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ワクチン接種の考え方~打つ?打たない?~

こんにちは。今回は成犬・成猫のワクチン接種の考え方をお話していきたいと思います。実際ワクチンって打つ必要があるの?という判断の一助になれれば幸いです。では、始めて行きましょう!

ワクチンには大きく2つ、「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」があります。コアワクチンとはすべての犬や猫が接種するように勧告されているワクチンです。重篤な感染症、人獣共通感染症(動物もヒトも感染できるため、犬猫だけでなく飼い主も病気になる疾患)でありヒトへの被害が大きいもの、容易に伝播し、多数に被害が起こるものが含まれています。一方、ノンコアワクチンは個々の動物の状況(地域による感染症の流行など)に基づいて、接種を決定するワクチンとなります。

みなさんは、犬のワクチン接種で動物病院に行くと、「5種と8種、どちらにしますか?」と聞かれたことはないでしょうか。これはコアワクチン+ノンコアワクチンの組み合わせで数が違うんです。

犬のワクチン

5種と8種の大きく違う点は「レプトスピラ症」が含まれているかどうかです。

レプトスピラ症とは感染動物(ドブネズミなど)の腎臓に保菌され、尿中に排出されることで河川や土壌など環境を汚染し、接触により偶発的に感染します。ほとんどの哺乳類が感染する人獣共通感染症(つまり、ヒトも感染する病気)です。イヌの感染初期症状は 発熱や食欲不振、嘔吐、出血などが認められ、 その後腎不全や肝不全に発展する場合もあります。ヒトは発熱や頭痛などの軽症から黄疸や出血などの重篤化まで様々な症状を示します。

動物病院でワクチンの種類を決定する際、よく確認するのは「河川や山などアウトドアによく犬を連れていきますか」ということです。ネズミがよくいる環境から感染する疾患のため、あまり外出しない場合には8種でなくてもいいというのが一般的な考え方です。また、ワクチンに含まれる病原体の種類が少ない方が接種後の副作用のリスクも低いとされているため、散歩以外外出しない、散歩が嫌いというイヌの場合には5種でもいいでしょう。

ここからは私の個人的な意見ですが、以前築地市場の解体が行われた際に大量のネズミが出たという話を聞いたことがあります。また、私自身、東京駅の売店でサンドイッチを購入しようとした際に天井からネズミが出てきた経験があります(その時はただただ見上げて、言葉も出ませんでした)。つまり、都会にもネズミはいるのに本当に河川に行くイヌだけの予防でいいのか?という点に関しては疑問が残ります。

また、ワクチン接種を打つかどうか判断するために「抗体価検査」を動物病院でうけることができます。これは、以前接種したワクチンの効果で抗体が十分に身体に残っているか、抗体の量を測る検査です。これで十分量の抗体があれば、ワクチン接種の必要性はないでしょう。

しかし、これは日本の弊害が一つだけあります。世界小動物獣医師会(WSAVA)では抗体が不足している疾患のみの単剤ワクチンの接種を推奨していますが、日本では現状単剤のワクチンの販売がありません。つまり、1種類の疾患の抗体が不十分であった場合、5種もしくは8種のワクチンを打つ必要性があるのです。

ワクチン接種の判断は個々の生活環境で決めるのがいいと思います。ご家族に幼いお子さんがいる、免疫抑制剤など服用している方がいるなど感染症のリスクが高い場合にはしっかりした予防をお勧めします。また、過去ワクチン接種を受けた際にイヌが副作用を起こしたことがある、イヌが今重い病気を抱えている場合には、無理してワクチン接種は打つ必要性はないでしょう。世界小動物獣医師会(WSAVA)ではワクチン接種は3年に1度で感染症が予防できるとしています。

今回はワクチン接種の考え方について説明させていただきました。皆さんの判断の一助となれれば幸いです。

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