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#10. ポルトガルワインはブドウ品種で語れない。

72season'sアドベントカレンダー11日目です。もう少しで半分!😁

今回は、前回のドウロとポートの主要5品種に関する話からの脱線で、「ポルトガルワインはブドウ品種で語れない」ということの意味やフィールドブレンドについて記事にしたいと思います。

ポルトガルワインは固有品種の宝庫!

ポルトガルには、固有品種が約250種存在すると言われています。そしてポートワインだけで認可されている品種はなんと約100種類。ドウロのワインも同様です。

しかも、これらの品種が複雑にブレンドされ、その比率も多種多様なのがポルトガルワインの特徴です。

このブレンドの背景には、昔ながらのフィールドブレンドという文化があります。

フィールドブレンドとは

フィールドブレンドとは、一枚の畑に複数の品種がごちゃまぜに植わっていて(混植)、それらを品種に関係なくすべて一緒に仕込んでワインにする(混醸)という方法です。畑でブレンドするから「フィールドブレンド」と呼びます。

フィールドブレンドはかつては世界中で行われていましたが、いまでは区画ごとに適したブドウを植え、品種ごとに最適な熟度で収穫する、というのが普通なので混植をやっている地域はほとんどありません。さらには別の品種はおろか、同じ品種でも区画ごとに仕込んで、それぞれをワインにしてからブレンドするのがトレンドですので、混醸ということは一般的ではありません。

一方、ドウロ渓谷はいまだに50%以上の畑が混植だそうです。ドウロ渓谷にとっては、エクストリームな気候(夏は高温乾燥、冬は寒い)でブドウが全滅しないように多種類のブドウを植えるという、保険としての混植です。
前回の記事で紹介したように、1970年代に特にポートワインに適した5つの品種が特定され、その後一時その5品種を中心に植えていく時代がドウロにもあったようですが、最近はまた古い品種を混植で植えていく、という流れが戻ってきているそうです。

ドウロ渓谷をはじめ、ポルトガルはおそらく世界で一番フィールドブレンドが残る国です。これだけでかなり個性的なワイン生産国なんですよね。

ポルトガルワインは、ブドウ品種で語れない

混植の畑では、一枚の畑に30品種ぐらいが植わっていることもありますし、生産者も何の品種がどれぐらい植わっているかよくわからない、ということがあるようです。遺伝子検査をする必要があるので、まあ別にそこまでして調べなくていっか、ということになるわけです。笑

例えばフィールドブレンドのワインでは、裏ラベルにこんな書き方がされたりします。

ラビガト、コデガ、ヴィオジーニョ、ドンゼリーニョ、ドリントなど
ゴーヴェイオ、ヴィオジーニョ、ラビガトが主体の畑
判明している限り20品種以上のブレンド

非常に曖昧ですよね。生産者もよくわかっていないし、全部はボトルに書けないし、こういう書き方になります。

さらにいえばポートワインは、シッパー(ポートワインを熟成、輸出する業者)のもとで買い付けてきたポートワインをブレンドしたりもするので、もはや品種などわかりようもありません。笑

ポルトガルワインの独自性

ワインの歴史でいうと、20世紀前半までは旧世界の時代。このころは品種は問題ではなく、ブルゴーニュならこういうスタイル、ボルドーならこういうスタイル、という理解でした。それが新世界がVarietal Wine(ブドウ品種を押しだしたワイン)を売り出し、品種で消費者に訴求するようになってから、そちらが主流になりました。消費者もそれが非常に分かりやすかったといえます。同じ品種で、違う産地のワインを飲み比べたりするのはとても楽しいですよね。

ワインを勉強している方も、主要品種などはよく特徴を勉強し、ブラインドテイスティングで品種と産地を当てる練習などされるはずです。

しかし、ポルトガルは完全にこの流れで語れないのです。固有品種が多いだけならまだいいのですが、数十種類とかブレンドされてしまっては、語りようがないわけです。笑

これがポルトガルの第一の個性であり、面白さだと思います。(とっつきにくさでもあるのですが。。。😂汗)

とりあえずポルトガルワインを飲まれる際は、品種はそれほど気にせずに、産地ごとの違いなどを純粋に楽しんでみてはいかがでしょうか?😁

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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