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1年でGMV2.5倍の成長後に振り返る、あの時に知りたかった “事業開発の3つの失敗”

この記事は BtoB事業開発アドカレ5日目です。
前回は Naoki Ito(LayerX/㈱銭湯ぐらし) による 仕事におけるPlayground(検証環境)の重要性 でした。事業開発の肝となる "仮説検証速度をいかに担保し続けられるか" をテーマにした記事で学び深かったです。


自己紹介

情熱がめぐる経済をつくりたいMOSHで、ビジネスサイドの副責任者をしている秋葉です。
これまでのキャリアは、HR領域のエンタープライズセールスを5年、事業開発のキャリアが3年です。スタートアップでの事業開発は初めてで、次から次へとくる新しい課題を信頼できる最高の仲間と試行錯誤して乗り越えて「情熱がめぐる経済をつくる」ミッションに向けて充実した時間を過ごしています!

こんな人に読んでほしい

スタートアップでの事業開発初心者だった1年前の私に言い聞かせたいことを書きました。
事業開発の経験が豊富な人からすると当たり前の内容もあるかもしれませんが、実経験を赤裸々に綴っていきますので、こんな人に読んでもらいたいです。

  • シリーズA~Bで売上/組織を拡大させながら事業開発をしている人

  • 大手企業のセールス出身で、スタートアップで営業 兼 事業開発をしている人

MOSHの事業開発とは?

知らない方も多いと思いますので、MOSHについて簡単にご紹介させてください。
MOSHは個人やスモールチームの方々が、誰でも簡単にオンラインスクールを開けるストアフロント型のプラットフォームです。サービス開始から6年が経過し、3年連続でGMV2倍以上成長をキープし、65,000人のクリエイター(販売者)が登録してくれています。
クリエイターエコノミーの成長もあり、直近は個人でも中小企業と同様の事業規模で展開する方もいたり、チーム化をして事業展開する方も増えてきています。それに伴い、MOSHの価値提供も個人+スモールB向けに進化してきています。

個人で月商500~1000万以上販売される方を生み出していて、少しずつですがあらゆる専門家の活動を支える基盤になれてきている実感を持ち始めています。(まだまだこれから!).
だいぶ前の記事になりますが….。


MOSHはワンプロダクトでマルチユースケースに対応するプロダクト
です。
1つのサービスで、オンラインサロン等のサブスクリプションや、養成講座のような講座販売、単発イベントや1対1予約などのあらゆるユースケースに対応しています。(ワンプロダクト・マルチユースケースなところが事業開発の複雑性もたらしてくれて面白いです)このあたりはMOSHのアドベントカレンダーでCTO村井さんが詳しく説明してくれています。


今回のテーマの“事業開発”とは・・・?

聞き馴染みはあるけれど、実際に何をするのかの説明は少ししづらい役割だと思います。私の中では、事業開発は以下のような認識をしています。

事業開発 =
①WHO(顧客)の拡張 ②WHAT(価値)の拡張 によって事業成長を実現すること

規模は様々ですが、事業開発に求められていることは、顧客×価値の総量を拡張していくことだと考えています。

顧客価値の総量を拡張していくことが事業開発

振り返ると、ここ一年のMOSHの事業開発の役割は、【売上目標を達成しながら、価値探索/開発を両立しながら実現する】ことでした。
一般的には事業開発が売上目標を持たない組織のほうが多いかもしれませんが、限られた組織リソースで急成長を実現させていく事業フェーズとおいて、意図的にセールスと事業開発を兼ねるような動き方をしていました。

MOSHはいわゆるスモールBを対象にしたマーケットで200業種を超える多種多様な顧客が利用してくれています。またワンプロダクト×マルチユースケースの事業形態になるので、同一カテゴリでも異なるユースケースで使われています。

約1年前のMOSHは、特定の1つのユースケースに焦点を絞って顧客開発(カテゴリ開発)を推進していました。着実にカテゴリは広がっているものの、期待を上回るペースでの継続的な事業成長は見込みづらいのでは、という課題感がありました。

そうした課題感を踏まえて、この1年間は顧客(WHO)と価値(WHAT)の両方を拡張していく事業開発に取り組んでいました。
【顧客(WHO)】:カテゴリ → カテゴリ×ユースケース
【価値(WHAT)】:既に成功しているユースケース → 新しく開発するユースケース

カテゴリカットでの顧客定義からカテゴリ×ユースケースにアップデート

さて、前置きが長くなりましたが、初めてのスタートアップでの事業開発に、ワクワクと不安が入り混じる気持ちでいた1年前の自分に伝えたい3つの失敗を振り返ります。


失敗①:コアターゲット(WHO)の共通認識ができず、チーム間で認識がズレていく

【あのときの自分に伝えたいこと】
「目先の商談数より、チーム間でのターゲット顧客(WHO)の解像度を擦り合わせることを優先せよ」

GMV(≒売上)を目標に置いてセールス主導型で事業開発をしていると、どうしても商談数や商談ヨミの会話が優先されてしまいます。また1人当たり月間総商談数は100件程で、物理的な時間を確保することが難しい状況も重なり、誰もがWHOの共通認識化は重要と認識しながらも、置かれている目標設定の引力が働いてしまい、結果的に最も重要なWHOの深掘りと共通認識化が後手に回ってしまいました。

新しいユースケースの顧客開拓が一定でき始めたと実感したタイミングで、改めて「自分たちの顧客が誰で、どんな提供価値を感じてもらえているかを見つめ直そう」と以下を実行しました。

顧客の共通認識を揃えるために会議体や情報連携を整備

ちなみに、MOSHでは、WHOのアップデートを目的にしたロングミーティングは1週間程度ではあまり進捗せずに議論も堂々巡りをしてしまい、2~3週間がベストでした。結果的に直近半年間で5~6回ほどWHOのアップデートがされて新ユースケースの顧客解像度が段違いに上がりました。

ほとんどモザイクですが…、ロングミーティングの一コマ


失敗② :価値仮説(WHAT)を絞りきれず、磨いていく価値が定まらない

【あのときの自分に伝えたいこと】
「スケーラビリティのある価値仮説(WHAT)を選択し更に磨きこめ」

複数の価値仮説を同時並行で検証している場合、事業開発メンバーのバックグランドやケーパビリティによって、同じWHOに対しても異なる筋のいいWHAT(提供価値仮説)が見つかってくると思います。MOSHでもコンサルティング的な付加価値創出に強いメンバーや、システム導入支援的な付加価値創出に強いメンバーなど複数の価値筋で新しいユースケースの導入が出始めていました。機能開発のクオリティ/スピードを向上させ、セールスの再現性を構築するためには、価値を絞り切ることが重要ですが、価値筋のナレッジや知見が属人化する状況が起きていました。

このままではチーム間の目線統一とナレッジ深化が進まないと考えて、以下を実行しました。

価値筋を提供価値と難易度の2軸で整理し、いまのMOSHが磨き込むべき価値筋を決める。そして採択しない価値筋をやらない。

スケーラビリティを優先した価値仮説の選択を実施

価値筋を絞り込むのは簡単ではありませんでしたが、”今、取り組むべきことではない”という判断をしただけであり、取り組む時間軸を調整したと思うと納得感が高かったです。

意思決定に際しては以下のような観点を意識しました。 まず事業グロースのセオリーは、価値探索>開発(再現性創出)>規模拡大(スケール)という順になると考えて、現状の組織ケーパビリティと採用難易度を加味した上での、【自社におけるAという提供価値をスケールさせていく難易度】を基準にしました。

その上で、今のMOSHがどんな市場で戦っているのかを俯瞰して意思決定をしました。 前職のリクルートでプロダクトをみていた取締役の話をなぜかすごく覚えていてMOSHに当てはめて考えていました。

「自社が成熟市場にいるのか、成長市場にいるのかを正しく捉えることが何よりも大事。成熟市場なら顧客単価、成長市場なら顧客数を注力する戦略をとるべき。成長市場なら顧客数の裾野を広げることが最優先。市場が成熟してから単価を上げる価値を開発できる。

前職のリクルートのキレキレだった取締役の言葉

これらを踏まえて、提供価値は低いが難易度が高くない価値筋にフォーカスを定めることにしました。結果的にチームへも着実に実装されて価値の再現性が構築できつつあり、かつ提供価値を引き上げられる仮説がいくつも出てきています。


失敗③ :WHOとWHATのアップデートに、組織体制がついていけない

【あのときの自分に伝えたいこと】
「クオーター中の組織体制変更を躊躇うな」

セールス組織化をしながら事業開発をしていったので、セールス活動の拡大に伴うオペレーション構築/採用といった”企業の組織化”をしながら、顧客価値(WHO×WHAT)を最適にデリバリーできる組織体制に適応させ続ける必要がありました。

10~20名と組織化が進むにつれて、クイックかつ柔軟な体制変更がしづらくなってきます。大手企業での経験が長かった私は、コミュニケーションコストやモチベーション低減をケアしてQuarterlyでの体制変更を、と考えるときもありました。

しかし、急成長期を沢山経験してきたビジネス部門の責任者が「いずれ変えるなら、今の体制を惰性で続けずに早く変えたほうがいい」と力強く押し切ってくれて、半年で3~4回のマイナーチェンジを含む組織体制変更を実施しました。顧客価値に向き合える組織であり続けられたことにより、結果的に事業計画を上回る進捗で事業成長をできたのではと思います。

変化を厭わないことで進化速度を倍増

この経験を通じて、もちろん短期間で変化が重なればチームにストレスは蓄積されていきますが、メンバー視点でも変化へのストレスもさることながら、価値提供しづらい体制で居続けることへの違和感・ストレスも同等にあることを対話を通じて再認識させてもらいました。(とはいえ、高頻度の体制変更はボディブローのように効いてくると思うので、同時にチームビルディングのための施策も非常に重要だと感じています…。)

事業開発に失敗はない

1年前の自分に言いたいことを書き連ねていたら冗長な内容になってしまいました。(もう少し顧客や価値仮説について具体的に書きたいところもありましたが、長文になってしまうので別の場所で詳細を書いていこうと思います)

ただこの1年間を振り返ると、3つの失敗をまとめてみたものの、これらは全てゴールにいくためのトライと学びだったので『失敗なんてないな』と受け止めてます。

事業開発に失敗はない」

事業開発は打席に立ってなんぼの世界で、常に失敗の連続だと思います。例えば、この1年間でおこなった施策も見方を変えれば失敗といえるものも多くあるかもしれません。1人あたり100件以上の月次商談数を行ったことも非効率な側面はありますし、大規模イベントが本当に効率的だったかは現時点では断言はできません。ただ1つ確信を持って言えるのは、「行動から学習を重ねて成功に近づいている」ということ。逆をいえば、失敗していない=挑戦していないことであり、減速や衰退の始まりだと思います。

これからもMOSHが、常に失敗をし、挑戦(≒学習)そのものを称賛できる組織であり続けられるようにすることが、私の挑戦だと思っています。
(これからも前のめりでたくさん失敗していこうと思います!)

来年以降は、続々と力強い仲間が加わってきていることもあり、GMV創出と価値探索/開発をするチームを分けて、より開発組織と連携してイテレーションを回して事業開発を爆速で進めていきたいと考えています!

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