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明日、食いっぱぐれるかもしれなくても、書くことで生きていきたい。

たまに、「手に職があったらよかったのに」と思うことがある。


ここで言う“手に職”っていうのは、率直に言うと“食いっぱぐれない資格”のことだ。実際に従事している人が見たら怒るかもしれないけど、保育士とか介護士とか、看護師とか調理師とか美容師とか、そういうの。「たとえ職を手放しても、資格があれば(もちろん技術力も必要だけど)再就職の希望がありますよ」的なものだ。

あえて書く必要はないかもしれないけど、私にはそんな“食いっぱぐれない資格”はない。だから、「あったらよかったのに」って書き出したわけだ。そうすれば、安心して会社を辞められるのにって?笑 思いっきり好きなことに挑戦できるのにって?笑 自分で書いてても笑けてくる。


以前、「会社で働くのが嫌な人がするっと会社を辞めるには、やっぱり食いっばくれない資格があればいいのかな」なんて言われたことがあった。

その時、私は「この人、なんてことを言うんだ…」と思った。今でも上手く言い表せないのだけど、とにかくすごく、もやっとした。

相手は個人事業の人で、専門学校に通ったうえで取れるような“国家資格”を持っていることを聞いていた。現在のお仕事は、働き方のコンサル(?)みたいな感じなんだけど、保持している国家資格とは特に関連がない。

だから、そうやって言われた時、「その国家資格を保険に、嫌で仕方がない会社をやめて、起業したってことなのかな。失敗しても戻れるもんね。食いっぱぐれる心配がないってことか、あなたは」なんて腹黒いことを考えてしまった。


でも、じゃあ私も、思いっきり好きなことをするために、保険として“食いっぱぐれない資格”を取るかと言われたら、たぶんそれは無理

国語で学年トップの成績を取れても、数学で3点を取ってクラス中から笑われるような私だ。もう、興味のないことで頑張れる力が、ない。

そもそも、食いっぱぐれないために、興味のない資格を取るって、楽しいのだろうか?

先に挙げた、誰が見ても素晴らしい資格を持っている人って、それがやりたいから、その仕事に就きたいから、たっくさん勉強して資格を取ったんだと思う。「食いっぱぐれないから」という理由があったとしても、それが第1位の理由ではないんじゃないか。


遠い昔、作家を目指したいから、保険に何か資格が欲しいと思ったことがあった。でも、私にはそういう頑張り方ができなくて。文章を書くこと以外に、あまりにも興味が持てなかったから。

大学生の時、教員免許を取ろうかと思ったこともあったんだけど、単位や学費が跳ね上がるからやめた。その程度の気持ちだったし、実際に受けていても取れなかっただろう。就活に向けて、それらしい資格(秘書検定とかビジネスマナー検定とか)も取らなかった。「資格があったら有利だろうな」と思ったけど、だって興味が出なかったんだもん。


私はライターをしているけど、ライターに資格はいらない。そう言えば、前の会社で事務の仕事をしていた時、どうやったら文章を書く仕事に就けるのか知りたくてググりにググったことがあった。

何か資格が必要なのか、有利な資格があるのか、そんなことをたくさん調べたのだけど、でも、「ライターに資格はいりません。あなたがライターだと名乗れば今日からライターです」的なサイトしかヒットしなくて、結構絶望したのを覚えている。今思うと浅はかだし、運良くライターになれてよかったと思う。

でも、振り返れば、「文章を書く仕事に就くためなら、資格を取りたい」と考えていたことになる。もし実際、何か資格があったとしたら、私は死にもの狂いで勉強しただろう。そういうことだ。人間は、頑張りたいことしか頑張れないのだと思う。



「するっと会社を辞めるには、やっぱり食いっばくれない資格があればいいのかな」と言われた時、私がもやっとしたのは、図星だったからだと思う。


会社を辞めたいというと語弊があるんだけど、もっと作品と呼べるような自分の文章を書く時間がほしいし、作品づくりのための勉強もしたい。この前、“美しい髪コンテスト”に応募したみたいに、もっと賞に応募するとかしてみたい、そのために、ちょっと働き方を変えたい、なんて、日々こそこそ考えている。

でも、そうする勇気がないのは、この会社を手放したら、つまり、キャリアを中断したら、私に戻ってくる場所がないからだ。それは、安定的にお金を貰える場所という意味で。


だから私は、あの個人事業の人の顔がよぎって、学生時代の自分に後悔してしまう。「思いっきり好きなことをするために、なんか資格でも取っておけばよかったのかな」って。

でも、そんな理由で資格を取るなんて、私には無理だ。「小説を書く時間がないから部活を辞める」なんて選択をするくらい馬鹿な私が、本当にやりたいことではないことで、努力をするなんて無理。そのために割く時間があるなら、私はもっと文章を書くために、それを良くするために生きたいのだ。



「手に職があったらよかったのに」と思う自分を、ひたすらなぐさめる。だって、そのぶん夢に向かって生きることができたのだから、と。

もし私が、保険を求めて何か手に職をつけようと思ったら、興味がないからそもそもモチベーションが上がらないし、他の人よりも何千何百倍もの努力をしないと、試験に合格しないだろう。食いっばくれない資格を取るのはそう簡単じゃない。合格するのがむずかしいからこそ、食いっぱぐれないのだ。


それに、“将来の保険”のために、これっぽっちも興味のない“食いっぱぐれない資格”に時間を使わなかったからこそ、そのぶん、書くことに時間と財産を費やすことができたとも思う。

別に、ライターとして上手いか下手かと言われたら全然上手くないかもしれないし、これまでの全人生をかけてこのレベルかよと思われるかもしれないけど、今の私の書く力は、これまでの人生の選択とその蓄積のおかげで身につけたものだ。

全力を注いでもなお、このレベルなんだから、他のことをしていたら、今よりもっと下手だったとも思う。回り道をしていたら、ライター・書き手として、今、この目で見ている景色は、見られていなかったかもしれない。


だから、私は、これでよかったんだ。

手に職がなくて、将来食いっぱぐれるかもしれないけど。才能がないのであれば、まっすぐ努力をするしかない。「臆病だから保険がないと挑戦できない」とか、甘ったれたことを言う前に、できることをちゃんとやらなければ。

書くことで生きていくって決めたのだから。




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