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非日常

母は手芸教室の先生をしている。
もともと手芸教室を始めた大先生がいて、他の先生たち、生徒たちとそれなりの人数になっている。コースが細かく分かれていたり、イベントに出店したりと、お母さんたちの集まりにしては本格的に働いている。
そこでちょっとしたトラブルがあったようで、母はひょえ〜〜となりながらあちこちに電話していた。説明があまり上手じゃない母。状況を説明する言葉よりも感情が先行して、私はこう思ってたとか、そんな話ばっかりだから「で?結局どうしたの?」と相手はなっているだろうなと思う。
私も行く末が気になってしまうが、変に口を出しても飛び火がくるだけだし、私がどうにかできることでもないので家を出ることにした。
こういう時にすぐ思いつくのはスタバ。広い駐車場もある田舎のスタバありがたや〜となる。
本当は他にもカフェやコーヒースタンドの候補地が欲しい。逃げ込める場所をこれから増やしていかないといけないなーと思う。



太平洋側の岩手は晴れの日が多い。曇天続きの新潟と比べたら、もぉびっくりするくらい毎日晴れている。晴れの地域から曇りの地域への移動は精神的負担がすぐ想像できる。でも、今の私は晴れの日のパワーが強すぎて、「晴れ疲れ」している。眩しいよ…と毎朝思う。
仕事を終えて、引越しできてから自由な日々に見えるけど、ただの非日常で、ただの疲れる日々だと気がついた。早くあまり何も考えなくていい日常になってほしい。全て落ち着くべきところに落ち着いて欲しい。
母は21時頃には寝ている。家が静かになる。私もする事がなくて、22時頃には寝てしまう。夜が遠い。健康的すぎる。母の手料理も、晴れも、私にはエネルギー過多。何も食べずに、ダラダラと、ドロドロとした時間が必要。



新しい職場に提出する書類が面倒すぎて、心が折れそうになった。別にそんなにたくさんないけど、何これ?っていう書類が多すぎる。履歴書も面接の前に提出したのに、また同じような内容で職場専用の書式に書き直して出すとのこと。あとは、身元保証書。親ではなく、もっと遠い親戚じゃないとダメらしい。親戚と付き合いのない人は務められないのか。父から父の兄妹にお願いしてもらう。めんどくさすぎる。令和だぞと何回も思った。今朝、郵便で送った。近くの郵便局から速達で出したが、「明日の午後の便です」と言われて、そうだここは田舎だったと思い出す。盛岡の本局に持って行けばよかったと思いながら、歩いて帰った。途中、小さい頃から仲良くしているご近所さんに会う。帰ってきました〜〜とこちらから挨拶すると「車があるからそうかと思っていたよ!おかえり!」と明るく言われて気持ちがいい。書類は全てどうにかなると祈るしかない。



初めて行った美容院。光の入り方がすてきな店内で、全体的に柔らかい感じ。美容師さんとの会話も軽やか。新潟に10年いて〜と話す。前髪をどうするかちょっと相談。伸ばすことになったけど、1ヶ月後発狂してると思うと言われて笑った。1年前までわたしの前髪は長くて、髪全体はとても短かったことをこの人は知らないんだな、と思って不思議な気持ち。柏崎で6年間お世話になった美容師さんを、素敵な夫婦の小さな美容院を思い出す。いや、まだ思い出にするにははやいか。



盛岡の金田一駐車場からBOOKNERDまで歩いた。県庁や警察署、岩手日報などまさしく盛岡の中心地の通りを歩く。風が気持ちよく、中津川が穏やかに流れている。新しく買った白いブラウスが、太陽の光で光って見える。私が光っているみたい。



今日は雨が降った。雨だし何もしなくていいかと思えることに安心する。しかし、お昼には雨が止み、曇っているけど明るくなってくる。新潟なら、これは晴れだなと思う。


非日常も、もう少しで終わる。





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