーナス(1648-51)ナショナルギャラリー 1650年頃 ロンドン、ナショナルギャラリー蔵

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上記『教皇インノケンティウス10世』と同じ頃に描かれたもので、カトリックの伝統の強い当時のスペインでは珍しい裸婦像である。1914年、暴漢によって背中から尻に渡る7箇所がナイフで傷つけられた。現在もかすかに修復の痕が見える。


ラス・メニーナス(女官たち) 1656 プラド美術館

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フェリペ4世の王女マルガリータを中心に侍女、当時の宮廷に仕えていた矮人(わいじん)などが描かれ、画面向かって左には巨大なキャンバスの前でまさに制作中のベラスケス自身の姿が誇らしげに描かれている。中心の王女マルガリータを含め、画中の人物は鑑賞者の方へ視線を向けており、何かに気付いて一瞬、動作を止めたようなポーズで描かれている。その「何か」は画面奥の壁に描き表された鏡に暗示されている。この小さな鏡にぼんやりと映るのは国王フェリペ4世夫妻の姿であり、この絵の鑑賞者の位置に立って画中の人物たちを眺めているのは実は国王その人である。この絵は、国王の夏の執務所の私室に掛けられていたという。画中のベラスケスの黒い衣服の胸には赤い十字の紋章が描かれているこれは、サンティアゴ騎士団の紋章で、ベラスケスが国王の特段のはからいで同騎士団への加入を果たし、貴族に列した1659年(死の前年)に描き加えられたものである


バリェーカスの少年(Francisco Lezcano, el Niño de Vallecas) 1643-45年

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ベラスケスは当時「慰みの人々」として宮廷に仕えた小人や道化師をしばしば題材にしており、本作もそのひとつで、『ディエゴ・デ・アセド』『セバスチャン・デ・モラ』と同様、単独の肖像画として描いている。3点とも王の狩猟用の館トーレ・デ・ラ・パラーダ(Torre de la Parada、パラダ塔)に飾られていた。モデルは、王太子バルタサール・カルロスの遊び相手として宮廷に暮らした矮人のフランシスコ・レスカーノで、Lezcanillo や el Vizcaínoの愛称で呼ばれていた。バリェーカス(Vallecas)はマドリッド郊外の地名。マドリッドの山を背景に、手にカードを持ち、狩猟用の装いで屋外に座る姿が描かれている。


『道化師ディエゴ・デ・アセド』1645年

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「エル・プリモ(従兄弟)」の愛称で呼ばれ、知性派として知られた


『セバスチャン・デ・モラ』 1645年

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カルロス王太子に仕えた道化師


Vieja friendo huevos (1618, English: Old Woman Frying Eggs). National Gallery of Scotland, Edinburgh

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Philip IV in Brown and Silver, 1632

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El Triunfo de Baco or Los Borrachos 1629 (English: The Triumph of Bacchus/The Drunks)

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Portrait of the Infanta Maria Theresa, Philip IV's daughter with Elisabeth of France

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Lady from court, c. 1635

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Portrait of Pablo de Valladolid, 1635, a court fool of Philip IV

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Portrait of Juan de Pareja (c. 1650)

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Portrait of the eight-year-old Infanta Margarita Teresa in a Blue Dress (1659)

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Inmaculada Concepción, c. 1618 (National Gallery de Londres)

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Adoración de los Magos, 1619

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El aguador de Sevilla (1620)

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Jerónima de la Fuente (1620)

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En su primera visita a Madrid en 1622 pintó el retrato de Góngora, captando sin ninguna concesión su amargura

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Retrato del infante Don Carlos (1626-27)

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La fragua de Vulcano, (1630)

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La túnica de José, (1630)

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Felipe IV a caballo (1634)

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El príncipe Baltasar Carlos a caballo (1635)

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La reina Isabel de Francia a caballo (1628-1636)

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El bufón Calabacillas (1637-39)

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El príncipe Felipe Próspero (1659)

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Dibujo preparatorio (Real Academia de Bellas Artes de San Fernando)

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Copia de taller del cuadro perdido del cardenal Borja (1645)

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Las hilanderas (1658)

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Isabella von Bourbon, 1630, Öl auf Leinwand; Prado, Madrid

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Prinz Baltasar Carlos als Jäger, 1635/36, Öl auf Leinwand; Prado, Madrid

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Conde-Duque de Olivares zu Pferde, 1634, Öl auf Leinwand; Prado, Madrid

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Édouard Manet, Der Tragöde, 1865–66, Öl auf Leinwand; National Gallery of Art, Washington

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Bildnis des Gaspar de Guzmán, Herzog von Olivares. (Gaspar de Guzmán, Conde de Olivares)

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Porträt der Infantin María von Österreich

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Don Pedro de Barberana als Mitglied des Calatrava-Ordens

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Christus am Kreuz. Aus der Benediktinerklosterkirche St. Plácido in Madrid

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Retrato ecuestre del rey Felipe III de España (1578-1621)

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Retrato del cardenal-infante Fernando de Austria (1609-1641)

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Retrato del insigne escultor español Juan Martínez Montañés (1568-1649)

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Prinz Baltasar Carlos mit dem Herzog von Olivares

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Retrato de Gaspar de Guzmán y Pimentel (1587-1645)

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La obra representa al fabulista griego Esopo, y fue realizada por el pintor sevillano Diego Velázquez hacia el año 1638

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La obra representa al filósofo y escritor griego Menipo de Gadara, y fue ejecutada por el pintor sevillano Diego Velázquez hacia 1638

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La obra representa la coronación de la Virgen María, madre de Jesucristo, por los tres miembros de la Santísima Trinidad

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La obra representa a Sibila, un personaje de la mitología grecorromana

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Christus im Hause von Maria und Martha

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Die Dame mit dem Fächer

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Porträt König Philipp IV. von Spanien

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Prinz Baltasar Carlos und sein Zwerg

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Infantin Margarita Teresa (1651–1673) in rosafarbenem Kleid

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