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久しぶりの自転車(金沢旅行)

金沢に来た。
退職に向けた有休消化中の、一人旅。柏崎から車で3時間で着くから、ちょうど良い距離感。費用もかなりお手頃。
金沢には大学の友達がいて、名所も色々あるしずっと行きたいと思っていた。兼六園、21世紀美術館、そして石川県立図書館。あの図書館に行きたい。
二泊三日ゲストハウスに泊まりながら、金沢を見て回る。

初めての一人旅だ。旅行はあまりしない方で、めんどくさいが勝ってしまう。
今回はなんで実行できたのか考えると、周りに一人旅をする人が意外といるなーと思ったり、泊まりってみたいゲストハウスを見つけられたからだと思う。
1人で出かけるのには全く抵抗はない。でも1人で出かけると「頑張れない」ことが多い。ちょっと頑張ってあっちまで行ってみようとか、ちょっと頑張ってこれに挑戦してみようとか、旅を楽しくする「ちょっと頑張る」ができない。誰かといればそのスイッチが入るけど、1人の時は「疲れたし、もういいやー」に何度なったことか。現にこれを書いている今も、夕飯を食べに行くのは諦めて、宿でパソコンを開いている。(近くの魚市場で地ビールとお刺身と金沢おでんを買う予定なので、そこは頑張るつもりです!)
前に長野に行った時も、ちょっと頑張ってもう1つお店を回ることができなかったし、ちょっと頑張って老舗のご飯屋さんに入ることができなかったなーと思い出す。でも喫茶店でオムライス食べたよな…と記憶が蘇ってきたけど、どこのお店かわからない。1人で過ごした時間は、記憶から抜け落ちやすいのかもしれない。

1人で初めての土地を歩くのは、案外楽しかった。普段は車ばかりだから、歩いて回ることで五感が生きていると思えた。風や匂いを感じて、周りの人の言葉を聞くことの楽しさを久しぶりに体感した。歩いたり、バスに乗ったりすると本当にいろんな人がいるなーと思う。車ではそんなこと考えない。車はだいぶ私を孤独にしていると思った。それがとても好きでもあるけど。
看板が面白かったり、大きな木があったり、どこに出るかわからない道を歩いたり。近道を選ばない旅行だ。何からも急かされていなかった。誰かの機嫌を伺うこともなく、誰かと楽しいを共有することもなく、ひとりだった。

ひとりだなー、と何度も思った。私がひとり、ここにいるだけだ。何も生み出さず、何も残さず、道を歩いているだけ。ここに私の生活はなくて、知っている人もいなくて、流れゆく存在。
暮らすことと、旅行することは、違う。当たり前だ。そんなことを考えていたら、何も積み上げない旅行に、なんの意味があるのだろうか。私は何をしにきたんだろうなーと思ったりした。

石川県立図書館まで少し距離があるのでゲストハウスのレンタルサイクルを利用した。天気もいいし、自転車で行くのは気持ちがよさそうだな〜とルンルン気分だった。(こういう便利なものを計画的に使えるということにも浮かれていた)
しかし、いざ自転車にまたがってみたらフラフラした。よく考えてみたら自転車に乗るのは5年ぶりとかだった。え!待って!こわ!となり、すぐに降りた。自転車って体が覚えてるっていうし、中学から大学生まで毎日乗ってたし、絶対乗れると思っていた。自転車が怖いなんて思ったことなかった。
金沢の道路は自転車ゾーンがあり、他にも乗っている人が多いから車も慣れたように避けてくれる。でも私はフラフラで、止まるのも怖くて、止まる時どうやって足を下ろすんだっけ???という状態だった。何より、無理して乗って転んで大怪我する想像ばかり膨らんで、私は金沢の地で死ぬかもしれない…と本気で考えた。
だから、降りた。
無理だった。これ以上乗ったら自分が死ぬか、誰かを殺すかだと思った。コインパーキングに停まっている車に思いを馳せて、あ〜車だったら何も怖くないのに。自転車の幅はわからないけど、車幅だったら完璧なのに、本当に「とほほ」と言った。
荷物と化した自転車を押しながら県立図書館に向かった。途中長ーい坂を登ることとなり、息も絶え絶えでついた。

石川県立図書館は、とても美しかった。本が好きな人が作ってくれたんだと思った。円形に並ぶ本棚の間を踊りたかった。
でも、すっかり自転車と坂に心を折られてしまった私は図書館を歩き回る元気もなく、ベンチでぼーっと本棚を眺めているだけだった。カバンに入っていた吉本ばななの本を読んだり、携帯を見たり。本を選ぶ人、本を読む人をぼーっと眺めていた。
そしたら、だんだんと悲しくなってきた。もう帰りたいと思った。アパートに帰ってこたつでダラダラしたい。ベッドで昼寝したい。いつものスーパーで適当にご飯買いたい。

今日に期待しない、そんな普通の日に戻りたいと思ってしまった。

知り合いがほとんどいない土地で何かあったらどうすればいいんだろう、帰り道自転車で転けたらどうしたらいいんだろう、そもそも無事に帰れるのかな、夕飯ちゃんと食べたいけどもう疲れちゃった、何が食べたいのかもわかんない、どうしよう、どうしよう。
不安に思い始めると、目の前の景色は色がなくなっていく。
あんなに美しい図書館も、私を孤独にする箱に思えてくる。
誰かと行っても疲れるから1人で行くことを決めた。でも今は、ひとりぼっちがとてつもない不安をつれてきた。胃が痛くなる。

旅行は、「期待」のお化けのように感じた。
旅行は、一分一秒に期待が込められている。この時間を無駄にしてはいけない!が追いかけてくる。「何かをしないと」というプレッシャーに首を絞められる。

旅行は、すぐ疲れちゃう私には向いていない。終わることばかり考えちゃう私には向いていない。晴れの日が怖いと思ってしまう私には向いていない。

ダメダメだなー、という気持ちで美しい図書館にいた。このままこうしているわけにもいかなくて、併設してあるカフェでクリームソーダを飲んだ。元気になる飲み物に思えたから。そこで胸に「BOOKS」と買いてあるTシャツを買った。ちょっと元気が出た。

帰りダメもとで自転車にまたがってみたら、最初よりも怖くなかった。坂道や交通量の多い道は降りたけど、それ以外は乗ることができた。行きの半分くらいの時間で帰って来れた。

初めての一人旅。図書館での不安を忘れたくないなーと思う。私の弱さがそこにあったから。
知らない土地の楽しさと怖さ。晴れている日の気持ちよさと怖さ。
怖いことばかりだけど、新しいものを見たいとも思うから。
自転車にも乗れないし、旅行のノリやテンションにも乗れないし私だけど。
また1人で出かけてしまうんだろうな。
いつか心から楽しめたらいいな。

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