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コンテスト経験が浅い私が拝聴したかぐやSF3座談会の感想(自分のための覚え書き+最後は自作の宣伝)

 エックスのTLに流れてきたかぐやSFコンテストいうものに応募した。テーマは「未来のスポーツ」を書いた小説。文学なのに「スポーツ」だ。対極にあるものの組み合わせが醸し出す、新しいものが生まれるワクワク。誘惑に負けて、書いた。楽しかった。感想もいただいた。褒めてもらった。うれしかった。
 しかし選外佳作にも入れなかった。応募したからにはなにかしら結果がつきものである。ちょっぴりがっかりしたのに座談会まで聴くのは果たしてどうなのだろうかと迷った。それでも申し込んだ理由は、エックスで眺めていた審査員含めた主催側の方々の、引力が強かったことが大きい。そして当記事のような覚え書きを、と思ったのは、結果、聴いてよかったと思える点が複数あったからだ。
 約一年、いくつかの小説コンテストに参加してみてよく分からないと感じていたことが、かぐやSFコンテストを通して少しほぐれたように思う。自作に向けたものではなくても、なるほど!と思うコメントが沢山あった。丁寧なフィードバックだなという好印象を持った。


最終候補作の選定の決め手や、選外佳作と最終候補作、あるいは選外佳作とそうでない作品のボーダーラインについてのお話が多かった。そこから私が考えたこと。

  • 誤字脱字は無いに越したことはないなあと。並列で比較された時に差が出てしまうのなら、気をつけるだけで少しでも良くなるところはどこかという話になってくるので。私が参加するコンテストの応募作には誤字脱字が無いなと思うことが多く、当然っちゃ当然のことなのだろう。そこで躓いたらもったいないもの。

  • 気になるキーワードがいくつかあった。「チャームポイント」「フックがある」「物語の強度」、あとは「そのスポーツである必然性」「世界観の射程の広さ=書かれていない部分の広がり」。この辺りで、比較した時に一歩濃ゆいところに踏み込んでいた作品が、最終候補に推されていったのだろうなと。

  • あとは、最終候補の作品数についてのお話が興味深い。5作だったら?20作だったら?という視点だ。比較する基準も変わるだろう。仮に10より少なかったら、最終候補に複数あった、球技を扱った作品が、もしかしたらもっと絞り込まれていたのかもしれないな、などと思った。

最終候補作について深まる感動

かぐやSF3最終候補作の投票用メモ
最終候補作初見での私の率直な感想をメモしたのが上記の記事になっている。

  • 大賞の「マジック・ボール」について、めちゃくちゃ面白いとは思ったけれど、「この作品は厳密に未来を扱っていると言えるのかがわからん」などとメモしてあった。その点について、なるほど、と思うような解説が聞くことが出来た。史実に基づいた作品がいくつかあり、秀逸なものばかりであったと。「並列したときには比較される」と何度か言及されていたように、そういったレベルのものの中から選び抜かれたのが「マジック・ボール」で、「強度」が抜きん出ていたのだろう。「作中人物にとってどう未来だったのか」というコメントが、腑に落ちる作品なのだ。間違いなく面白い。スピード感があり、情緒があり、最後は、「オチ」と片づけてしまうのには忍びないようなはっきりとした感動と驚きがあった。(あとは「消える魔球」についての談義が面白かった。自分は野球漫画通っていないので、「すごいボール派」でした。)

  • 私が推し作品として投票した「ベントラ、ボール、ベントラ」について触れているコメントが多いなと感じたし、改めてその魅力について考えると、子どもたちの物語と不気味テイストの相性の良さが挙げられると思う。読めば読むほど癖になるような、心地よいだけでは終わらない居心地の悪さを感じるのである。ホラー未満という絶妙な塩梅。冒頭の読み味は正直いって美味しくないのだが、わたしはそういう作品が好きだったりする。黙って俺についてこい、みたいな。喜んでついて行ってしまう。

  • もう一つ私が好きな「叫び」という作品。要所で挟まれる詩情の一文がぶん殴ってくるし、たたみかけるように馬の大群が走ってくる。馬の毛並みが艶やかで美しい。そういう情景に圧倒されたままで迎えるラストなのだが、私はそのラストが気になって仕方がない。それについての言及は特に無かったな…。

  • 「物語の強度」って何、というのは最終候補作を読むと身に沁みるというか。どれを読んでも言葉のキレと、ジェットコースターのような力強さがあって、深読みしたくなる仕掛けがある。それも4000字という文字数の中で。サッと読める長さなのにこの満足感は、tueeeeeee!!!

それらを踏まえて自作について振り返った。

 強度はあったか?→無い。
 チャームポイントは→一応自称は出来そう。
 フックは→詰め込みすぎたくらい。むしろ何が言いたいのかは弱い。
 そのスポーツである必然性→無かったかもしれない。
 私のは新しい(スポーツの)職業についての話だったように思う。大事にしたかったことは、運動能力への憧れなのかなと。だから主人公にイメージを憑依させて派手なアクションを書きたかった。ただし、「身体能力は前提条件」と明記しているあたり、あまり深い話は書く気が無くて、ストーリーの展開に全力を注いで、自分が楽しいで完結している。まあいつもそうだからそれが私だよね、という感じ。
 もしも改稿するなら、身体能力を拡張できるイメトレとその喜びを書くという形になると思う。まったく違う形になりそうだ。
 好きなように書いてぽいっと投稿する作品はふだんの書き方をすれば良いと思うのだが、コンテストに出して審査員の印象に残りたいのであれば、提示されたテーマと丁寧に向き合う必要があるのだなと思った。ましてやバゴプラのように主催者側の理念がはっきりと明示されているならば、そういうところも可能な限り理解していることが望ましい。
 余談にはなるが、講評終盤で「かぐやSFコンは小説初心者や出戻り組を励ましたいコンテストである」と明言されていた。それに加えて、「SFわからないけど好きな層」という言及があった。それいろいろと私のことだなと思った。直近で下記のような日記を書いていたため、勝手ながら励まされていたりする。
SFわからないけど「たぶん」好きです??それは叶わない初恋のようなもの…。 
 主にエックスにおいて、主催者様、審査員の方々の「楽しいことやってるから、おいで! おいで!」と誘われているような引力に引っ張られるかたちで、「参加者だな」と実感した楽しいコンテストであった。

自分の投稿作はこちら。

 最後に、自分の応募作とボツ案(無修正)をカクヨムに投稿してあるため、ご興味ある方はどうぞお読みになって率直なご意見をお聞かせ願いたく。
イメージトレーニング・アスロン
 未来のスポーツにおける身体能力の限界にともなう憑依型イメージトレーニングの台頭、そしてそれに関わる職業は選手にとって相棒のような関係である。ドーピングを絡めた起伏モリモリストーリー。チャームポイントは、獣感のある迫真の走りの描写だろう。四本脚で涎垂らして疾走するんだぜ!(ただし競技から離脱する!)
飛沫礼賛
 没案の方はなんと「汗」が主人公だったりします。よろしければぜひ〜。

 あと、今回参考に読んだ本はこちら。メンタルトレーニングやドーピングについて知りたかったので読みました。
なるほど最新スポーツ科学入門

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