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【シンガポール 14日間ホテル軟禁日記】#11_MOM(労働省)からの電話篇

2020年8月17日、シンガポールに5ヶ月ぶりに入国。

入国後14日間はシンガポール政府指定ホテルでの滞在が義務付けられている。その14日間+前後数日で、起きたこと、思ったこと、考えたことの記録。

※誤った情報が含まれる可能性、個人の思い込みや考えが多分に含まれていることはご容赦ください。

【Day 7】 ~ほしくない、けど、くれないと不安になる

軟禁生活も折り返しの7日目。東南アジアらしい大雨がこの15分くらい降っています。

ホテル軟禁にしろ自宅軟禁にしろ、シンガポール政府は軟禁中の人たちを非常に丁寧に(厳しく、時に恐喝を交えて)監視していることは以前にもご紹介しました。

ネット上では1日に数回、しかも朝早い時間からも監視の連絡(電話やメッセージ)があると聞いていたので、朝も英語も苦手な僕はとってもビビってました。

そんな僕にもDay 3以降、電話がかかってくるようになりました。(これまででSMS、Whatsappなどの電話以外のパターンはありません)今回はその電話の様子をご紹介したいと思います。

■すべては監視用アプリをインストールしてから始まる

Day3、水曜日の昼過ぎにMOM(労働省)から届いたSMSにしたがってHOMERアプリ(位置情報を検出し続ける政府開発のアプリ。詳しくはこちら)をダウンロードしてから、彼らからの電話がかかってくるようになりました。

おそらく、アプリをダウンロードすることで「軟禁生活者」としての僕の情報が労働省のデータベースに正式にインプットされるのだと思います。

Day 2もDay 3の午前中もそのことは当然知らず(というかその推測が正しいかどうか今も確証はないですが)、電話なのかメッセージなのかが頻繁にくると思ってましたから、何の連絡もないことに逆に焦ってました。

「何かミスってるんじゃないか…」

という不安に苛まれ、スマホの電波状況や着信音量設定を入念にチェックし、着歴・メッセージをこまめに確認。それでも一向に鳴らない電話。

恋人からの連絡を待つメンヘラ状態の時を過ごしていました。

■Day 3 : 1回目の電話

アプリダウンロード直後の15時ごろ。音量マックスでけたたましくスマホが鳴り、画面には登録のないシンガポール発の番号が表示されています。

「来た!」

恋人から連絡がきたときのメンヘラのリアクションが、思わず出ます。

電話をとると、明るく陽気ながら上品な口ぶりの女性(中年くらいの声色、声から勝手に推測するにたぶん小太り)がフレンドリーに質問をしてきます。

「こんにちはー、Mr. Takaseki Akiyasu〜♪元気かしら?ビザの番号の下4ケタを教えてねー♪」

「ホテルはどこかしら〜?部屋番号も教えてね♪」

「PCR検査の連絡は来たかしら?」
「いえ、まだです。」
「そうよね〜♪」
(しらんがな…。)
「PCR検査については3日以内にSMSで連絡がいくから、SMSをちゃーんとチェックしておいてね〜♪」

「ほか、なにか困ったことはあるかしら〜?」
「あ、いえ、特にないです、ありがとうございます。」
「がんばってね〜♪Have a nice day☆」

■Day 4 ~ Day 6 : メンヘラの取り扱いのプロ感

翌日のDay 4はなんの連絡もなし。不安にさせて、安心させて、もういちど不安にさせる。この国の労働省は、メンヘラの取り扱い方をしっかり会得しているようです。

結局、2回目の連絡は、1回目の電話から48時間以上が経過したDay 5の夕方17時前でした。

一方で、Day 6は土曜日だからないかな、と思っていたら、前日同様に夕方過ぎに連絡が入りました。(2日連続で連絡くれた、やった!)

ともに手法は電話で、若めの男性。(声色から察するに、たぶん2人とも長身細身)

1回目ほどではないにしろ、フレンドリーに挨拶や「困った子はないか?」などの言葉を交わしながら、名前の確認・ビザ番号の確認・ホテルの場所や部屋番号・PCR検査の日取りは決まっているかの確認をされます。

また、この2回では、

・シンガポール入国タイミング
・スマートウォッチを空港で受け取ったか?

も聞かれました。

スマートウォッチは8/10くらいから運用が始まった政府開発のデバイスを指します。政府指定のホテル以外で軟禁生活を送る人は、空港でこれを受け取り14日間装着した状態で過ごします。

位置情報を検出し、異常があれば管理者側にアラートが鳴るようになっているそうで、これによって監視リソースの削減ができる、と政府からは発表されています。

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僕のような政府指定ホテル滞在者には関係ないはずなのですが、いちおう確認リストに入っているのでしょう。

電話の後ろではかなりたくさんの人が電話をしているコールセンターのような音が聞こえたので、政府指定ホテルに滞在しているorいないに関係なく、軟禁生活者に片っ端から電話をする、という業務が今もどこかで行われているのだと思います。

■Day 7 : さらに心は奪われていく

労働省からの電話は今朝もありました。(日曜日なのに、3日も連続で…!しかも初めての午前中…!ありがとう!)

今朝は若い女性、とても真面目な雰囲気の方(声色から察するに、たぶんメガネ着用)からの電話でした。

質問内容は前日・前々日の電話とほぼいっしょなのですが、とても真面目に丁寧に僕のことを呼びかけてくれまして、新しい質問をするごとに、僕の名前を読んでくれます。

「Mr. タk、タカセキ」
「Mr. タッカs、タッカッsk、、、」
「Mr. タッカ、タッカッカ、タッセ、、、」

Takaseki、はたしかに言えないですよね。日本人でも電話で聞き取ってもらえることはほぼ皆無だし。なのにシンガポールで、1回の電話でこんなに何回もチャレンジしてくれる人に出会えるとは思いませんでした。本当にありがとう。

もう僕は、メンヘラどころか、完全にこの電話のトリコです。次の電話が待ち遠しくてなりません。

つづく


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