ブリーチの原理〜基本編〜


去る2017年頃、今では当たり前となったプレックス系処理剤が発売されてから早5年。

その発売より少し前からインナーカラー等の"グラデーションカラーやメッシュに続く全体ブリーチ以外のブリーチの仕方"というものが定着してきた事。

加えて、SNSやオンラインセミナーが発達、活発化したことにより、時間も場所も気にせずに学ぶことが出来るようになった事。

これらの要素が重なった事で理美容師側・お客様側の双方共に、ブリーチというものに対してのハードルが下がり、街行く人々の髪色はそれ以前に比べより自由になったと実感します。
更に昨今ではブリーチをしている髪の毛に対してパーマや縮毛矯正などの形状を変える施術が、さも当たり前に出来るような風潮すらあります。

他方でブリーチやブリーチ毛に対する施術に纏わる"トラブル"や、それに至らないにしても"悩み"というものも増えていると聞きますし、筆者の元にも相談が来ることも多々あります。

挑戦が容易になった事や情報を得る手段が増えた事自体は非常に良い傾向であるとは思いますが、同時に大きな危険を孕む事は現状が指し示していると感じます。

また、理美容業界内外に対する集客の為の発信に於いては、訴求力を求めるがあまり誤解を招くような耳触りの良い文言が飛び交っているように思います。

これらは筆者の主観を大いに含む物であり、実際にはそれらも氷山の一角で、そうではない理美容師の方々が大多数を占めるかもしれません。

然し乍ら、前述の通り筆者の元に助言を求めて連絡をして下さる方が多いのも事実で、詳しくお話を伺うと「情報過多な時代の中で、何が正解が解らなくなってしまっている。」という方も少なくありません。

この記事ではそういった"ブリーチに関する悩み"に直面した時に立ち返る為の、マインドセットならぬセオリーセットとなるブリーチの原理について一から解説して参ります。



この記事でわかること

  • 原理と理論の違い

  • ブリーチの反応原理

  • 各要素の役割

  • ”正しい”ブリーチ理論




原理と理論

さて、ブリーチについてのお話をしていく前に、多くの方が誤解されているように感じる2つの言葉、"原理""理論"について、正しく認識して頂く必要があります。


・原理とは

原理とは、基本的に変わることの無い基本原則のこと。根本的な法則の事を指します。

・理論とは

理論とは、原理を用いて特定の目的を達成する為の手段等を体系的にまとめた方法。


例えるのであれば、

1 右足を前に出し右足が地面に着いた後、左足を右足よりも前に出す。これを繰り返す事で前方に移動する事が出来る。

2 右足を前に出し、右足のつま先が着地すると同時に地面を蹴るようにし、身体を若干捻りつつ左足をさらに前へ出す、同様に左足の着地と同時に地面を蹴り…、というのを繰り返す事でより早く前方へ移動できる。

この2つは殆ど同じ行為ですが、前者の説明は前方への移動の原理で、後者はそれをより素早く行う為の理論です。

原理は前提、例で言うならば人類の肉体がこれまでの常識を覆すほど大きな変化がない限り覆ることはありません。
また、"原理に対する認識や理解"が正しいか否かはあれど、原理自体には正しいも間違いもありません。
何故なら原理とは"ただそこに存在する事実"であり、自然現象的な物であるからです。


それに対し理論とは、その原理を用い特定の目的(先の例で言うならばより素早い移動)を達成する為の方法なので、科学や技術の発展や環境等の要素によって様々な変化をします。
そして、理論の場合はそれを使用する人間の目的や、置かれている前提条件などによって正しいか間違っているかが変わります。
何故なら、理論は特定の目的達成の為に原理を利用して作られた人工物であり数多在る手段の一つであるからです。

昨今の美容業界の教育では、理論を教えている先生方は多かれど、原理を懇切丁寧に説明している方は少ないように感じます。
確かに、原理を理解したからと言って上手くなるわけではありませんし、その点で言うなら理論の理解は上達に直結します。
けれども、原理を真に理解すると言うことは、自身の環境や目的等に応じてその都度理論を学ばずとも利用する事が出来る様になるという事です。
故に、本サークルでは何よりも先ず、原理の理解を最優先で進めていきます。

基本中の基本ですから、人によっては「何を当たり前のことを」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そうでなくとも、美容学校を卒業した方であればある程度は知っていて当然の話も沢山出てきます。
目から鱗の新しい話も無ければ、これを理解したからと言って明日からブリーチ技術が向上するわけではありません。

然し、一度原理を理解し、実践を重ね、発想力を養えば、その状況状況に応じた最適解を誰からも学ぶ事なく自発的に選択する事が出来ます。
非常に遠回りであり、最も効率的な手段であると筆者は確信しておりますが、前述のように"非常に面白くない内容"であることに違いはありません。

その前提の上で、それでも"ブリーチを真に理解したい"と思う方は、この後の内容を読み進めて頂けたらと思います。


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